ルービックキューブの商標登録は?日本と世界の権利の現状

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索引

(1)ルービックキューブ立体商標の欧州無効判決

欧州司法裁判所による逆転無効判決

ルービックキューブは、立方体の六つの面の色をそれぞれ一色のみに集める立体パズルで、およそ35年前に日本でも爆発的にヒットしました。

このルービックキューブの立体商標に関する欧州の立体商標の登録が欧州司法裁判所により無効とされる内容の判決がありました(2016年11月10日報道のBBCニュースによります)。

欧州連合知的財産庁により1990年代に登録され、欧州裁判所の下級審でも有効とされてきた立体商標でしたが、今回の独国玩具メーカーのジンバトイズ社の主張が認められ、英国のセブンタウンズ社がもつルービックキューブの商標登録を有効としてきた今までの認定を覆す逆転判決になりました。まさに粘り勝ち、というところでしょうか。

なお「欧州連合知的財産庁」は耳慣れない名称に感じるかもしれません。この機関は、今年2016年の組織改編により、欧州共同体商標意匠庁から欧州連合知的財産庁に名称変更されたものです。

(2)ルービックキューブの歴史

元々はエルノールービック氏による立体形状のパズル

ルービックキューブはエルノールービック氏が発明した立体形状のパズルです。ハンガリー出身のルービック氏はブダペスト工科大学の教授で建築学者です。

特許取得後、1977年に発売が開始され、その後ルービックキューブの商標で世界中で販売が開始されました。

日本ではツクダオリジナル社が名称を1983年に商標登録

日本では1980年夏頃からツクダオリジナル社よりルービックキューブが発売されました。このツクダオリジナル社はこの日本全国販売に先立ち、1980年4月11日に商標「RUBIK CUBE」を日本の特許庁に出願、審査を経て1983年11月25日に登録されました(商標登録第1635953号)。

日本の場合は、ルービックキューブの日本における正式販売元が商標権者になる形を採用しています。

日本では文字商標「RUBIK CUBE」の商標権が今でも存在する

この商標権はその後、ツクダオリジナル社からメガハウス社に移転され、現在でもメガハウス社の登録商標として日本での名称の権利は存続しています。

今回欧州司法裁判所で問題になった商標は、三次元の立体形状に関する、いわゆる立体商標についての判決です。日本の商標は二次元の文字商標について商標登録されたものですので、欧州の商標登録の事情と、日本における商標登録とは事案が別扱いになります。

なお、日本ではルービックキューブの立体形状については、商標登録はされていないです。

(3)欧州で商標登録が無効なら日本でも無効になるのか

今回のケースでは欧州の判決は日本の登録に一切影響を及ぼしません

今回欧州でルービックキューブの立体商標の登録が無効にされたから、日本における商標登録が無効にされるかというと、それはありません。

そもそも欧州の登録が立体商標であり、日本の登録が文字商標であるという違いの他に、日本の商標登録を無効にできない理由が大きく二つあります。

国際条約により権利の有効無効は国ごとの領域扱いになっている

日本や欧州の参加する国際条約の一つであるパリ条約では、商標登録の有効無効はそれぞれの国や領域毎で扱うことを定めています(パリ条約第6条)。

このため欧州で商標登録が無効になったことのみを理由として日本でも商標登録は無効だ、ということは主張しても日本国は受け入れることはありません。

日本では登録を無効にできる期間に制限がある

日本では商標登録を無効にできる期間が定まっていて、この期限内に無効審判を特許庁に請求しないと商標登録を無効にできません。この制限期間のことを除斥期間といいます(商標法第47条)。

除斥期間は、商標登録の日から5年です。

無効にされなくても権利行使が認められない場合がある

日本の場合は除斥期間を過ぎるとルービックキューブの商標登録を無効にする手段がなくなり、商標権としては更新手続を忘れない限り、永遠に権利が生き続けます。

では商標権は安泰か、というとそうではありません。ルービックキューブの形状やネーミングが、誰もが使うありふれたものになっている場合には、普通形状化や普通名称化により、裁判所で商標権の権利行使が認められなくなります。

メンテナンスを怠ると商標権も使えなくなる場合があります。

(4)ルービックキューブは特許で保護されるか

なぞなぞクイズや、トランプ等のように、人間が頭の中だけでルールを考えたゲームおもちゃは特許の対象外です。

ただしルービックキューブのように、不思議な動きをするパズル玩具の場合は、その動作機構を中心に発明をまとめることにより特許化が可能です。

なお、これまでルービックキューブについての特許がハンガリー、米国、日本等で取得されましたが、ルービックキューブについての全ての特許権は、現在では消滅しています。

なお商標登録の場合と異なり特許権の場合は権利の更新ができませんので、権利期間が満了した後は、特許権を取得することはできません。

また特許権以外の実用新案件、意匠権についても現時点で権利が残っているものはないです。

(5)ルービックキューブは著作権で保護されるか

諸論ありますが、著作権による保護は期待薄です

ルービックキューブの基本構造は立方体の各面を九分割して各面に色付けしたものですが、全体構造の外見はありふりふれていて、著作物としての保護を押し通すのは難しいと思います。

特にルービックキューブの場合は、その動きが独特であるため各パーツの動きに特徴があるのですが、これは技術的アイデアとして特許や実用新案で保護されるべき内容になっています。

ただし特許権や実用新案権も今では全て存続期間の関係で過去に存在していた権利は全て消滅していますので、現時点で動きの特徴をもって権利行使することは認められないです。

(6)まとめ

ではルービックキューブのコピー商品は自由に販売し放題であるか、というとそうではありません。

日本では先に説明した通り商標権が存在しますので、おもちゃの商品等にルービックキューブの商標を使えば商標法違反になります。さらに不正競争防止法違反に問われる可能性もゼロではありません。

一つの商品に多数の法律が関係していますので、商品販売には全ての法律をクリアしているかどうかの検討が必要になります。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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