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ブランド戦略の名前選び|改名の事例と商標を確認する手順

1. 商品の良さが伝わる名前を考える

商品には自信があるのに、説明を聞いてもらう前に候補から外れてしまう。そんなときは、名前から何が伝わっているかを確かめてみてください。作り手には分かる技術用語でも、初めて見る人には何の商品なのか分からない場合があります。

機能や品質、価格、広告の出し方を変える前に、名前だけを見た人がどのような商品を想像するかを聞いてみると、説明の食い違いが見つかります。店頭でもスマートフォンの検索結果でも、比較されるのは自社の商品だけではありません。名前を理解するまで長い説明を要するなら、その間に別の商品を選ばれることもあります。

ただし、名前を変えれば売上の問題がすべて解決するという話ではありません。以前のタイトルにあった「9割」は、効果を測定した統計値ではなく、名前を重視する趣旨の表現でした。品質、販売経路、価格、広告といった条件も購入に関わるため、ここでは名前の働きと商標の確認を具体例から考えます。

名前は、商品を覚え、もう一度探し、人に紹介する際の手掛かりになります。その名前を継続して使うために、伝わりやすさと併せて商標の調査・出願を進めます。販売直前に初めて調べると、包装や広告を作り直す時間が残らないことがあります。

2. ロゴや名前に、お客さまの経験が結び付く

ブランドと聞いて、高級品のロゴを思い浮かべる方もいるでしょう。しかし、身近な食品や日用品にもブランドがあります。前に買ってよかった、問い合わせに丁寧に対応してもらった、といった経験が名前やマークと結び付き、次に選ぶ理由になります。

同じ商品を繰り返し買う人は、毎回すべての候補を比べ直しているとは限りません。「あの名前なら安心」という記憶があれば、売場で探す時間も短くなります。元の記事で述べた、頭の中のショートカットという考え方は、このように過去の経験を呼び出して選ぶ様子を指しています。

企業が宣伝で約束した内容と、使った人の経験が食い違えば、名前だけ整えても信頼は続きません。壊れにくさを伝えるなら実際の耐久性、使いやすさを伝えるなら操作や説明書まで含めて、名前から受ける印象に応えているかを確かめます。

ロゴの形や色が記憶に残る一方、検索や口コミでは言葉が使われます。写真では見分けられても、口頭では名前を言えない商品だと、紹介や検索の途中で見つけにくくなります。表示のデザインと、読んで呼ぶ名前を併せて検討してください。

3. 商標を確認すると、継続使用や事業展開を考えやすくなる

商標法は、商品やサービスを誰が提供しているかを見分けるための名前やマークを保護します。広告を重ねて名前が知られるようになっても、先に他人が似た商標の権利を持っていれば、そのまま使い続けられるとは限りません。認知を広げる投資と、権利の確認を別々に進めないことが大切です。

自社の名前について登録を確保すれば、他社の使用への対応や使用許諾を検討する基礎になります。ただし、登録されたという理由だけで、あらゆる商品や国で独占できるわけではありません。登録商標、指定商品・指定役務、保護される国や地域を具体的に確認します。

シリーズ商品を増やす、他社と共同企画をする、ライセンスを与える、海外へ販売する、といった場面でも権利範囲を確かめます。共同企画なら、どちらが名前を持ち、企画終了後も誰が使えるかを決めます。海外展開なら、日本の登録とは別に現地の権利を調べます。

商標権は有償で移転されることもあります。事業を譲り渡す際には、商品名の知名度だけでなく、権利者の名義や登録内容が契約と合っているかを確認します。名前が事業の価値に関わるという元の論点は、このような管理と取引の場面にもつながります。

4. 企業名・製品名・シリーズ名の役割を決める

会社の名前を前面に出すのか、製品ごとに独立した名前を付けるのかで、伝わり方は変わります。企業ブランドは、会社全体の実績を新しい製品にも伝えやすい反面、一つの製品で起きた問題が会社全体の印象に及ぶこともあります。

