流行語を個人が商標登録して独占できるのか?

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1. 流行語の商標登録をめぐる問題の本質

商標登録が認められると、登録した商標を特定の商品やサービスについて独占的に使用する権利が発生します。この仕組みは本来、企業や個人が育ててきたブランドを保護するための制度です。しかし、世の中で流行している言葉を誰かが商標登録してしまうと、その人だけがその言葉を独占することになるのでしょうか。

実は、流行語の商標登録は以前から繰り返し問題になってきました。私も2013年12月5日に東海ラジオの「夕焼けナビ」という番組に出演した際、当時流行していた「じぇじぇじぇ」という言葉の商標登録出願について解説したことがあります。安蒜豊三パーソナリティーとともに、この問題の本質について議論しました。

2. 「じぇじぇじぇ」をめぐる商標登録の事例

「じぇじぇじぇ」は驚いたときに使う表現の一つで、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で使われたことから全国的に知られるようになりました。当時は社会現象といえるほどの人気を集め、多くの人がこの言葉を日常会話で使うようになりました。

ところが、この「じぇじぇじぇ」について商標登録出願がされていることが判明し、インターネットを中心に大きな話題となりました。

商標「じぇじぇじぇ」について登録されなかった事例

出願番号/登録番号/国際登録番号:商願2014-001492
商標(検索用):じぇじぇじぇ
読み替え・検索キーワード:ジェジェジェ
区分:28, 35, 41
出願日:2014/01/10
登録日:
ステータス:終了 – 出願 – 拒絶/却下又は無効

商願2014-001492として出願されたこの商標は、結局登録には至りませんでした。

一方で、お菓子などの商品を指定して出願された商標登録第5767702号は登録が認められています。

商標「じぇじぇじぇ」について登録された事例

出願番号/登録番号/国際登録番号:登録5767702(商願2013-039171)
商標(検索用):じぇじぇじぇ\ジェジェジェ
読み替え・検索キーワード:ジェジェジェ
区分:30
出願日:2013/05/10
登録日:2015/05/29
ステータス:存続 – 登録 – 継続

3. 一般的な表現と商標登録の関係

「じぇじぇじぇ」のような一般的な表現を商標登録できるのかという疑問は当然のことです。商標が一般的かどうかの判断は、実は商標登録を申請する際に願書に記載する商品やサービスとの関係で決まります。

驚いたときの表現として「じぇじぇじぇ」は一般的といえますが、お菓子の名前として「じぇじぇじゃ」がこれまで広く使われてきたかというと、そうではありません。

このため、お菓子などの商品について「じぇじぇじぇ」という商標を出願すれば、商標登録が認められる可能性があるわけです。

4. 第三者による流行語の商標登録への対策

NHKの番組で有名になった言葉を、番組とは無関係の第三者が商標登録して利益を独占することには、公平性の観点から問題があります。特許庁もこの点を認識しており、既に有名になっている言葉を後から商標登録出願しても、簡単には審査を通過できない仕組みになっています。

商標法には、有名になった他人の商標と紛らわしい商標は登録しないという規定があります。この規定により、一定の知名度を得た商標については、第三者による便乗的な商標登録を防ぐことが可能です。

5. 有名な商標でも登録が必要な理由

では、有名になった商標については商標登録をしなくてもよいのかというと、そうではありません。時間が経過すれば、かつて有名だった商標も次第に忘れ去られ、再び他人が商標登録できる状態に戻っていきます。

逆に、少し有名になっただけで、あらゆる商品やサービスについて商標登録ができなくなるとすれば、有名であることを理由に過度の既得権を与えることになります。このバランスをどこで取るかが、商標制度における重要な論点となります。

適法な手続きで出願された商標登録を審査過程で拒絶するには、その商標が法的に保護すべき価値を持っているかどうかが慎重に検討されます。

形式的に有名というだけでは不十分で、実質的な保護の必要性が問われることになります。

6. 不当な商標登録への対抗手段

仮に無関係の第三者が流行語を横取りする形で商標登録してしまった場合でも、対抗する手段は残されています。商標登録後に異議申立という手続きを行うことで、その商標登録の妥当性を争うことが可能です。

また、商標登録から時間が経過していても、無効審判という手続きを通じて商標権を消滅させることもできます。これらの制度により、不当な商標登録に対しては事後的に是正する道が開かれています。

流行語の商標登録問題は、知的財産権の保護と公共の利益のバランスをどう取るかという、商標制度の根幹に関わる課題です。適切な権利保護と社会的な公平性の両立が、今後も求められ続けるでしょう。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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