(1)沼津港深海水族館の商標とは?
(1−1)小さな絵に込められた水族館の目玉
まずは、下の商標をみてみましょう。
沼津港深海水族館では入り口やホームページなど、さまざまなところでこの商標が使われています。
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
最初にこの商標をみたとき、左上の魚のシルエットに目がいったでしょうか?
これは「生きた化石」と呼ばれるシーラカンスの姿です。
沼津港深海水族館の2階には「シーラカンス・ミュージアム」があり、世界で唯一、冷凍されたシーラカンスをみることができます。
水族館の大きな特色が、商標のなかにしっかりとデザインされていることがわかりますね。
沼津港深海水族館(商標登録 第5802605号)
沼津港深海水族館は、2011年に地元の水産会社によって建設されました。
その後、2015年に商標として登録されています。
- 権利者:佐政水産株式会社
- 出願日:2015年5月1日
- 登録日:2015年10月30日
区分は以下の通りです。
- 第3類「口臭用消臭剤、せっけん類、歯磨き、化粧品、香料」など
- 第9類「携帯電話機用ストラップ、電気通信機械器具、レコード、インターネットを利用して受信しおよび保存することができる画像ファイル、電子出版物」など
- 第14類「宝玉およびその原石並びに宝玉の模造品、キーホルダー、宝石箱、身飾品、時計」など
- 第16類「事務用または家庭用ののりおよび接着剤、紙類、文房具類、印刷物、写真」など
- 第18類「皮革製包装用容器、かばん類、袋物、傘、つえ」など
- 第24類「布製身の回り品、布団、毛布、ふきん、カーテン」など
- 第25類「被服、バンド、ベルト、履物、運動用特殊衣服」など
- 第28類「おもちゃ、人形、すごろく、トランプ、遊戯用器具」など
- 第29類「乳製品、食用魚介類(生きているものを除く)、肉製品、加工野菜および加工果実、ふりかけ」など
- 第30類「茶、コーヒー、菓子、パン、弁当」など
- 第41類「植物・動物および海洋生物の供覧、興行の企画・運営または開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行およびスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く)、動物の調教、娯楽施設の提供、体験学習を中心としたセミナーの企画・運営または開催」など
3億5000万年前と変わらない姿・シーラカンス
シーラカンスが最初に捕まえられたのは、1938年。南アフリカのチャルムナ川沖での出来事でした。絶滅したと考えられていたシーラカンスが、3億5000万年前と同じ姿で発見されたという事実は、当時の世界の人々を仰天させました。
シーラカンスは背骨がなく、体液で満たされた脊柱で頭から尾びれまでつながっており、まるで歩くような姿で泳ぎます。
また、肉質の胸びれと腹びれには大きな骨と関節があり、これはほかの魚にはみられない特徴です。
そのため、魚の時代と呼ばれている古生代デボン紀にシーラカンスの仲間から進化が始まったと考えられ、魚類から両生類へと変化する過程の姿でいるのではないか、といわれています。
シーラカンスは、最初の発見以降、南アフリカ以外にもタンザニアやコモロ諸島、さらにインドネシアなどで姿が確認されています。
(2)深海という未知にふれられる空間
(2−1)深海生物に囲まれて感じる進化の謎
沼津港深海水族館のすぐそばにある駿河湾は、最も深いところで2,500メートルという日本一の深さを誇っています。
館内では、駿河湾で発見された深海生物を中心に、多くの生きものがテーマ別に展示されています。一風変わった姿をしたものや貴重な生きものも多く、深海という未知の世界にふれることができます。
また、深海には生命の誕生や進化に関する謎を解く鍵があるともいわれています。
太陽の光の届かない深い海で、何万年も前から姿を変えずにきた多くの生きものたち。そんな深海生物に囲まれた館内を歩いていると、遠い昔から現在までの長い長い地球の歩みも感じられるかもしれません。
(2−2) 世界的にも貴重な施設「シーラカンス・ミュージアム」
「シーラカンス・ミュージアム」では、5体のシーラカンスが展示されています。そのうちの2体は、世界でも類をみない冷凍個体です。
シーラカンスはワシントン条約に指定されており、通常では商業目的の展示を行うことはできません。けれど、沼津港深海水族館のシーラカンスは一般公開を正式に認められたもので、日本で直接目にすることができるのはこの施設のみとなっています。
また、個体展示のほかに、シーラカンスの映像をみることもできます。
コモロ諸島で撮影された海中の遊泳映像や、CTスキャン(0.6mm幅)を行って再現した立体映像などをみながら、最新のデータを元に生体の謎にも迫れます。
(2−3)沼津港深海水族館に足を運びたい方は…
沼津港深海水族館は、静岡県沼津市にあり、基本的に年中無休となっています。
詳細は、以下のURLで確認できます。
「沼津港深海水族館」
http://www.numazu-deepsea.com/
館長は「海の手配師」としても活躍
館長の石垣幸二氏は、沼津港深海水族館の立ち上げに奔走し、現在も仕入れや展示など、水族館の運営に大きな役割を果たしています。
さらに、世界の水族館やペットショップに生物を届ける「海の手配師」としての顔ももっています。たくさんのイベントやメディアにも登場しているので、お顔をみたことがある人もいるかもしれませんね。
(3)まとめ
商標のなかに小さく描かれたシーラカンスのシルエットは、沼津港深海水族館にとって大きな意味をもつものだったのですね。
普段、観光施設のホームページや看板、グッズなどで商標を目にしても、それほど気にとめないかもしれません。けれど、じっとみてみると、その施設の特徴がわかりやすく示されているものも数多くあります。
休日にどこかに行ったとき、その施設の看板などに注目してはいかがでしょう?
商標のなかの小さな絵やデザインの意味に気づき、ちょっとした知識を披露できるかもしれません。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247