索引
(1)「動き商標」について
(1−1)どんなものが「動き商標」になりますか?
時間の経過とともに、文字や図形などが変化する商標は「動き商標」と呼ばれています。
これはテレビやコンピューターの画面に映し出される文字や図形を思い浮かべると、わかりやすいかと思います。
また、ここには時間の経過によって「変化する」ものだけではなく、「移動する」ものも含まれます。
画面に映し出された鳥が懸命に羽ばたきながら空中を移動する姿(=「変化する」)と、大きく羽を広げたまま飛ぶ姿(=「移動する」)を想像してみてください。
これはどちらも「動き商標」に該当します。
さらに平面の商標だけでなく、立体の商標で動くものもここに含まれます。
(1−2)もしも、以前から使っていたら?
位置商標を除く新しいタイプの商標については、この制度が始まる前から使っていた場合には、商標を登録しなくともこれまでの業務の範囲で使うことは可能です。
これは継続的使用権と呼ばれています。
(2)どんなものが登録されていますか?
現在登録されている「動き商標」には、次のようなものがあります。
(2−1)日本での「動き商標」の例
まず日本では、菊正宗酒造のテレビCMで流れていた映像がよく知られています。
これは紫の風呂敷がはらりとほどけていき、そこに包まれていた一升瓶が姿を見せるもので、見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。
(2−2)海外での「動き商標」 の例
海外では米国の登録商標として、「ランボルギーニ」や「20th Century Fox」が有名です。
「ランボルギーニ」は高級車を扱っていることで知られるイタリアの自動車メーカーです。登録されているのは、この車の上の方に開く特徴的なドアの動きです。これはスタイリッシュな印象を愛好者たちに与え、その心をつかんでいるのかもしれません。
また、「20th Century Fox」は「スターウォーズ」や「タイタニック」といった有名作品も手がけているアメリカの映画会社です。
映画が始める前に流れる映像を覚えているでしょうか? 館内が暗くなると、スクリーンには夜空を照らすサーチライトの様子が映し出され、「20th CENTURY FOX」の文字が浮かび上がります。この動きが登録されているのです。
このような例を知ると、これまで「動き商標」をご存知なかった方も、思いのほか身近に感じられるのではないでしょうか?
(3)「動き商標」を出願してみましょう
(3−1)願書を作成するには
いざ「動き商標」の出願を考えた際には、「商標登録願」をつくる上で気をつけなければならないことがあります。
まず【商標登録を受けようとする商標】欄では、図や写真を使って、時間が経つにつれて商標が変化する様子がわかるように記載することが重要です。
さらにその下の欄では【動き商標】であることを明記します。
そして、【商標の詳細な説明】欄で、商標の文字や図形の説明と、時間によってどのように変化するのかについて、詳しく記述していきます。
このとき、動き商標が変化する順番や必要とする時間にもふれます。
(3−2)「動き商標」登録の一例
〜日本弁理士会マスコットキャラクター〜
では、具体的にどのような図や記述が必要なのか、日本弁理士会のマスコットキャラクター「はっぴょん」(商標登録第5904184号)を例に説明していきます。
これは、9枚の図が時間が経過するによって変化していく「動き商標」として登録されています。図の順番は右下の番号1〜9で示されています。
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
まず最初に、腕を組んで目を閉じているキャラクターが[1]、片目を見開いて何かをひらめきます[2]。
そしてにっこりと笑いながら、体を上下に動かします。右上には音符も描かれ、楽しげな様子がうかがえます[3〜6]。
その後、帽子が少しずつ浮き上がっていき、キャラクターとの間に「日本弁理士会」の文字が現れます[7〜9]。
「はっぴょん」の場合、全体の所要時間は約4秒間になります。
(4)まとめ
いかがでしたか?
「動き商標」の出願は通常の商標登録に比べ、少し混みいった印象を受けるかもしれません。けれど商標のもつ独自性が強く感じられ、いっそう愛着がわくこともあります。
難しそうだと尻込みせず、ぜひ挑戦してみてください。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247