商標から見るヨーグルトの世界

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1.「ヨーグルト」とは?

日本では「ヨーグルト」は「発酵乳」に該当するもののひとつです。ではその「発酵乳」とは?

「発酵乳」とは「乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌または酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの、またはこれらを凍結したもの。」
(厚生労働省の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」より)

つまり日本では「ヨーグルト」という商品に対する定義は特にないのです。

一方、「コーデックス」という国際的な食品規格では「乳にスターター(乳酸菌や酵母)を用いて発酵を行ったヨーグルト,ケフィア,クーミスなど特徴づけられた製品」を「発酵乳」としています。

このように「ヨーグルト」と呼ばれるためには「乳」「乳と同等以上の無脂乳固形分を含む乳等」を使っていることが前提といえますので、例えば牛乳を使わず豆乳を原材料としたものは厳密には「ヨーグルト」とは呼べないのかもしれません。

2.ヨーグルト豆知識

(1)ヨーグルトの歴史

諸説ありますが、紀元前5000年くらいの羊の家畜化がはじまった頃、たまたまその乳に乳酸菌が入りこんだのがヨーグルトの起源と言われています。それにしても、最初に口にした人は勇気がありますよね。ちなみに紀元前5000年頃というと日本では縄文時代です。

また日本でも奈良時代の頃には「酪」というヨーグルトに近いと思われるものが貴族などの一部の人たちの間で食されていたそうですが、庶民には到底手の届かない「高嶺の花」だったようです。

日本でヨーグルトが販売されたのは明治27年、牛乳の売れ残り対策として考えられた、牛乳を発酵させたものである「凝乳」が日本初のヨーグルトと言われています。ただしこの頃もどちらかというと「薬」や「病気の人向けの食事」のような扱いで、一般家庭に普及するのは戦後になってからです。

そう考えるとヨーグルトが日本の食卓のおなじみさんになってからまだ日が浅いんですね。

(2)ヨーグルトのつくり方

市販のヨーグルトには大きく分けて2パターンの作り方があります。

ひとつは発酵が終わったあとに容器につめる「前発酵」で、もうひとつは容器につめた後に発酵させる「後発酵」です。

「前発酵」は主に甘味料や果肉等が入っているソフトタイプのヨーグルトやのむヨーグルト、「後発酵」は主にプレーンヨーグルトやハードタイプのヨーグルトをつくる際にそれぞれ採用されています。

<参照>
一般社団法人日本乳業協会サイト
【乳と乳製品についてのQ&A】ヨーグルト・乳酸菌飲料
http://www.nyukyou.jp/ cgi/dairy/index.cgi?categoryA_2=1

3.世界のご当地ヨーグルト

お店に行くと本当に数多くの種類のヨーグルトが販売されています。その中で、もとは特定の地域で食されていた特徴的なヨーグルトを目にすることが増えてきました。

ここではそんな「ご当地ヨーグルト」たちをいくつかご紹介しましょう!

(1)ブルガリアヨーグルト

ブルガリアヨーグルトの立体商標の正面図

ブルガリアヨーグルトの立体商標の平面図

ブルガリアヨーグルトの立体商標の斜視図

特許庁の商標公報より引用

  • 商標登録第5949934号
  • 権利者:明治ホールディングス株式会社
  • 出願日:2016年10月28日
  • 登録日:2017年5月26日
  • 指定商品:
    第29類「ブルガリア菌を用いた発酵乳,ブルガリア菌を用いたその他の乳製品」

日本人に「ブルガリアといえばヨーグルト」の認識を植え付けたといっても過言ではない画期的商品でしょう。登録商標であるこのパッケージもおなじみですよね。

1970年に開催された大阪万国博覧会のブルガリア館に出品されていた本場ブルガリアのヨーグルトを明治乳業(当時)の社員が試食したことがきっかけで開発がはじめられた、日本初のプレーンヨーグルトです。

