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商標権売却の売値をシンプルに求める方法とは?


商標権は、他社に勝手に商標を使わせない権利であると同時に、売買の対象にもなる財産権です。自社で使い続けるだけでなく、第三者へ売却して現金化する道もあります。

では、いざ商標権を売るとなったとき、売値はどう決めればよいのでしょうか。値付けの根拠があやふやなまま交渉に臨むと、本来の価値よりも安く買い叩かれてしまいます。ここでは、実務でよく使われる3つの評価アプローチを整理して紹介します。

1. 商標権は売ることができる財産権

商標権は、不動産と同じように売却できる権利です。商標権者が、権利を買いたい相手に対して有償で譲渡する形で取引が行われます。合意ができれば、長年使ってきた商品名の商標権を他社に売り渡し、対価を受け取ることもできます。

商標権を持っているかどうかで、交渉力は大きく変わります。商標権がなければ、他人に無断で自社の商標を使われても、使用を止めさせる法的な根拠が弱くなります。

一方、商標権を取得していれば、無断使用に対して差止請求や損害賠償請求ができます。法人には3億円以下の罰金、個人には10年以下の懲役など、刑事罰が科される場面もあります。この強力な保護を背景にすれば、売却交渉でも立場を有利に運べるのです。

実際の商標権譲渡は、特許庁へ移転登録をして初めて効力を生じます。譲渡契約書を交わしたあと、商標権移転登録申請書を特許庁に提出し、登録免許税(1区分あたり30,000円)を納めることで所有権が正式に切り替わります。口約束だけで済ませると、後から第三者に二重譲渡されるリスクも残るため、契約書と登録手続きはセットで進める前提で動きます。

2. 取得費用から考えるコストアプローチ

商標権は売ることができるの?

商標権は売買可能な権利なので、商標権の購入を希望する人と合意できたなら、有償移転の形で売却できるんだ。

商標権の売値に、「これ以上で売るべき」という明確な法律上の基準はありません。オークション方式と同じで、買いたい人が集まれば数億円規模の取引も起こり得ます。とはいえ、最低限の根拠となる数字は用意しておきたいところです。

その目安を与えてくれるのが、コストアプローチです。商標権を取得するまでに投じた総費用を基礎にして売値を組み立てる考え方で、出願料・登録料・弁理士への報酬など、実際に支払った金額を積み上げて価値を測ります。

利点は、計算過程がシンプルで、売り手と買い手の双方が納得しやすいところです。出願や登録にかかる費用は日本弁理士会の公表資料などから確認でき、根拠を示しやすい数字になります。

一方で弱点もあります。売れ筋の商標権も、誰も欲しがらない商標権も、取得費用だけで評価すればほぼ同じ価格帯になってしまうのです。たとえば1区分の出願・登録費用は、特許庁印紙代と弁理士報酬を合わせて15万〜20万円前後に収まることが多く、この金額を基準にしてしまうと、全国ブランドに育った商標権でも15万円スタートの交渉になりかねません。ブランド力の差を値段に反映しきれないのが、この手法の限界です。

そのため、コストアプローチは売値そのものを決める手法というより、「少なくともこの金額は下回らない」という最低ラインを引くための基準として使われます。買い手側から「取得費用すら回収できない値段」を提示されたときに、交渉を押し返すための防衛線として機能する数字だと考えてください。

3. 市場取引から考えるマーケットアプローチ

商標権の取得額から商標権の値段を考えるのがコストアプローチなのね。

費用の考え方としては分かりやすいけれど、どの商標権もほぼ同額になってしまう問題があるよ。

ネットオークションで欲しい商品を落札するときは、直近の落札価格を調べてから入札額を決めます。商標権の売買でも、同じ発想で値付けをする方法があり、これをマーケットアプローチと呼びます。

似たような業種・指定商品の商標権が、過去にいくらで取引されたか。公開されている譲渡事例やM&Aの情報を集め、その水準を参考に自社の商標権の売値を組み立てます。

利点は、実際の市場価格を下敷きにするため、交渉相手にも納得してもらいやすい点です。他の事例とかけ離れた高値で押し通したり、逆に相場を知らずに安く手放したりする事故を減らせます。