製品ブランドは、その商品の用途や使う人に合わせて名前を考えられます。消費者へ直接販売するD2Cや、最初の製品で認知を得たいスタートアップでは、製品名が会社を知る入口になる場合もあります。ただ、製品ごとに別の名前を付け続けると、新製品を出すたびに最初から覚えてもらう負担が生じます。

シリーズ名があれば、個別の製品を共通の特徴でつなげられます。例えば、同じ使い方の入門用と上位製品を並べる場合に、シリーズ名から関係が分かれば買い替え時にも探しやすくなります。元の記事のカテゴリー・シリーズブランドの話は、この選びやすさを考えるためのものです。

企業名は販売元を示す、シリーズ名は共通する特徴を示す、製品名は個々の違いを示す、といった役割を決め、実際の包装や検索結果でどう見えるかを確かめます。どの名前について商標を調べるかも併せて決めます。企業名を登録していても、独立した製品名の確認が済んだことにはなりません。

5. 五つの商品名から、伝え方の違いを見る

名前を変えた経緯が知られる商品を見比べると、機能の言葉を使う人の言葉へ言い換える方法が見えてきます。ただし、改名前後の売上差をすべて名前だけの効果とは扱えません。商品改良、パッケージ、広告、販売店の変化も確認しながら読みます。

まるでこたつソックス

「三陰交をあたためるソックス」から「まるでこたつソックス」への変更では、身体の部位を示す専門的な言葉から、暖かさを想像しやすい言葉へ変わっています。三陰交を知らない人でも、こたつの暖かさなら思い浮かべやすいでしょう。

岡本の公表資料では、商品はそのままに名称を見直し、2015年に登場したと説明しています。売上が17倍以上という説明は2013年と2016年の出荷実績の比較です。比較期間を示さず、どの商品でも改名すれば同じ結果になると考えることはできません。

鼻セレブ

「ネピア モイスチャーティシュ」と「鼻セレブ」を比べると、保湿という性質を説明する名前から、鼻を丁寧に扱う印象を持つ名前へ変わっています。「セレブ」という言葉を鼻と組み合わせた意外さも、名前を覚える手掛かりになります。

ネピア公式の紹介でも前身の商品と、その後の見直しが説明されています。ここで参考にしたいのは単なる語呂のよさではなく、使う場面が名前に入っている点です。名前と併せて、商品や動物の顔を使ったパッケージがどう伝わるかも考えます。

カレーメシ

「カップカレーライス」から「カレーメシ」への変更は、従来のカレーライスを思い浮かべて買う人と、実際の商品との食い違いを考える例です。日清食品の開発経緯の紹介には、カレーとご飯が混ざった商品への消費者の意見を受け、コンセプトを見直したとあります。

2014年にカレーメシへ切り替え、その後2016年には電子レンジ調理から湯かけ調理へ変わっています。発売時の案内でも名称やデザインだけでなく味の改良が示されています。名前だけを交換した例として扱わず、商品をどう食べてもらうかまで見直した経緯として読むと、自社で検討すべき点が分かります。

お〜いお茶

「缶入り煎茶」は容器と中身を説明する名前ですが、「お〜いお茶」には呼びかける声が含まれています。伊藤園の沿革では、1989年に名称変更したと確認できます。単に短くしたのではなく、日常の会話として口にしやすい名前に変わった例です。

通勤快足

「フレッシュライフ」から「通勤快足」への改名例も、元の記事から引き継いで考えます。「通勤快速」と同じ読みを利用しながら「足」という文字を入れ、通勤時の足元を連想させています。誰がどんな場面で使うかを名前に表す方法として読めます。

この例については、メーカーの一次資料で改名単独の売上効果まで確認できていないため、売上倍率を断定しません。自社の候補名を考える際は、単なる駄じゃれになっていないか、商品の用途や特徴との結び付きがあるかを確かめてください。

