索 引
1. 誰もが知っている、あの「ベルマーク」の正体
みなさんは小学校の頃、家から持ってきた「ベルマーク」を教室で集めた思い出はありませんか?
あの懐かしい鐘のマークが、実は商標登録されているということをご存知でしょうか。今回は、日本の教育支援の象徴ともいえる「ベルマーク」について、商標の観点から掘り下げてみたいと思います。
2. ベルマーク運動の歴史と仕組み
ベルマーク運動は、1960年10月に朝日新聞社の提唱により始まった、PTAによる教育助成のためのボランティア運動です。
戦後の復興期において、日本中の子どもたちが豊かな教育を平等に受けられるようにという願いから生まれました。
この運動の仕組みは、実にシンプルで巧妙です。協賛会社の商品についている「ベルマーク」を集めて、ベルマーク教育助成財団に送ると、集めた点数に応じて協力会社の商品と交換できるというもの。
まるで現代のポイントカードのような仕組みですが、それだけではありません。
ここが素晴らしいところなのですが、協力会社から購入した金額の10%は財団に寄付され、その寄付金は僻地や被災地、さらには開発途上国の学校への支援に使われるのです。
つまり、自分たちの学校の設備を充実させながら、同時に困っている学校も助けることができる、まさに一石二鳥の仕組みなのです。

3. なぜ「鐘」のマークなのか
ベルマークが鐘の形をしているのには、深い意味があります。「国内外のお友達に”愛の鐘”を鳴り響かせよう」という助け合いのシンボルとして選ばれたのです。
この思いは、広辞苑にも「教育設備助成票の通称。協賛企業の商品についた鐘の絵のマークで、集めた点数に応じて学校に教育用設備が贈られる。一九六〇年創設。」として記載されるほど、日本社会に定着しています。
4. 意外と知らない!ベルマークがついている商品
ベルマークといえば、食品や文房具、石鹸などの日用品についているイメージが強いかもしれません。しかし実は、使用済みトナーカートリッジや自動車リユース部品、さらには保険商品にまでベルマークがついているのです。時代とともに、ベルマーク運動も進化しているんですね。
5. 個人でも参加できる?ベルマーク運動の参加方法
ベルマーク運動には参加資格が定められており、PTAや大学、公民館などの団体でなければ正式な参加者にはなれません。つまり、個人でベルマークを集めて商品と交換することはできないのです。
しかし、個人でも運動を支援する方法はあります。家庭で集めたベルマークを、近くの学校に寄付したり、財団に直接送ったりすることで、間接的に教育支援に貢献できるのです。
さらに2013年には、「ウェブベルマーク運動」という新しい取り組みも始まりました。これは、専用サイトを経由してオンラインショッピングをするだけで、東北の被災校などを支援できるというもの。特別な負担なく、普段の買い物で社会貢献ができる画期的な仕組みです。
6. ベルマークに関する商標登録の詳細
公益財団法人ベルマーク教育助成財団は、「ベルマーク」に関する複数の商標を登録しています。代表的なものをご紹介しましょう。
まず、おなじみの鐘のマークは、商標登録第5280210号として2009年11月13日に登録されています。指定役務は第36類で、「教育機関への設備及び備品の助成・援助」「教育機関への助成金の交付」「慈善のための募金」などが含まれています。
特許庁の商標公報より引用
同じく文字の「ベルマーク」も、商標登録第5280211号として同日に登録されており、同様の役務が指定されています。商標登録においては、マークや名称だけでなく、それを使用する商品や役務(サービス)を指定する必要があるのです。
特許庁の商標公報より引用
さらに興味深いのは、2015年4月10日に登録された商標登録第5756648号です。これは、かわいらしいキャラクターの商標で、第16類の文房具類や印刷物、第25類の被服や履物などが指定商品となっています。財団のウェブサイトでも、このキャラクターたちが活躍していますよ。
特許庁の商標公報より引用
7. ベルマーク運動の現状と課題
財団の発表によると、送られたベルマークの集票点数は、1992~96年度の8億点台をピークに減少傾向にあります。2006年度には4億2000万点まで落ち込みましたが、2011年度以降は約5億点台をキープしているとのことです。
また、2025年4月27日の毎日新聞の報道によれば、協賛企業の減少という新たな課題も浮上しています。「活動に携わる保護者の負担になっている」という理由で脱退する企業もあるそうです。
確かに、ベルマークを一枚一枚切り取って集計する作業は、効率化が求められる現代においては負担に感じられるかもしれません。一部のボランティアに作業が集中してしまう問題や、集まった資金の流れのさらなる透明化など、時代に合わせた改革が必要な時期に来ているのかもしれません。
教育支援が必要であった戦後復興期の時代設計ではなく、現在では少子化そのものが社会問題になっています。時代に合わせて支援の仕組みも変化していく変換点にきているように思えます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247