難しさもあります。商標権は独占権であり、文字通り二つと同じものは存在しません。指定商品が違えば、ブランドの知名度も事業規模も違います。他社の取引価格をそのまま自社に当てはめられるかは、常に検討が要ります。加えて、商標権の売買事例は一般公開されていないものが多く、専門家でなければ生きた相場をつかみにくいという制約もあります。

マーケットアプローチは有力な手がかりになりますが、他の事例との公平性を機械的に担保する手法ではないという前提で使ってください。

4. 稼ぐ力から考えるインカムアプローチ

商標権の市場取引価格から商標権の値段を考えるのがマーケットアプローチなのね。

独占権である商標権は全く同じ権利内容のものは二つとしてないので、他の取引価格を参考にできるかという根本問題があるんだ。

同じ業界で、同じような商品を扱う同規模の会社でも、売上に大きな差がつくことがあります。その差を生む要因として大きいのが、目に見えないブランド力です。商品が高値で売れる裏側には、商標の持つ信用が働いています。

この「商標権が生み出す利益」を出発点に値段を決めるのが、インカムアプローチです。たとえば、ある商標権が毎年1000万円の利益を生んでいるとします。その継続的な収益を現在価値に引き直せば、商標権そのものの値段を導けます。

実務では、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)法がよく使われます。将来10年間にわたって生み出されるキャッシュフローを、割引率で現時点の価値に換算し、合計を売値の目安とします。

簡単な例で考えてみます。商標権が毎年1000万円のライセンス収入を10年間生み続け、割引率を年5%とした場合、各年度の現在価値を合計するとおよそ7720万円です。これが、この商標権の理論的な売値のベースになります。割引率を10%まで引き上げれば現在価値は約6140万円、逆に3%まで下げれば約8530万円と、前提の置き方で結論が大きく動きます。ベンチャー企業の買収額や事業承継の評価事例と照らし合わせれば、さらに数字の精度が上がります。

利点は、その商標権の個性と稼ぐ力を真正面から反映できるところです。コストアプローチのように、どの商標権も横並びの評価にはなりません。取引の当事者全員が、「この商標権は、なぜこの値段なのか」を具体的な数字で共有できます。

一方で、将来の売上予測や割引率など、仮定の要素を多く含みます。前提の置き方で結論が動きやすいため、売り手と買い手で算定の解釈が食い違うこともあります。インカムアプローチで値付けをするなら、その商標権がどれだけの利益を継続的に生み出せるのか、裏付けとなるデータを丁寧にそろえる作業が欠かせません。

5. 商標権の価値は、育ててから売る

商標権が生み出す利益から商標権の値段を考えるのがインカムアプローチなのね。

一定額を生み出すシステムはどのくらいの価値があるのか計算で求めるのがインカムアプローチなんだ。

商標権の売値を決める手法を整理すると、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの3つにまとまります。なかでもインカムアプローチは、価格の根拠を具体的に示せるため、売値の主軸として採用されやすい手法です。

ただ、どの手法を選ぶかという話の前に、もっと大事な視点があります。それは、商標権を売る前に、その商標権の価値そのものを高めておくという姿勢です。

「お金に換えたいので買ってほしい」と自分から持ちかけるのは、商標権を廃品回収に出すのと変わりません。足元を見られ、買い叩かれるのが目に見えています。オークションで高値がつくのは、欲しい人が大勢集まったときだけです。商標権の売却もこれと同じで、「ぜひ使わせてほしい」「ぜひ譲ってほしい」と相手から声がかかる状態を作っておくことが、高値売却につながります。

商標権はビジネスの資産です。育てて価値を高め、売るタイミングと売値を自分の側でコントロールする。この順序を守れば、商標権は単なる権利ではなく、事業の成果を何倍にも変換する道具になります。

当事務所では、商標権の価値評価、譲渡契約書の作成、特許庁への移転登録まで、弁理士と弁護士が連携して対応しています。売却を検討している商標権があり、値付けの根拠や交渉の進め方で迷われているなら、一度ご相談ください。実務経験10年以上の現役弁理士・弁護士が直接ヒアリングし、売却に向けた道筋を一緒に組み立てます。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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