日本初の“商店街”地域団体商標!「かっぱ橋道具街」のストーリー

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「かっぱ橋道具街」は、地域団体商標として“商店街”では全国初の登録です。
その背景には、100年以上の歴史と、苦難を乗り越えてきた地元商人たちの熱い想いがあります。

焼け野原から復活 —「かっぱ橋道具街」の歩み

東京・上野と浅草の間に位置する「かっぱ橋道具街」。
その始まりは、大正時代の新堀川沿いに開かれた数軒の古道具店からでした。
やがて関東大震災の復興とともに、調理器具や食器など“食の道具”を扱う店が集まり、街は少しずつ賑わいを見せるようになります。

しかし、1945年。東京大空襲によってこのエリア一帯は壊滅的な被害を受け、「道具街」も例外ではなく全焼しました。
それでも、戦後すぐに商人たちは再び立ち上がります。
焼け跡に次々と店が再建され、「かっぱ橋道具街」は奇跡の復興を遂げました。
そして、長年の努力が実を結び、全国からプロが集う一大商店街へと発展したのです。

「ここに来れば何でもそろう」— 食のプロも一般客も魅了する170店以上の専門店

現在、かっぱ橋道具街には約170の専門店が軒を連ねています。
調理器具、製菓道具、厨房機器、食器、食品サンプル、看板、ユニフォーム……
“食”に関わるすべてが揃う、日本でも屈指の道具街です。

かっぱ橋の街並み

最近では、プロの料理人や店舗関係者に加え、一般の観光客や料理好きの方たちも多く訪れる「お出かけスポット」として注目されています。

レトロな下町の雰囲気を感じながら、掘り出し物の名品に出会える。
そんな体験が、SNSでも話題になっているのです。

「かっぱ」の由来、あなたはどっち派?

「かっぱ橋」の名には、ちょっとユニークな由来があります。現在、主に以下の2説が知られています。

雨合羽(あまがっぱ)説

江戸時代、この地域に住んでいた武士たちが副業で雨合羽を手作りしており、それを橋に干していたことから、「合羽橋」という地名がついたという説。

河童(かっぱ)説

もうひとつの説は、まるで昔話のようなエピソード。
頻繁に洪水被害を受けていた新堀川の工事を、ある商人「合羽屋喜八」が私財を投じて開始。
その努力を見た河童たちが、夜な夜な工事を手伝ったという伝説が残されています。
どちらの説もユニークで、地域の人々の記憶や文化が色濃く反映されたものです。

地域ブランドとしての価値、そして商標へ

このように、歴史・文化・実用性すべてを兼ね備えた「かっぱ橋道具街」は、2006年、地域団体商標に登録されました。
これは、“商店街”としては全国初の快挙です。
地域に根ざした商標の価値が見直される中、
「かっぱ橋道具街」はその象徴的な存在といえるでしょう。

登録までの長い道のり 〜「かっぱ橋」表記の壁と知名度の証明〜

地域団体商標としての登録に至るまでには、決して平坦ではない道がありました。

まず大きな壁となったのが、「かっぱ橋」「カッパ橋」「合羽橋」などバラバラな名称の表記。まずはこれを「かっぱ橋道具街」に統一し、正式な文字商標としての登録を目指すことからスタートしました。
しかし、当時はまだ地域団体商標制度が整備される前でした。
地名に商品内容を加えた商標は、たとえ長年の実績があっても、よほどの知名度がない限り登録は認められない時代でした。
「かっぱ橋道具街」もその例外ではなく、「全国的な著名性を証明できない」との理由で一度は登録を断念せざるを得なかったのです。

転機は制度の変化と100周年

そんな状況が一変したのが、2006年の地域団体商標制度のスタート、そして2007年の「小売等役務商標制度」の導入です。
これにより、個々の商品ではなく「商店街全体としてのサービス」が商標として保護される道が開かれました。

さらに、2012年に迎える創業100周年という節目が追い風となり、2011年、「かっぱ橋道具街」は第35類(小売・卸売サービス)として商標出願。2013年、ついに地域団体商標としての登録が実現しました。

商標登録の詳細

  • 登録商標:かっぱ橋道具街(商標登録 第5578351号)
  • 登録日:2013年4月26日
  • 権利者:東京合羽橋商店街振興組合
  • 指定区分(第35類):業務用厨房機器、鍋類、食品サンプル、白衣、冷蔵庫などの小売・卸売サービス(台東区松が谷・西浅草地区内)

「道具街でお客様に便益を提供する」という“体験そのもの”が商標として保護されているのです。

実は、図形商標も登録済みだった!

