索引
(1)住所変更手続を怠っていると商標の権利が失効することも
商標登録を行った後に住所が変わった場合は、その変更を特許庁に届け出る必要があります。これを怠ると、商標の権利が失効する可能性がありますので、十分注意してください。
住所変更を届け出る理由
特許庁は、マイナンバー制度の普及によって自動的に住所を変更するわけではありません。そのため、市役所や区役所に届け出ただけでは、特許庁の登録情報は更新されません。住所変更があった際には、自分で特許庁に届け出る必要があります。
特許事務所に依頼している場合
もし特許事務所に手続きを依頼している場合、特許庁からの連絡書面は全てその事務所に届きます。そのため、住所変更を忘れても書類が届かなくなる心配はありません。
特許事務所に依頼していない場合
一方、特許事務所に依頼せず、自分で手続きを行っている場合は要注意です。
住所変更を届け出ないと、特許庁からの重要な連絡が届かず、審査結果や手続きに関する返信期日を過ぎてしまうことがあります。この場合、商標権が失効するリスクがあります。
ここがポイント
住所が変わった際には、特許庁に対して速やかに住所変更の手続きを行うことが重要です。これにより、権利の失効を防ぐことができます。商標の権利を確実に維持するためにも、この手続きを忘れないようにしましょう。
(2)商標の住所変更の重要性と影響について
商標の住所変更は単なる形式的な手続きではなく、重要な影響を持つことがあります。特に、住所の不一致が原因で商標登録の申請が拒絶されるケースがあるため、注意が必要です。
住所変更の影響
例えば、以前に特許庁で商標権Aを取得したとしましょう。その後、住所が変更になり、特許庁に住所変更の手続きを行った場合でも、既存の商標権Aに対して個別に住所変更手続きを行わなければ、登録されている住所が更新されません。
この状態で新たな商標登録出願Bを行うと、特許庁から「商標権Aの存在を理由に出願Bを拒絶する」という通知が来ることがあります。この通知は、住所が一致していないために出願人と権利者が同一人物と認識されない場合に発生します。
拒絶理由の解消方法
この問題を解決するには、特許庁に対して商標権Aの住所を新しい住所に変更する手続きを行い、商標登録出願Bの住所と一致させる必要があります。これにより、出願人情報の不一致が解消され、拒絶理由も解消されます。
ここがポイント
住所変更は単なる届け出にとどまらず、商標権の維持や新たな出願に大きな影響を及ぼす可能性があります。特許庁への住所変更手続きを適切に行い、必要に応じて既存の商標権にも変更を反映させることが重要です。これにより、商標権を確実に守ることができます。
(3)特許庁に住所変更届を提出するだけでは足りない
商標の住所変更手続きには二つの重要なポイントがあります。単に特許庁に住所変更届を提出するだけでは不十分で、以下の手続きを確実に行う必要があります。
1. 出願人情報としての住所変更
まず、特許庁に登録されている出願人情報の住所変更が必要です。これは基本的な手続きであり、新しい住所を登録することにより、特許庁からの公式な連絡が正しく届くようにします。
2. 商標権者情報としての住所変更
次に、商標権者情報として個々の商標権に対して住所変更を行う必要があります。もし複数の商標権を保有している場合、各商標権について個別に住所変更手続きを行わなければなりません。例えば、100件の商標権を持っている場合、それぞれについて住所変更を行わなければならないということです。
これら二つの手続きを完了することで、特許庁の記録が正確に更新され、商標権に関する重要な通知や連絡が確実に届くようになります。
特許庁に対する手続きは一見複雑に思えるかもしれませんが、しっかりと手続きを行うことで商標権を保護し、不測の事態を避けることができます。
図1 特許庁に住所変更の手続をした場合
図2 特許庁に住所変更と表示変更の手続をした場合
(4)まとめ
商標の住所変更は、単に特許庁からの書類が正しく届くためだけではなく、権利者を特定する重要な手続きです。
住所が変わった際には、必ず特許庁に届け出て、登録情報を更新しましょう。
これにより、商標権の確実な保護が可能となり、不要なトラブルを避けることができます。しっかりと手続きを行うことが大切です。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247