1972年にはブルガリアから国名を使用する許可を得て翌年1973年に商品名を「明治ブルガリアヨーグルト」に変更し、今に至っています。

<参照>
株式会社明治サイト
明治ブルガリアヨーグルト【ヨーグルトの正統】
http://www.meijibulgariayogurt.com/ about/yogurtbook.html

(2)カスピ海ヨーグルト

登録商標カスピ海ヨーグルト
特許庁の商標公報より引用

  • 商標登録第5761425号
  • 権利者:フジッコ株式会社
  • 出願日:2013年3月1日
  • 登録日:2015年5月1日
  • 指定商品:
    第29類「ヨーグルト」

ヨーグルトとは思えない粘り気が特徴的です。

みなさんの中にも種菌を牛乳に入れてこのヨーグルトをつくって召し上がっていた方がいらっしゃるのではないでしょうか。実は私はつくっていました。

もとは黒海とカスピ海に囲まれたコーカサス地方のジョージア生まれです。この地方に元気なお年寄りが多いことから、長寿食文化の専門家である家森幸男博士が研究用にこの地方の自家製ヨーグルトを持ち帰ったことで日本に広まったといわれています。

フジッコ株式会社の「カスピ海ヨーグルト」にはクレモリス菌FC株という菌が使われており、あの独特の粘り気はこの菌のおかげです。

<参照>
フジッコ株式会社サイト
「カスピ海ヨーグルト」のルーツ
http://www.caspia.jp/cywhat/roots/

「カスピ海ヨーグルト」の乳酸菌
http://www.caspia.jp/cywhat/lab/

「カスピ海ヨーグルト」ヒストリー
http://www.caspia.jp/cywhat/history/

(3)ギリシャヨーグルト

登録商標パルテノ

特許庁の商標公報より引用

  • 商標登録第5407062号
  • 権利者:森永乳業株式会社
  • 出願日:2010年11月12日
  • 登録日:2011年4月15日
  • 指定商品:
    第29類「食用油脂,乳製品」

ご当地ヨーグルトとしては比較的ニューフェイスですが、いくつものメーカーから販売されています。

他のヨーグルトにはないまるでチーズのように濃厚な食感と味わいが特徴ですが、これは「水切り」をすることで余分な水分や乳清を取り除くことで得られるものです。

ギリシャでは昔から食べられてきたものですが、料理にも使いやすいことと高タンパク低カロリーという特性が人々の健康志向にマッチしたのか、1990年代後半にはヨーロッパで、その後アメリカでブームになりました。

このギリシャヨーグルトを日本で商品化したいと考えたのが、「森永アロエヨーグルト」等のヒット商品を世に送り出した森永乳業株式会社です。しかし本来のギリシャヨーグルトの良さを生かしつつ工業的に生産することは容易でありませんでした。開発者の方たちが試行錯誤した結果、日本初のギリシャヨーグルトとして登場したのが、この「パルテノ」です。

<参照>
森永乳業株式会社サイト
ギリシャヨーグルトの歴史
http://partheno-gy.jp/ greekyogurt/

森永乳業のヨーグルト開発
https://www.morinagamilk.co.jp/ learn_enjoy/research/story/yogurt/

4.まとめ

「地名+商品」で構成される商標は原則として登録を受けることができません。特定の人が独占すべき商標ではないからです。

そのため、今回例示したご当地ヨーグルトに関する商標は、パッケージ自体だったり、デザイン化した文字の商標や特徴的な名称の部分のみを商標とすることで登録を受けています。

確かにこの登録商標だけでは、第三者が「地名+商品」で構成される商標を使用することは止められないかもしれません。しかし、参入者が増えて商品の市場自体は大きくなっても、これらの登録商標が本来の役目である「同業他社の商品の中から自分たちの商品を選んでもらうための目印」として働くことで、商標権者である各メーカーはこれらのご当地ヨーグルトの日本でのパイオニアとしての地位を守っていくことができているのです。

ヨーグルトを召し上がるときには、ヨーグルトの人気をバックアップしている商標にも少しだけ思いをはせていただければうれしいです。

それではまた。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 杉本 明子
03-6667-0247

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