旧名称新名称言葉の型名前から伝わること経緯を見る際の注意
三陰交をあたためるソックスまるでこたつソックス体験・メタファー型専門用語から、こたつの暖かさを思い浮かべる名前へメーカー公表の17倍以上は2013年と2016年の出荷実績の比較
ネピア モイスチャーティシュ鼻セレブ擬人化・ステータス型鼻に使う場面と、丁寧に扱う印象を伝える名前に加えて商品やパッケージの変更も確認する
缶入り煎茶お〜いお茶呼びかけ・日常風景型容器と中身の説明から、会話に出てくる言葉へ伊藤園の沿革では1989年に名称変更
カップカレーライスカレーメシカテゴリー創出型従来のカレーライスと異なる食べ方を示すコンセプト、味、調理方法も変更されている
フレッシュライフ通勤快足ターゲット明示と語呂通勤する人の足元という使用場面が浮かぶ旧本文の改名例を継承。改名単独の売上効果はここでは断定しない

体験を思い浮かべる比喩、擬人化や特別感、新しいカテゴリーの提示、日常の呼びかけ、使う人と場面の明示。同じ改名でも、伝え方には違いがあります。この分類は当事務所が言葉の働きを考えるための見方であり、各社がその分類を採用したと断定するものではありません。

6. 短さだけでなく、話しやすさと探しやすさを試す

短い名前でも、読み方が分からなければ口頭で紹介しにくくなります。逆に「まるでこたつソックス」のように少し長くても、何を感じる商品かが伝われば説明しやすい場合があります。文字数だけで候補を選ばず、声に出して読む、聞いた人に書いてもらう、といった確認をしてみてください。

「鼻セレブ」は語の組合せに意外さがあり、「お〜いお茶」は呼びかけとして口に出せます。名前の音やリズムは記憶の手掛かりになりますが、それだけでSNSの投稿が増えるとは言い切れません。使った人が何を伝えたくなる商品なのか、写真や説明と併せて見る必要があります。

SNSのハッシュタグでは、表記が割れると投稿を探しにくくなります。漢字・かな・英字のどれを正式表記にするか、長音や空白をどう扱うかを決め、入力して検索してみます。音で覚えた人が同じ商品にたどり着けるかも確認してください。

ユーザー投稿、いわゆるUGCは企業が必ず生み出せるものではありません。紹介しやすい名前にしたうえで、商品説明、写真、使い方、問い合わせ先をそろえ、投稿を見た人が確かめられる状態にします。認知を広げることと、誤解を減らすことを一緒に考えます。

7. 名前を決める前に、商標と使用先を調べる

商品の品質や用途をそのまま表すだけの名前は、自社の商品を見分ける力が弱く、商標登録が認められない場合があります。一方、商品の良さが伝わる言葉を含むからといって、すべて登録できないわけでもありません。文字や図形の組合せ、指定商品・指定役務との関係を確認します。

登録できた場合にも、権利が及ぶ範囲を過大に考えないことです。普通に使われる説明語まであらゆる場面で独占できるとは限りません。特許庁の商標制度の概要を入口に、自社の名前について具体的に検討してください。

元の記事では、ヘルシア緑茶を複数区分の登録例として取り上げました。個々の登録内容は登録番号から確認する前提ですが、飲料から食品、物販からサービス、店舗からデジタルサービスへと名前の使用先が広がる場合に、既存の権利で足りるかを点検するという論点は共通です。

区分番号だけで安心せず、実際に扱う商品・サービスが指定内容に入っているかを読みます。同じ区分に入る関連商品を記載し忘れていないかも確認してください。会社名、商品名、シリーズ名のどれを調べるかと、何の商品・サービスについて調べるかを具体的にします。

先行商標に加え、SNSアカウント、ドメイン、アプリ名、海外での読み方や意味も調べます。ただし、ドメインが空いていることは商標登録できる証拠ではなく、日本での登録が海外での使用を保証するわけでもありません。海外の現地語で望ましくない意味にならないかも、対象地域ごとに確かめます。

8. 改名時は、既存のお客さまと権利の移行を考える

改名すると、これまでの名前を覚えている人が同じ商品だと気付かないことがあります。名称だけを変えるのか、商品の特徴や対象とする人も変えるのかを、社内で先に決めます。中身まで変わるなら、旧商品と同じだと誤解させない説明も用意します。

