コーポレートブランドは企業全体を示し、プロダクトブランドは個別の商品・サービスを示します。両者は役割が違うものの、実際の事業では同じ商品パッケージ、広告、ウェブサイトに並んで表示されることがあります。
ブランド戦略と商標管理を結び付けるには、どの名称を誰の信用の受け皿にするのか、どの商品・サービスへ使うのか、いつまで使うのかを分けて考えます。企業名を登記したことと、商品名を商標登録したことも別の法的手続です。
二つのブランドの違い
コーポレートブランドは企業全体の約束を示す
コーポレートブランドは、会社名、企業ロゴ、グループ共通の表示などを通じて、企業そのものを識別させるブランドです。品質方針、顧客対応、採用、取引先からの評価、投資家向け発信など、個別商品を越えた企業活動の信用が名称に蓄積します。
一つの商品が終売しても企業活動は続くため、コーポレートブランドは長期利用を前提に管理される傾向があります。社名変更、合併、事業譲渡、海外展開では、権利者名義や登録国も含めた確認が要ります。
プロダクトブランドは選ばれる単位を示す
プロダクトブランドは、特定の商品、サービス、シリーズを市場で識別させる名称やロゴです。機能、価格帯、利用場面、顧客層を企業全体のブランドとは別に伝えられます。同じ企業が複数の市場へ商品を出すとき、商品ごとに異なる個性を持たせる設計にも向きます。
商品改廃に合わせて名称を終了することはありますが、終売した瞬間に商標の価値がなくなるとは限りません。後継商品、修理サービス、中古流通、ライセンスで名称を使う可能性があるため、登録の更新や使用証拠を事業計画と合わせて判断します。
組み合わせ方で変わるブランド構造
企業ブランドと商品ブランドの関係は一通りではありません。企業名を前面に出して全商品へ共通の信用を移す方法もあれば、商品名を前面に出し、企業名を控えめに添える方法もあります。商品ブランドごとに独立した世界観を作り、消費者から企業名が見えにくい構成を採る企業もあります。
企業名を強く表示する構成は、新商品にも既存の信用を利用しやすい反面、一商品の問題が企業全体へ波及しやすくなります。商品名を独立させる構成は、対象顧客や価格帯を分けやすい一方、名称ごとの広告費と商標管理費が増えます。
選択の基準は、一般消費者向けか事業者向けかだけではありません。購買時に何を手掛かりとして選ぶのか、販売チャネルで何が表示されるのか、競合品とどの単位で比較されるのかを確認します。契約書や請求書で企業名が中心でも、検索画面や店頭では商品名が購入判断を左右すれば、商品ブランドを保護する意味があります。
商標登録は名称ごとに考える
会社を設立して商号を登記しても、その名称について全国一律の商標権を取得したことにはなりません。企業名を商品やサービスの出所表示として使うなら、使用分野に合わせた商標調査と出願を検討します。詳しくは会社名保護と商標の解説をご覧ください。
一つの出願で企業名と複数の商品名をまとめて別々の商標として登録することはできません。原則として、保護したい商標ごとに出願します。同じ言葉でも、標準文字、ロゴ化した表示、図形との組合せでは登録商標の態様が変わります。
区分はブランドの種類で決まるのではなく、その商標を使う商品・サービスで決まります。企業名だから第35類、商品名だから商品の類、と機械的には決められません。自社が提供する商品、オンラインサービス、小売、広告、教育などを列挙し、事業の実態に対応する指定商品・指定役務を選びます。区分選択は指定商品・指定役務の選び方で詳しく説明しています。
型番を使うときの商標上の注意
型番は、仕様や世代を区別し、在庫・保守・注文を管理する記号として便利です。しかし、「型番だから他人の商標権を侵害しない」「型番なら調査不要」とは限りません。商品上で出所を示す態様で使われ、先行商標と同一または類似なら、型番という社内上の呼び方だけで問題を避けることはできません。
反対に、短いローマ字と数字の単純な組合せは、商標法3条1項5号の簡単でありふれた標章、または業界で一般的な記号・符号と判断され、識別力を理由に登録を受けにくい場合があります。たとえば「A2」「AB2」「2A」などは、特許庁の商標審査基準に例示されています。ただし、文字数や配列だけで結論は決まらず、表示態様、指定商品・指定役務、業界での使用実情を見ます。
商品ブランドと型番を併用するなら、「ブランド名+シリーズ名+型番」のように役割を分ける方法があります。顧客が覚えて検索する名称は商標候補として調査し、型番は仕様識別に使う設計です。短い記号を主力ブランドとして育てたい場合は、採用前に識別力と先行商標の双方を確認します。
新しい商品名を決める実務手順
候補名を絞る前にブランドの役割を決める
名称を考える前に、企業名を中心に売るのか、商品名を独立させるのかを決めます。商品名を将来シリーズへ広げるのか、一商品限りにするのか、海外でも共通利用するのかによって、調査対象と出願国が変わります。
公開前に候補名を調査する
検索エンジンやドメインの空きだけで採用を決めず、特許情報プラットフォームなどで先行商標を調べます。完全一致だけでなく、読み方、外観、意味が似た商標と、商品・サービスの類似関係を確認します。調査の入口は商標登録前の事前調査も参照してください。
使用表示と権利者をそろえる
出願する文字やロゴが、発売時のパッケージや画面表示とずれていないかを確認します。親会社、事業会社、販売会社のどこが権利を持ち、誰が使用するのかも決めます。別会社が使う場合は、ライセンスやグループ内規程を用意し、品質管理と使用証拠の保存方法を共有します。
商品名の決定から発売までの工程に商標調査を組み込むと、広告制作やパッケージ印刷の後で名称変更になる損失を減らせます。商品ネーミングと商標登録も併せて確認してください。
よくある質問
Q1.会社名を登記すればコーポレートブランドも守られますか?
商号登記と商標登録は別制度です。会社名を商品・サービスの表示として使う場合は、その使用分野に対応する商標権を検討します。
Q2.企業名の商標登録があれば商品名の出願は不要ですか?
企業名の登録だけで、異なる商品名が当然に保護されるわけではありません。顧客が商品名を出所表示として認識するなら、その名称について調査と出願を検討します。
Q3.型番には商標権侵害の心配がありませんか?
型番という名称だけで安全とは判断できません。出所を示す使い方か、先行商標と似ているか、商品・サービスが似ているかを個別に確認します。
Q4.短い英数字の型番は商標登録できますか?
単純なローマ字と数字の組合せは、識別力がないとして拒絶される場合があります。ただし、構成、表示態様、業界の実情で判断が変わるため、候補ごとの確認が要ります。
Q5.終売した商品ブランドの登録はすぐ放棄してよいですか?
後継商品、保守、中古流通、ライセンス、再発売の予定を確認してから判断します。登録を維持する場合も、実際の使用状況と不使用取消審判のリスクを定期的に点検します。
コーポレートブランドとプロダクトブランドは、上下関係ではなく信用を蓄積する単位の違いです。名称ごとの役割、使用先、権利者、使用期間を明確にすれば、商標の調査・出願・更新を事業判断と結び付けられます。
ファーイースト国際特許事務所弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247
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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘
