(1)日本初の「ジェットコースター」について
現在、日本各地の遊園地にあるジェットコースターは、速さや高低差、カーブの角度など、それぞれの特色をもち、多くの来場者を楽しませています。
では、日本でジェットコースターが親しまれるようになったのは、いつ頃のことだったのでしょうか?
(1−1)「ジェットコースター」? 「ローラーコースター」?
後楽園ゆうえんち
ジェットコースターが日本で初めて設置されたのは、後楽園ゆうえんち(現・東京ドームシティアトラクションズ)でした。
都市型遊園地として1955年に開業した際、目玉となったアトラクションです。
都心に現れた巨大な遊園地と高速で疾走するジェットコースターは、きっと訪れる人を驚かせたことでしょう。
この出来事にちなみ、後楽園ゆうえんちの開業日である7月9日は、現在、「ジェットコースターの日」とされています。
浅草花やしき
もしかしたら、ここまで読んで「あれ?」と思われた方もいるかもしれません。
「確か、日本一古いのは浅草花やしきだったのでは?」と。
確かに浅草花やしきにあるローラーコースターは、後楽園ゆうえんちより2年早い1953年に設置されました。
現在でも運転を続ける日本最古のコースターです。
速さはそれほどではありませんが、浅草の街並みに突っ込んでいくようなコースはスリルがあり、いまでも高い人気を誇っています。
日本初の「ジェットコースター」と日本最古の「ローラーコースター」
さて、ここでお気づきでしょうか?
後楽園ゆうえんちのアトラクションは「ジェットコースター」。
浅草花やしきのものは「ローラーコースター」となっています。
急傾斜を疾走するアトラクションは、アメリカでは「ローラーコースター」と呼ばれています。
これに対して「ジェットコースター」という名称は、後楽園ゆうえんちの開業時に付けられたものです。
つまり、「日本初のジェットコースター」というと、後楽園ゆうえんちのものを指し、「日本最古のローラーコースター」というと、浅草花やしきのものを指すことになります。
同じ系統のアトラクションでも、このように呼び名が異なるのは興味深いものですね。
(2)「ジェットコースター」の商標登録について
しかし、開業当初から後楽園ゆうえんちと深いかかわりがあるにもかかわらず、「ジェットコースター」という商標は、運営する株式会社東京ドームのものではありません。
後楽園ゆうえんちの開業時には、商標登録を行わなかったようです。
現在、「ジェットコースター」の商標は、株式会社平和というパチンコ・パチスロメーカーによって、第28類「遊戯用器具」として登録されています。
ただし、「遊戯用器具」は、おもちゃやテレビゲーム機、運動用具などを対象とするものであり、遊園地にあるアトラクションは含まれません。
そのため、ほかの遊園地が園内のアトラクションに「ジェットコースター」という名称を使用しても問題にならないのです。
「ジェットコースター」という呼び名が日本で定着したのは、こんな背景もあったのですね。
(3)アトラクション名を商標登録 〜富士急ハイランド
その後、時代とともに技術が向上し、ジェットコースターは進化していきました。
山梨県にある富士急ハイランドには、4大ジェットコースターと呼ばれる絶叫マシンがあります。
これは「ドドンパ」、「高飛車」、「ええじゃないか」、「FUJIYAMA」という4つのアトラクションを指し、いずれも商標登録されています。
つまり「ジェットコースター」という名称ではなく、それぞれのアトラクション名で商標を登録をし、権利を守ろうとしているのですね。
ちなみに、「ドドンパ」は、2016年10月から約9カ月の休業期間を経て、2017年7月15日に、新たに「ド・ドドンパ」としてリニューアルされています。
加速度世界一を謳う「ド・ドドンパ」の最高時速は180キロメートル。
浅草花やしきにある日本最古の「ローラーコースター」の最高時速は42キロメートルなので、比較すると、その速さと進化がよくわかりますね。
(4)まとめ
いかがでしたか?
ジェットコースターにも、さまざまな裏話があるものですね。
遊園地を訪れた際、順番待ちの列に並びながら、一緒にいる方に披露してみてはどうでしょうか。
待ち時間の退屈が少し紛れ、乗車したときの楽しみが増すかもしれません。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247