1.拒絶理由通知に対するアクションとその時期的制限
「商標登録の出願の後に、審査官から『このままでは登録を認めません!』との内容の通知を受け取ってしまった……!」
こんなとき、出願人として取れる主なアクションは2つあります。
(A)審査官の認定に納得できない場合
✅ 意見書を提出して反論する
「意見書」を出すことで、自分の主張を明確に伝えられます。
ただし、この意見書を提出できる期限には法的な制限があります。
(B)指定商品・役務(まれに商標自体)の修正
✅ 手続補正書を提出して修正する
「手続補正書」を提出して、不備を修正する方法です。
こちらは(A)と違って、意見書の提出期限(商標法第一五条の二)とは直接リンクしていません。
応答期間は「発送日」からカウント
商標法の条文では「相当の期間」と表現されていますが、通常は次のように設定されています。
- 国内の一般的な地域の場合:拒絶理由通知の発送日から40日
- 伊豆諸島や南西諸島など特定地域の場合:発送日から55日
- 出願人が在外者の場合:発送日から3か月
ここで気をつけたいのが、通知書に記載されている「起案日」と「発送日」です。
カウントの基準は「発送日」なので、うっかり間違えないように注意しましょう。
応答期間が過ぎたらどうなる?
「意見書が提出できる期間」を超えてしまうと、意見書の提出がないとして、審査官が審査を打ち切り、登録を認めないとする拒絶査定を出す可能性があります。
期限を過ぎた場合でも一定期間内であれば延長を申請することも可能なので、間に合わないと感じたら早めに対応策を検討しましょう。
ここがポイント
- 拒絶理由通知への対応には主に「意見書(反論)」と「手続補正書(修正)」の合わせ技で行う
- 「意見書」を提出できる期間は発送日から数えて40日(特定地域55日、在外者3か月)
- 期間を過ぎると審査が打ち切られて拒絶査定になる可能性がある
- ただし、応答期間を延長する方法もあるので、諦めずに手続きを進めましょう!
2.「拒絶理由通知の応答期間」の延長
商標出願をしたあと、特許庁から「拒絶理由通知」が届くことがあります。この通知に対して何も手を打たないまま応答期間を過ぎてしまうと、通常は出願が拒絶される流れになってしまうのが従来の常識でした。2016年4月1日以降、その常識がガラッと変わっています。
応答期間を延長できるようになった理由
実は、日本が商標法に関するシンガポール条約(STLT)に加入したことによって、応答期間を過ぎたあとでも“救済措置”が設けられるようになりました。これまでのルールでは「拒絶理由通知に対する応答期限内(発送日から40日・55日・3か月など)に手続しなければ手遅れ」だったのが、条約加入を機に期間延長の申請を出願人が後から行うことが可能になったのです。
こんな場合に助かります
- 忙しくて、期限内に書類を作成できずに間に合わなかった
- 拒絶理由通知の文章がわかりづらく、対応策に悩んでいるうちに期限を逃してしまった
- 代理人を立てずに手続きをしていて、混乱してしまった
以前なら「ああ、もう間に合わない…」と諦めるしかなかったケースでも、救済される可能性があります。
ただし、気をつけたいポイント
- 延長や救済措置は無制限に何度も使えるわけではありません。条件や手続きは必ず確認しましょう
- 応答期限を守るのが基本です。救済措置があるとはいえ、余裕を持った対応ができればベストです
- 書類の提出や各種手続きは法律上細かいルールが多いため、必要なら弁理士や専門家へ相談してください
もし拒絶理由通知に悩んでいる方がいたら、「期限が過ぎてもまだチャンスがある」という点をぜひ覚えておいてくださいね。大切な商標を守るためにも、知識をアップデートしてしっかり対策しましょう!
応答期間の延長手続きとは?
拒絶理由通知を受け取った後、特許庁に提出する「期間延長請求書」によって、意見書などの提出期限を延ばすことができます。延長には大きく分けて3つのパターンがあります。
1. 応答期間内に延長を請求する場合
- 対象期間:拒絶理由通知の発送日から数えて40日、55日、または3か月以内
- 延長できる期間:1か月
- 手数料(印紙代):2,100円
- 理由書の要否:不要(例:大災害などの合理的理由がなくてもOK)
2. 応答期間が過ぎた後(2016年4月1日から導入)
- 対象期間:もともとの応答期間が終了した後
- 延長できる期間:2か月
- 手数料(印紙代):4,200円
- 理由書の要否:不要(例:大災害などの合理的理由がなくてもOK)
3. 「合わせ技」で延長を重ねる場合
- 手順:まず(1)の方法で1か月延長し、その延長後の期間が終わってから(2)の方法で2か月延長
- 延長できる期間:合計3か月(1か月+2か月)
- 手数料(印紙代):合計6,300円(2,100円+4,200円)
- 理由書の要否:不要
土・日・祝日の最終日には要注意!
拒絶理由通知の応答期間の最終日が閉庁日に当たるときは、翌開庁日まで意見書を提出できます。たとえば、最終日が日曜日や祝日なら、次の平日が期限扱いになります。
例
- 最終日:2018年4月29日(日)
- 翌日:4月30日(月)祝日→さらに翌日5月1日(火)
- 実際の期限:5月1日まで
ただし、(1)の「応答期間内に延長を請求する」ケースでは、期間延長の開始日(起算日)はあくまで“元の応答期限”から数える点に注意が必要です。最終日が開庁日であれば、その日までしか延長手続きをとれないので、休日だからといって翌開庁日にずらせるわけではありません。
特許庁サイトより引用
3.まとめ
- 拒絶理由通知を受け取っても焦らない! 応答期間は延ばせます
- 手数料はかかるものの、特別な理由書はいらないので、時間に余裕がほしいときは有効活用しましょう
- 土日祝日の期限は翌開庁日まで延びる仕組みと、(1)の延長制度は元の期限からカウントする点は混同しがちなので要チェックです
商標登録をスムーズに進めるためにも、万が一の延長手続きを知っておくと安心ですね。疑問点やご不明な点があれば、プロに相談してみましょう!
ここがポイント
- 応答期間(40日)経過後でも、期間延長の請求が認められるようになりました。
- 具体的には、もともとの40日に加え、最大3か月(応答期間内1か月+期間経過後2か月)まで延長が可能です。
- ただし、期間延長には手数料が発生しますし、「まだ大丈夫」と思っているうちに3か月もあっという間に過ぎてしまいます。
- 余裕があるうちに手続きを進めておくのがベスト。早めのアクションを強くおすすめします。
「あとでいいや」が一番危険です。自戒の念も込めて、時間にはしっかり余裕を持って行動しましょう。これは商標手続きをスムーズに進めるうえでの基本中の基本といえます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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