100周年を超えたOSKと商標の関係

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1. 「OSK」とは?

華やかなステージの幕が上がり、きらびやかな衣装に身を包んだ女性たちが歌い踊る——日本の歌劇団文化は、世界でも類を見ない独特の輝きを放っています。その中でも「OSK日本歌劇団」は、創立から100年以上の歴史を誇る、知る人ぞ知る名門歌劇団です。

「歌劇団」と聞くと多くの方が「宝塚歌劇団」を思い浮かべるかもしれません。しかし、関西を中心に活動するOSKもまた、かつては「宝塚歌劇団」「松竹歌劇団(SKD)」と並んで「三大少女歌劇」のひとつに数えられていた、日本のエンターテインメント史に欠かせない存在なのです。

松竹歌劇団が1996年に惜しまれつつ解散した今、OSKは宝塚と並ぶ貴重な女性歌劇団として、その伝統を守り続けています。

(1)OSKの歴史

時は1922年、大正ロマンが花開いた時代。大阪の天下茶屋に「松竹楽劇部生徒養成所」が創設されたことが、OSKの輝かしい歴史の第一歩となりました。そして運命の1926年、レビュー「春のおどり」が初めて上演されると、その斬新な演出と華やかさで観客を魅了し、瞬く間に評判となったのです。

ところで「レビュー」とは一体どのようなものでしょうか。広辞苑によれば「踊りと歌とを中心に寸劇を織り込み、豪華な装置を伴うショー」とあります。もともとはパリで生まれ、毎年12月に1年間の出来事を風刺的に演じた喜劇でしたが、第一次世界大戦後には世界中で大流行しました。OSKは、この西洋生まれの華やかなエンターテインメントを日本流にアレンジし、独自の世界観を築き上げていったのです。

さらに驚くべきは、冷戦真っ只中の1965年から1974年にかけて、OSKがソ連やポーランドといった社会主義国で公演を行い、大成功を収めたことです。鉄のカーテンの向こう側で、日本の女性たちが歌い踊る姿は、まさに文化の架け橋となり、多くの人々の心を動かしました。

その後、1971年に近鉄グループの傘下に入ると、奈良市にあった近鉄あやめ池遊園地内のあやめ池円型大劇場を本拠地としながら、近鉄劇場をはじめ各地で精力的に公演を続けました。しかし2002年、親会社である近鉄からの支援打ち切りという衝撃的な決定により、翌2003年、OSKは一度その幕を下ろすことになってしまいます。

ここで物語は終わりませんでした。劇団の存続を切望する劇団員とファンの熱い想いが「OSK存続の会」という形で結実し、「New OSK日本歌劇団」として不死鳥のように蘇ったのです。その後も幾多の困難に直面し、民事再生法による再生手続きを経験しながらも、現在は「株式会社OSK日本歌劇団」として独立し、新たな歴史を刻み続けています。

(2)劇団の構成

現在のOSKには約50名の劇団員が在籍しており、全員が女性です。宝塚歌劇団と同様に、男役と娘役に分かれて演じるシステムを採用しています。その中でも特別な存在が、男役の頂点に立つ「トップスター」です。

たった一人だけが与えられるこの称号を持つ者は、メインの公演で常に主役を務める、まさに劇団の顔となる存在なのです。

現在のトップスターは翼和希(つばさ・かずき)さんが務めています。

OSKの歴史を彩った卒業生たちの中には、日本のエンターテインメント史に名を残す大スターもいます。「ブギの女王」として一世を風靡した笠置シヅ子、そして国際的な映画女優として活躍した京マチ子も、かつてOSKの舞台で輝いていました。彼女たちの存在は、OSKが単なる地方の歌劇団ではなく、日本を代表するスターを輩出してきた名門であることを物語っています。

(3)東京での公演

OSKは大阪の松竹座や大丸心斎橋劇場、近鉄アート館といった関西の劇場を中心に活動していますが、東京でもその華麗な舞台を観ることができます。毎年夏の風物詩となっているのが、新橋演舞場で上演される「夏のおどり」です。この公演は東京のファンにとって、年に一度の特別な機会となっています。

さらに、銀座の博品館劇場でも年に数回公演が行われており、関東在住の方々にもOSKの魅力を堪能できる機会が提供されています。これらの東京公演は、OSKが関西だけでなく、日本全国にファンを持つ歌劇団であることを示しています。

2. OSKの登録商標

(1)登録商標から劇団の歴史が見えます

商標登録は、企業や団体の歴史を映し出す鏡のような存在です。2025年6月2日現在、特許情報プラットフォームで確認できるOSKの登録商標を見てみると、実に興味深い事実が浮かび上がってきます。

登録No.1

出願/登録番号:登録3070905 (商願平04-283084)
商標:OSK
区分:41
出願人:株式会社OSK日本歌劇団
出願日:1992/09/30
登録日:1995/08/31

登録No.2

出願/登録番号:登録3102198 (商願平04-294604)
商標:OSK日本歌劇団
区分:41
出願人:株式会社OSK日本歌劇団
出願日:1992/09/30
登録日:1995/11/30

現在登録されている商標を時系列で見ると、番号1と2は1995年の登録ですが、これ以降は約20年後の2014年以降の登録となっています。この大きな時間的ギャップは、まさにOSKの波乱に満ちた歴史を物語っています。

