【宇宙ビジネスと商標の意外な関係】はやぶさ2から見える商標の盲点とは?

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索引

1.はやぶさ2の快挙

「はやぶさ2」は、日本が誇る小惑星探査機。あの伝説的な「はやぶさ」の後継機として、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発したものです。

この探査機は、地球近傍の小惑星「リュウグウ」に着陸(いわゆる“タッチダウン”)し、岩石などのサンプルを回収に成功しました。その後、地球への帰還にも成功しました。宇宙の神秘——「海水の起源」や「生命の起源」に迫る手がかりを得るための、まさに歴史的プロジェクトです。

2014年12月3日、種子島宇宙センターから打ち上げられた「はやぶさ2」は、長い旅路の末、2019年2月22日、日本時間午前7時29分に小惑星リュウグウへのタッチダウンを達成。この瞬間、日本中が歓喜に沸きました。

しかも、リュウグウの表面は予想外に過酷。平らな場所がほとんどなく、着陸は当初予定の2018年10月から延期。最終的には、直径わずか6メートルの円を正確に狙っての着地に成功したのです。これは、宇宙探査技術の精度が世界トップレベルであることの証です。

2.商標って、地球だけの話?

「はやぶさ2」の偉業——小惑星からのサンプルリターン。
このニュースに胸を熱くした方も多いでしょう。

でも、もしあなたが宇宙ビジネスに参入しようとしているなら、ちょっと待ってください。
「その名前、商標登録されていますか?」

商標の世界では、「商標」と「指定された商品やサービス」の組み合わせで権利が成立します。
そして、その商品やサービスは、日本では特許庁が定める45の区分の中から選ぶ必要があります。

「小惑星のサンプルを持ち帰る」というサービスは、いったいどの区分に該当するのでしょうか?

宇宙は商標のグレーゾーン?

実際に、特許庁のデータベース(J-PlatPat)で「宇宙」「小惑星」「サンプルリターン」などを検索してみても……
該当しそうな指定役務が見つからないのです。
あえて近い表現を探すなら、第42類の
「航空宇宙に関するエンジニアリングの技術的助言」
といったサービスが挙げられます。

宇宙探査が研究開発や技術支援の一環なら、確かにこれは該当するかもしれません。

さらに調べてみると──

  • 「宇宙船」は第12類の“製品”
  • 「宇宙船の打ち上げ」「宇宙船による輸送」は第39類の“輸送サービス”
  • 「宇宙食用即席ラーメン」は第30類!(違いが気になります)

意外にも、宇宙関連の分類は、現行制度内にも点在していることが分かります。

でも……宇宙に“国”はない

ここで、より根本的な問いが浮かびます。
商標権の効力って、宇宙でも通用するの?
商標権は「属地主義」に基づき、国ごとに発生し、効力もその国の中だけです。

たとえば、日本で商標権を持つ人がいても、その権利は日本国内でしか主張できません。
では、宇宙ではどうでしょう?

  • 宇宙には国境がない
  • 宇宙ステーションにも「この国の領土」といえる明確な線引きはない

たとえば、ある宇宙ステーションで、
X国で「A」という商標を持つ甲さんと、
Y国で同じ「A」という商標を持つ乙さんがばったり遭遇し、
そこにAのロゴをつけた商品を販売している丙さんを見つけたら……?
いったい、誰の権利が守られるのでしょうか?

未来の商標は“地球外”へ?

これは単なる思考実験ではなく、
これから宇宙ビジネスが本格化する時代に向けて、真剣に考えるべき論点です。

もしかすると、将来は「宇宙商標法条約」なんてものが登場するかもしれません。
そのとき、先んじて登録をしていた企業が大きな優位性を持つことになる可能性もあります。

3.未来の商標は“地球外”へ?

「宇宙ビジネス」と聞いて、まだ遠い未来の話だと感じていませんか?
でも今、それは急速に現実味を帯びています。

世界の宇宙ビジネス市場は、2010年時点でおよそ27兆円。
それが2017年には38兆円に達し、2030年代にはなんと70兆円超に成長すると予測されています。
もはや夢ではなく、巨大産業です。

日本でも民間企業の参入が次々と進んでいます。
月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」には、唯一の日本チームとしてHAKUTO(現ispace)が参加しました。
さらに、米国のイーロンマスク氏は、火星への人類到達を計画して話題になりました。

かつて「遥か彼方」と思われた宇宙が、いまや“手が届きそうな場所”になりつつあります。
個人的にも、一生に一度は宇宙に行ってみたい─(高いところは少し苦手ですが……)。

こうした動きは、法制度、特に商標法にも影響を及ぼし始めています。
例えば、今回のはやぶさ2のように、小惑星からサンプルを回収するミッションを、将来的に民間企業が担う時代が来るかもしれません。
そうなれば、その企業名やプロジェクト名、あるいはサービス名に、商標としての価値が生まれてきます。

さらに、宇宙特有の新サービスが次々と生まれれば、地球上とは異なる形での商標や知的財産の扱いが求められるようになるでしょう。
「宇宙にも商標登録が必要な時代」──そんな未来がすぐそこまで来ています。

宇宙という“未踏のフロンティア”に、法制度も歩みを進めるべきときが来ています。
これからの宇宙ビジネスにおける知財の動き、ぜひ注目してください。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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