索 引
1. はじめに
知らずに偽物を販売しても、商標権の侵害で逮捕されることがあります。
海外で有名なブランドを知らなかった場合でも、この問題に直面する可能性があります。
例えば、米国の有名ブランド「PATAGONIA」の商標を使った商品を販売したとして、京都の業者が逮捕されました(奈良新聞の2024年6月20日の報道による)。
2. 商標権侵害は「知らなかった」でも成立する
このケースで、仮に、販売業者がその商品が商標権を侵害しているとは知らなかったとしましょう。
商標権侵害かどうかは、登録商標「PATAGONIA」に似た商標を、指定された商品や役務に使用したかどうかで判断されます。
つまり、商標権の存在や商標の類似性を知らなかったとしても、商標権侵害という状態そのものは成立するのです。
3. 刑事罰には故意がいる。それでも「知らなかった」は通らない
では、知らなければ刑事罰も受けないのかというと、話はそう単純ではありません。
法律の理屈の上では、商標権侵害の罪(商標法78条など)で処罰されるのは故意がある場合、つまり「侵害していると分かっていてやった」場合に限られます。「もしかすると偽物かもしれない」と思いながらあえて販売したような場合(未必の故意)も、ここでいう故意に含まれます。
問題は実務です。商品を仕入れて販売する事業者はプロとして扱われ、仕入れの段階で商品の素性を確かめることが当然に期待されます。仕入れ値が相場より極端に安い、正規の流通経路を通っていない、誰もが知る著名ブランドである。こうした事情がそろえば、「偽物かもしれないと分かっていたはずだ」として未必の故意が認定されることは珍しくありません。
販売のプロが言う「知らなかった」という弁解が捜査機関や裁判所に通る場面は、まず想定できないのです。
4. 刑事罰だけではない。民事責任と税関のリスク
仮に刑事罰を免れたとしても、それで終わりではありません。商標権者からは民事上の責任を追及されます。
まず、販売の差止めは、故意や過失がなくても請求され得ます(商標法36条)。侵害の事実がある以上、その商品を売り続けることはできなくなります。
損害賠償は、故意または過失があれば請求されます(民法709条)。しかも商標権侵害では侵害者の過失が法律上推定されるため(商標法39条が準用する特許法103条)、事業者がこの推定を覆すのは実務上極めて困難です。
このほか、偽物は税関で輸入を差し止められ、在庫の廃棄を迫られるリスクもあります。
5. まとめ:仕入れ前の商標確認が欠かせません
要するに、偽物を販売することは許されません。偽物だと知らなかった場合でも、販売すればトラブルは避けられないのです。商売をする上では、「偽物」と「本物」を見分ける力がいります。
あなたは「偽物」と「本物」を見分ける目を持っていますか?
もし分からないなら、そういった商品を扱う事業には手を出すべきではありません。「偽物」と「本物」を見分けられないのはアマチュアのレベルです。警察も商標権者も「知らなかった」という言い訳を聞いてくれません。
仕入れの前に、扱う商品のブランドが商標登録されていないか、正規品かどうかを確認する。この一手間が、あなたの事業を守ります。不明確な商品には手を出さないように注意しましょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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