文字商標の登録に先んじて、2004年には図形商標も取得済みでした。かわいらしい“かっぱのイラスト”をあしらったデザインがその一例です。

かっぱ橋・登録商標
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用

  • 商標登録:第4823272号(図形商標)
  • 登録日:2004年12月3日
  • 指定区分(第35類):広告、市場調査、来訪者の案内など

このように、ビジュアルとブランド体験の両面から「かっぱ橋道具街」の価値が守られているのです。

【豆知識】かっぱの旗とステッカーに注目!

かっぱ橋・組合旗
「かっぱ橋道具街」HPより引用

街を歩いていると、いたるところに“かっぱマーク”の旗やステッカーが目に入ります。これは、東京合羽橋商店街振興組合が配布している正規加盟店の証。
お店選びに迷ったら、この“かっぱマーク”を目印にすると間違いなしです!

なぜ今、「地域団体商標」が注目されているのか?

地域の名前と商品・サービスを組み合わせて商標化できる制度は、いまや全国の地域活性化の鍵となっています。
「かっぱ橋道具街」のように、地元の人々が“自らのブランド”を守るための法的な手段として、地域団体商標は今後ますます重要な存在になるでしょう。

街の魅力を、もっと身近に。オンラインで広がる「かっぱ橋道具街」の世界

東京・浅草の名物商店街「かっぱ橋道具街」は、地域団体商標の第1号として登録された歴史ある商店街です。
そんな「かっぱ橋道具街」は、1996年というインターネット黎明期からホームページを立ち上げ、早くからデジタルの力を活用してきました。
100周年を記念して行われたサイトのリニューアルでは、店舗名・商品カテゴリー・業種・地図などからお店を探せる検索機能が新たに追加され、訪れる前の「予習」がぐっと便利になりました。

行かなくても買える!プロも唸る道具をネットで

さらに注目なのは、インターネット通販に対応している店舗も増えていること。
実際に現地へ行かずとも、プロ仕様の本格的な調理道具や器具が自宅から購入できるんです。
「行きたいけど遠い」「時間がない」そんなあなたも、“ネットでかっぱ橋”を体験できます。

これからの商店街は、オンラインとリアルのハイブリッドがスタンダード。
ぜひ一度チェックしてみてください!

まとめ 〜道具と商標が支える、まちの元気〜

毎年10月、「かっぱ橋道具街」では商店街全体が力を合わせて開催する一大イベント「かっぱ橋道具まつり」が行われています。2017年には第34回を迎え、1週間にわたって多彩な催しが繰り広げられ、多くの来場者で賑わいました。

このまつりを訪れると、プロの料理人はもちろん、日々の食卓を担う主婦の方々も、道具選びの楽しさに引き込まれます。新しい調理道具との出会いは、料理へのモチベーションを一段と高めてくれるはずです。実は、私たちの食卓に並ぶ「おいしい」は、ひとつひとつの道具がそれぞれの役割を果たしてくれているからこそ、実現されているのです。

そしてもう一つ、見えないけれど確かな力。それが「商標」の役割です。
「かっぱ橋道具街」は、全国で初めて“商店街”として地域団体商標に登録された先駆的な存在。この商標があるからこそ、地域のブランドが守られ、まち全体の信頼と魅力が支えられているのです。

いい道具と、いい商標が、地域の未来をつくる。
そんな想いが詰まった「かっぱ橋道具街」は、まさに“道具のまち”そのもの。商標は単なる権利ではなく、地域の誇りと賑わいを守るための大切な道具でもあるのです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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