出願/登録番号:登録5702825 (商願2014-034973)
商標:OSK日本歌劇団
区分:41
出願人:株式会社OSK日本歌劇団
出願日:2014/04/17
登録日:2014/09/19
出願/登録番号:登録5702826 (商願2014-034974)
商標:OSK\日本歌劇団
区分:41
出願人:株式会社OSK日本歌劇団
出願日:2014/04/17
登録日:2014/09/19
出願/登録番号:登録6578297 (商願2021-148654)
商標:(-)
区分:41
出願人:株式会社OSK日本歌劇団
出願日:2021/11/30
登録日:2022/06/27

1995年に登録された商標は、OSKが近鉄グループの傘下にあった安定期のものです。一方、2014年以降の登録は、様々な困難を乗り越えて現在の運営体制となってから取得されたものなのです。この間には、近鉄からの支援打ち切り、一時的な解散、そして再生という劇的なドラマがありました。

さらに興味深いのは、「New OSK日本歌劇団」時代にも商標登録があったという事実です。しかし、これらの商標は現在では権利が消滅しており、ここにも劇団の変遷の歴史が刻まれています。商標の登録と消滅、そして新たな登録という流れは、まさにOSKが不死鳥のように蘇り、新たな時代を築いていく過程を如実に表しているのです。

(2)劇団のロゴマーク

OSKのアイデンティティを視覚的に表現するロゴマークは、3種類が商標登録されています。二つのロゴマークに共通するのは、桜の花がデザインに組み込まれていることです。

劇団のロゴマーク
特許庁の商標公報より引用
OSKは桜をシンボル
特許庁の商標公報より引用

桜はOSKのシンボルとして長年愛されてきました。日本の春を代表する花である桜は、美しさと儚さを併せ持ち、まさに舞台芸術の本質を表現しています。満開の桜のように華やかに咲き誇り、そして散りゆく瞬間まで美しい——これはOSKの舞台そのものです。ロゴマークに刻まれた桜は、劇団の理念と美意識を象徴的に表現しているのです。

(3)レビューカフェ

出願/登録番号:登録5935763 (商願2016-085382)
商標:レビューカフェ
区分:41, 43
出願人:株式会社OSK日本歌劇団
出願日:2016/08/08
登録日:2017/03/31

「レビューカフェ」という商標は、OSKの新しい挑戦を表しています。これは従来の大劇場での公演とは異なり、少人数のメンバーがチームを組んで行う、より親密な形式の公演です。ホテルのディナーショーに近い雰囲気で、劇団員が客席に降りてきて観客との距離が縮まる、特別な体験を提供しています。

この商標の特徴的な点は、指定役務に第43類「飲食物の提供」等が含まれていることです。他のOSKの登録商標にはこの分類は含まれていません。これは、レビューカフェがワンドリンク付きという、飲食を伴うエンターテインメントであることを反映しています。商標登録の内容からも、OSKが新しい公演形態に挑戦し、観客により身近な体験を提供しようとしている姿勢が読み取れます。

(4)REVUE JAPAN

出願/登録番号:登録5988005 (商願2017-016220)
商標:REVUE JAPAN
区分:41
出願人:株式会社OSK日本歌劇団
出願日:2017/02/13
登録日:2017/10/13

「REVUE JAPAN」は、グローバル化する時代に対応したOSKの戦略的な商標です。道頓堀の角座という大阪の中心地で上演されるこの公演は、芸者やサムライといった日本の伝統的なイメージを前面に押し出した内容となっています。

訪日外国人観光客が急増する中、日本文化を凝縮した形で体験できるこの公演は、まさに時代のニーズに応えたものと言えるでしょう。商標名に英語を使用していることからも、国際的な観客を意識していることが伺えます。伝統的な歌劇団でありながら、現代のインバウンド需要にも柔軟に対応するOSKの姿勢が、この商標に込められています。

3. まとめ

100年を超える歴史を持つOSK日本歌劇団。その道のりは決して平坦ではありませんでした。解散の危機を乗り越え、今なお舞台に立ち続ける姿は、まさに日本のエンターテインメント史における奇跡と言えるでしょう。しかし正直なところ、「女性だけの歌劇団」としての知名度は、宝塚歌劇団には及ばないのが現実です。

そこでOSKは、時代に合わせた新たな挑戦を続けています。ニコニコチャンネルでの動画配信、LINEやインスタグラムを活用した情報発信、公式サイトでの劇団員ブログなど、デジタル時代に対応した取り組みを積極的に行っています。これらは単なる宣伝活動ではなく、「いきなり劇場に行くのはハードルが高い」と感じている潜在的なファンとの新しい接点を作る試みです。

商標登録の歴史を見ても、OSKが時代の変化に柔軟に対応し、新しい価値を生み出し続けていることがわかります。レビューカフェのような親密な公演形態、REVUE JAPANのような国際的な視野を持った企画など、伝統を守りながらも革新を恐れない姿勢こそが、100年を超えてなお輝き続ける秘訣なのかもしれません。

次の100年に向けて、OSKはどのような新しい商標を生み出し、どのような舞台を創造していくのでしょうか。その答えは、これからも続く華麗なる舞台の上で、きっと見つかることでしょう。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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