1.立体商標の登録内容はコチラ
缶チューハイの代表格ともいえる「氷結」ですが、この氷結の容器のみの立体商標が今年の3月に特許庁で登録されました。
立体の形状も商標登録の対象になりますが、今回の氷結の立体商標は通常の立体商標とは様子が異なります。というのは、次の画像のような立体商標の登録は、商標の中でも特別に登録が難しいからです。
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第6127292号
- 権利者:キリン株式会社
- 出願日:2015年1月15日
- 登録日:2019年3月8日
- 指定商品:
第33類「缶入り酎ハイ」
上の画像を見ていただければお分かりの通り、今回登録された立体商標には、文字やマークは表示されておりません。
商標とは「商いの目印」であり、たくさんある同業他社の商品やサービスから自分たちのものをお客さまに見つけてもらうためのツールです。
そのため、文字やマークなしの容器では「目印」と認識してもらいにくく、商標登録はなかなかハードルが高いのです。
しかし、「氷結」は2001年7月の販売スタートからずーっとこの缶を使っていることから、文字やマークがなくても消費者が見つけられると判断されたのでしょう。
ただ、本件についても、拒絶査定不服審判を経て登録されていますので、商標登録までの道のりは楽ではなかったと思います。
2.この缶には名前があります
なおこの缶には「ダイヤカット缶」という名前があります。
そして「ダイヤカット」も「酎ハイ」等の商標として登録されていますよ。
ダイヤカット
- 商標登録第5623785号
- 権利者:キリン株式会社
- 出願日:2013年6月10日
- 登録日:2013年10月18日
- 指定商品:
第33類「日本酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,カクテル,麦芽又は麦を使用したビール風味のリキュール,麦芽又は麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,中国酒,薬味酒」
3.ただの模様ではありません
お酒が好きな方はご存知のことと思いますが、「氷結」に使われている「ダイヤカット缶」といえば、缶を開けると膨らむ、表面のダイヤ形の凹凸が特徴です。
このダイヤ形の凹凸には「ミウラ折り」という折り方の技術が生かされています。
「ミウラ折り」とは東京大学名誉教授の三浦公亮先生が考案した折りの技術で、紙以外にも様々な分野で使われています。
これにより、見た目の爽やかさだけでなく、強度を上げることもできるのです。
ダイヤ形の凹凸、おそるべし。
なお「ミウラ折り」に関する商標もいくつか登録されています。
そのうちの一つをご紹介。
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第5412399号
- 権利者:株式会社miura―ori lab 外2
- 出願日:2009年4月24日
- 登録日:2011年5月20日
- 指定商品:
第6類「非鉄金属及びその合金,アルミニウム粗製品」
第9類「アンテナ,光電効果又は光起電力効果を使用する太陽電池パネル」
第11類「電球類及び照明用器具」
第12類「タイヤ」
第16類「カタログ,カレンダー,図鑑,雑誌,新聞,地図,ニューズレター,パンフレット,名刺用紙,紙製包装用容器」
第17類「プラスチック基礎製品,耐圧ホース」
第20類「プラスチック製包装用容器」
<参照>
キリンホールディングス株式会社 ニュースリリース
https://www.kirin.co.jp/company/news/2019/0221_06.html
ミウラ折り公式
https://miuraori.biz/
4.まとめ
ひとつの缶にたくさんの思いや工夫が詰まっているのですね。今度お店で「氷結」を見かけたときにでも思い出していただけると幸いです。
なお「氷結」も登録商標ですので、お忘れなく。
それではまた。
ファーイースト国際特許事務所
弁理士 杉本 明子