ニュースで偽化粧品が話題になっています。
- 半額以下で買った化粧下地「ペンキみたい」(MBS NEWS 2025年3/12(水) 11:01配信)
- 「まるでペンキ」5年間で相談件数は4倍(TBS NEWS 2025年3/12(水) 16:48配信)
なぜ、偽化粧品が出回るのか、対策はどうすればよいかをまとめます。
1. なぜ、偽化粧品が出回るのか
これは、ずばり、継続的に使用されるからです。化粧品は単価が高く、中身の詰替えが容易なため、狙われやすいです。
極端な話ですが、水にある種の添加剤を混ぜて、化粧品風の溶液を作り出すこともできます。水が大半ですから、手っ取り早く稼ぐことができます。
また小口に分けて、ECサイト等に大量にばら撒かれた場合、メーカー側は一つの店舗を摘発しても数点しか知的財産権侵害品を回収できないこともありえます。
昨年、税関で差し止められた知的財産権侵害品は3万件以上、商品数にして130万件ほどになります(財務省発表「令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」から)。
化粧品だけが狙い撃ちされているのではなく、衣服、かばん、靴など日用品が広く狙われています。
実際に輸入が差し止められた件数がこれだけですから、取締をすり抜けた件数はさらに多くあると見込まれます。
差し止められた件数の約8割は中国からの輸入です。
2. 偽化粧品を購入した場合、救済されるのか
2-1. 購入代金を取り返すのは難しい
厳しい話ですが、救済されません。偽化粧品を販売するようなECサイトは、最初から騙すつもりで販売しているからです。数千円から数万円支払って購入しても返金されないのが通常です。消費者センター、国民生活センター、弁護士会の相談窓口に被害を訴えても、業者に指導注意等の措置はあるかもしれませんが、やはりお金を取り返すのは難しいです。
この数千円から数万円程度のお金は微妙で、例えば弁護士等の専門家に対策をお願いして返金してもらったとしても、専門家に支払う金額が上回ってしまいます。ある意味、ずるい価格帯を狙っていると思われます。
2-2. 良心的な正規販売店が偽化粧品を扱うことはないです
自社の販売する化粧品に、ニセモノが混入していることは、通常の正規販売店では考えられないです。ニセモノと本物を見分ける能力がない、ということを自ら証明するようなものだからです。
仮に、通常の正規販売店でニセモノが販売されているとしたら、それは、飲食店で大規模食中毒事件を起こすような場合に該当します。ネットで炎上し、再起不能になります。
偽物を扱うECサイト等の販売店は、分かっていて偽物を販売します。仕入れ価格から、その価格では正規ルートでは手に入らないことを知っています。プロなら知らないはずがないです。最初から騙す気満々ということです。一定期間販売を続けると、口コミの低評価が続き、偽化粧品を扱っているのがばれるので、この様な偽物を扱うECサイトは短期間で閉じられ、また新たな売上を狙う別の名前のECサイトが立ち上がるいたちごっこになると予測できます。
2-3. 正規代理店で、偽物化粧品を正規品に交換してもらえるか
怪しいサイトで購入した偽化粧品を、メーカーに持ち込んでも、正規品と交換はしてくれないです。もし交換してくれるなら、偽化粧品製造会社が、バイトを雇ってメーカーに偽化粧品を持ち込ませ、どんどん正規品に交換できてしまいます。
メーカーに偽化粧品を正規品に交換するのを強要するのは、偽札を通常のお金に交換するのを強要するのと同じで、逆に詐欺の話になってしまいます。
3. メーカー側は対策をしていないのか
もちろん、メーカー側は対策をしています。例えば、暗号化された製品番号をそれぞれの製品にうち、登録された暗号の製品番号と合致しないものは偽化粧品と分かるような対策等を施しています。
メーカー側は正規品を見分ける目印を公表できない
当たり前の話ですが、メーカー側は消費者に正規品を見分けるポイントを発表できないです。メーカー側が正規品を見分けるポイントを発表すると、偽化粧品を作る業者はそのポイントを取り入れて偽造してくるからです。
昔は、パッケージが安っぽい、表示されている日本語がおかしい等のそれと分かる手がかりがありましたが、いたちごっこで、偽化粧品も日々進化しています。ひと目では偽化粧品と見分けるのが難しいレベルになってきています。
4. 偽化粧品を購入しないために
悪徳業者側は、あらゆる知恵を絞って消費者を騙して偽物を買わせようとしてきますので、油断は大敵です。
- 正規代理店から本物を購入する
- メールやSNSの単発情報に基づく購入は控える
- 異様に安い価格になっていないか確認する
- 支払い方法が現金だけになっていないか、多種の支払い方法に対応しているか確認する
- 返金条件を確認する
等の自己対策が必要です。
ただし、これらを確認した上でECサイトから購入した場合であっても、後で業者と連絡が取れなくなることも考えられます。
正規品を正規代理店から購入し、今後の購入品と比較できるようにする
偽化粧品側も日々進化しますので、偽化粧品単品をみても、それが本物かどうかを判断するのは極めて困難です。
このため、手元に正規品を用意し、購入した商品の中にニセモノが混入していないか比較できるように備えておく必要があります。
偽化粧品の中に高級品は入れられない
偽化粧品を販売する業者側も、検挙されるリスクを犯して偽化粧品を販売しているわけですから、儲からないと話になりません。
必然的に、偽化粧品の中に入れる成分は、高級品とは異なるものにならざるを得ません。
もし内容物が正規品と異なるなら、どこかに違いが現れると予測できます。
- 匂いが違う
- 色が違う
- 透明度が違う
- 粘り気が違う
等の商品内容の違いに注意しましょう。
最終的には自己防衛
特に化粧品は長期に渡って毎日使用することが多いです。偽化粧品の中に変な成分が混入していて肌のトラブルが発生した場合、それまで安く購入して節約した金額よりも、もっと大きな痛手を負うかもしれません。
何かあった場合、業者が保証してくれればよいですが、偽化粧品を売るような業者は短期間で偽商品を捌いて、短期間でサイトを閉めてしまうことが予測されるため、被害に気がついた場合でも保証は期待できないです。
やはり、口にするものとか、肌に直接塗る化粧品については、正規代理店から購入することを、強くお薦めします。
フジテレビ・めざまし8に生出演、偽の化粧品問題を解説した私のコメントは、2025年3月18日にオンエアされました。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247