旧名と新名をしばらく併記するのか、一度に切り替えるのかは、在庫、包装、看板、広告素材、取引先の登録情報に関わります。印刷済みの資材がどれだけあるか、どの販売店にいつ届くかまで確認すると、名前だけ先に発表して現場が追いつかない事態を避けやすくなります。

旧名の商標権を残すか、更新するか、旧名での使用をどう管理するかも検討します。新名の出願をしただけで旧名の権利が自動的に移るわけではありません。新名と他人の権利との関係を調べ、旧名の在庫販売や併記を含めて移行の予定を組みます。

検索する人への案内も用意してください。公式サイトの記事、FAQ、比較表、SNSの固定投稿、プロフィールに、旧名から新名へ変わったことと問い合わせ先を載せます。ウェブページのURLを変える場合は転送も検討し、古い広告やブックマークから来た人が迷わないようにします。

パッケージや写真まで変えるなら、同じ商品だと分かる要素をどこに残すかも考えます。新しい名前の印象と商品説明が食い違っていないか、販売担当者が同じ説明をできるかを確かめてから切り替えます。

9. 30日を目安に、候補づくりから出願準備へ進む

原記事の30日間という進め方は、社内作業を区切る目安です。30日で登録が終わるという意味ではなく、調査の難しさや候補の見直しで期間が延びることもあります。販売開始が決まっているなら、調査と出願に使える日数から逆算してください。

1週目は、買ってほしい人、使う場面、困っていること、商品の特徴を書き出します。誰に何を伝えるのかが曖昧なまま名前を出し合うと、好みの話だけで候補が決まりがちです。問い合わせや利用者の言葉も集め、社内の技術用語とどこが違うかを見ます。

2週目は、体験を伝える言葉、比喩、擬人化、使う場面、新しいカテゴリーを示す言葉など、複数の方向から候補を作ります。候補ごとに、読み方、想像される商品、使いたい表示を並べます。この段階から明らかな先行商標などを確認し、特定の候補に決め打ちしないようにします。

3週目は、絞った候補について商標調査を進め、SNSやドメインも確認します。簡易な検索で見つからなかっただけなら、詳細な調査まで終わったとは扱いません。似た商標が出た場合は、読み・見た目・意味と商品・サービスの関係を検討し、候補を残す理由や変える理由を記録します。

4週目は、調査結果に基づいて候補と指定商品・指定役務を決め、表示案を確認して出願を準備します。出願後も審査があり、登録が保証されるわけではありません。表記の管理、販売開始の判断、拒絶理由への対応、登録後の更新まで担当者と期限を決めておきます。

名前を考える担当者と、商標を調べる担当者が別の場合でも、候補や発売予定を早めに共有してください。当事務所へのご相談は商標の調査・相談フォームから受け付けています。候補名、商品・サービス、発売予定日、既存の登録番号があると具体的に検討できます。費用は料金案内をご参照ください。

10. ブランド名と商標についてよくある質問

Q1. 名前を変えるだけで売上は伸びますか?

そうとは限りません。改名前後で商品、価格、広告、販売先も変わっていないかを確認します。名前から商品の良さが伝わるかと、購入条件の両方を調べます。

Q2. 説明的な名前はすべて登録できませんか?

商品との関係や商標全体で判断されます。品質や用途を普通に表すだけなのか、自社商品を見分ける表示として機能するかを検討します。

Q3. 会社名の登録があれば、製品名の調査は不要ですか?

製品名が別の名前なら、その名前について調べます。使う商品・サービスも会社名の登録内容と同じとは限りません。

Q4. ドメインが取得できれば、その名前を使えますか?

ドメインの空きと商標権の有無は別です。先行商標や実際の使用例を調べ、SNSや海外での使用についても確認します。

Q5. 30日で商標登録まで終わりますか?

本文の30日は社内で候補を検討して出願を準備する目安です。出願後の審査や登録までの期間を示したものではありません。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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