索 引
1. はじめに
商標を無事に登録できると、ひと安心して「あとは自由に使うだけ」と考えてしまいがちです。ところが、登録した商標には「どう使うか」にもルールがあります。登録したときの形から離れた使い方を続けていると、思わぬところで権利が弱くなったり、最悪の場合には登録そのものが取り消されてしまうこともあります。
ここでは、登録商標を使ううえで押さえておきたい基本の考え方と、やってしまいがちな失敗、そしてそれを避けるための注意点を、具体例を交えて整理してお伝えします。
2. 登録商標は「登録した形」で使うのが原則
商標登録を済ませると、その商標を指定した商品やサービスについて独占的に使う権利が得られます。この権利はブランドの価値を支える強力なものですが、効果をきちんと発揮させるには、いくつかの基本を押さえておくことが欠かせません。
その出発点が、「登録した商標は、登録したそのままの形で使う」という原則です。ロゴの形、文字のフォント、色の組み合わせなど、出願して登録になったデザインがあるなら、実際の商品やウェブサイトでも、その姿で使うのが基本になります。
なぜここまで「そのままの形」にこだわるのかというと、商標は消費者が商品を見分けるための目印だからです。登録したものと違う見た目で使い続けると、その目印としての役割があいまいになり、せっかくの権利が十分に守ってもらえなくなることがあります。
3. どこまでの変更なら認められるのか
とはいえ、現実には商品のパッケージや広告の大きさはさまざまで、まったく同じ見え方で使い続けるのは難しい場面もあります。そこで、商標の本質的な特徴を変えない範囲の手直しであれば、登録商標の使用として認められることがあります。
たとえば次のようなケースは、許容されやすい変更です。
- 商品の大きさや広告スペースに合わせて、ロゴ全体を拡大・縮小する
- 背景の都合で、文字色を見やすいように濃淡だけ調整する(色そのものを別の色に変えるのではなく)
- 登録した縦書きのロゴを、レイアウト上の都合で同じデザインのまま配置し直す
ポイントは、「見た人が受ける印象が、登録商標と実質的に同じかどうか」です。サイズや配置の調整のように、ブランドの目印としての印象を保ったままの変更であれば、問題になりにくいといえます。
4. こんな変更は認められない
一方で、商標の本質的な特徴そのものを変えてしまう使い方は認められません。たとえば、次のような変更です。
- 文字の並び順を入れ替える
- 登録時とはまったく別の色に塗り替える
- ロゴの形状やシンボルマークのデザインを作り替える
こうした変更がなぜ問題なのかというと、見た人が「これは本当にあの会社の商品なのか」と迷ってしまうからです。商標は消費者の判断材料そのものなので、見た目が大きく変わると、正規品なのか模倣品なのかが伝わらなくなってしまいます。
混同を招くような使い方は、似た商標を勝手に使う侵害者の側がやることであって、本来の権利者がやるべきことではありません。権利者が使うのは、あくまで登録した商標そのものである、と意識しておくとよいでしょう。
5. 登録商標を使っていないと、取り消されることがある
ここで意外と見落とされがちなのが、「登録した商標を実際には使わず、似た別の商標ばかり使っている」ケースのリスクです。
たとえば、「ウォークマン」という商標を登録していながら、実際の商品では「ウインクマン」のような少し違う名前ばかりを使っているとします。この場合、登録商標である「ウォークマン」自体は使われていない、と評価されかねません。
商標には、一定期間(継続して3年以上)実際に使われていない登録について、第三者が取り消しを求められる「不使用取消審判」という制度があります。登録だけして使っていない、あるいは登録とは違う商標ばかり使っている状態が続くと、この審判によって登録を取り消されてしまう可能性があるのです。
登録が取り消されると、影響は小さくありません。たとえば、その商標を他社にライセンスしていた場合、ライセンス先から「権利が消えたではないか」と賠償を求められることも考えられます。そのうえ、長く使ってきたブランド名を変更せざるを得なくなれば、これまで積み上げてきた信用やマーケティング費用が無駄になりかねません。
「似た商標を使うほうがデザイン上おしゃれだから」といった理由で登録商標から離れていくと、こうしたリスクを背負うことになります。アレンジを加えたいときほど、登録商標との距離に気を配りたいところです。
6. 迷ったときは専門家に相談を
ここまで見てきたように、登録商標の使用には「どこまでのアレンジが許されるのか」という、判断の難しい線引きがあります。サイズ調整のように問題のない変更もあれば、文字や色の変更のように権利を危うくする変更もあり、その境目は個別の事情によって変わります。
新しいパッケージデザインを採用したい、ロゴをリニューアルしたい、別バージョンのマークを併用したい。こうした場面では、変更前にいちど専門家に確認しておくと安心です。後から「実は登録商標を使っていなかった」と気づくより、はるかに低いコストでブランドを守れます。
ファーイースト国際特許事務所では、実務経験10年以上のベテラン弁理士がお客さまを直接担当し、登録商標の使い方や変更の可否について具体的にアドバイスします。登録後の使い方に不安がある方は、まず無料相談・調査のお問い合わせからお気軽にご連絡ください。費用の目安は商標登録の費用ページでご確認いただけます。
7. よくある質問
Q1:登録した商標のサイズを変えて使っても問題ありませんか?
商品や広告のスペースに合わせてロゴ全体を拡大・縮小する程度であれば、商標の印象を保ったままの変更として認められやすいです。本質的な特徴を変えない範囲かどうかが判断のポイントになります。
Q2:ロゴの色やデザインをリニューアルしたいのですが、登録し直したほうがよいですか?
色を別の色に変える、ロゴの形状を作り替えるといった変更は、登録商標とは別物と評価されることがあります。新しいデザインを長く使うのであれば、改めてそのデザインで出願し直すことを検討したほうが安全です。
Q3:登録した商標をしばらく使っていないと、どうなりますか?
継続して3年以上使っていない登録商標は、第三者から不使用取消審判を請求され、登録を取り消される可能性があります。登録だけして使っていない状態や、似た別の商標ばかり使っている状態は避けるのが安全です。
Q4:登録商標に似た商標を自社で使うのは、権利の範囲だから自由ではないのですか?
商標権の効力は似た範囲の他社使用を排除できますが、それは「他社に使わせない」ための範囲です。権利者自身が登録商標から離れた似た商標ばかり使うと、登録商標そのものを使っていないと見なされ、かえって取消のリスクを抱えることになります。
Q5:変更してよいかどうか、自分で判断するのが不安です。どうすればよいですか?
変更の可否は個別の事情によって変わるため、自己判断が難しい場面が多くあります。デザインを変える前に弁理士へ相談すれば、その使い方で権利が守られるかを事前に確認でき、後からのトラブルを防げます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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