ロゴマークを変更する際に留意すべきポイント

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1.商標の変遷

商標は、商品やサービスを識別するための重要な手段です。消費者は商標を通じて商品やサービスを選びやすくなり、認知度の高い商標を持つ企業は、競合よりも選ばれやすくなります。

商標の認知度を高めるためには、優れた商品やサービスを提供することに加え、効果的なブランド戦略が必要です。例えば、同じ商標を長期間にわたって使い続けることで、消費者の目に触れる機会が増え、自然と認知度が高まります。そのため、商標は頻繁に変更するものではありません。

しかし、ビジネスの変化に伴って商標を変更する必要が生じることもあります。

たとえば、「松下電器産業株式会社」が「パナソニック株式会社」に社名変更し、商標も「ナショナル」から「Panasonic」に統一したのは、ビジネスのグローバル展開が背景にあります。

なお、特許庁に一度登録したロゴマークの商標は後から変更することができません。このためロゴマークを変更した場合、新たなロゴマークが商標権で保護されなくなる可能性があるため、ロゴを更新した場合は、新たなロゴマークを商標登録し直すことが原則です。

ロゴマークの進化とブランドの一貫性

商標は文字だけでなく、図形や文字と図形の組み合わせも商標として登録可能です。図形商標、つまりロゴマークは、時代やビジネス環境の変化に合わせて進化することがあります。例えば、スターバックスのロゴは1971年の創業時から何度も変化を遂げてきました。

スターバックスのロゴに描かれた女性像は、ギリシャ神話のセイレーンをモチーフにしており、最初は写実的なデザインでしたが、徐々にシンプルになり、現在では「STARBUCKS」や「COFFEE」の文字がなくても、ブランドとして認識されるまでに至っています。

スターバックスのロゴマークの変遷

(商標登録第5397021号、第2255194号、第4095958号、第5452171号の商標公報より引用)

スターバックスがコーヒー以外にワインなども提供するように、ビジネスの幅を広げる過程で、ロゴマークも変化させてきたのです。

ロゴマークを変更する際は、消費者の認知度やビジネスの方向性を十分に考慮する必要があります。変更は一度に大胆に行うこともあれば、徐々に進めることもあります。最も重要なのは、ブランドの一貫性を保ちながら、ビジネスの進化に適応させることです。

2.ロゴマークのデザインの変更

ビジネスの変化に応じて、企業は商標、特にロゴマークのデザインを変更することがありますが、著作権への注意が必要です。

まず、事業者自身がロゴマークをデザインした場合や、デザイナーから著作権を譲り受けた場合(著作者人格権の不行使契約を含む)、著作権は事業者に帰属します。この場合、著作権法上、ロゴマークのデザインを変更することに問題はありません。

しかし、デザイン会社にロゴマークのデザインを依頼し、著作権を譲り受けていない場合、デザイン会社の許可なくロゴマークを変更すると、著作権侵害のリスクがあります。特に「翻案権」の侵害が問題となります。

(翻訳権、翻案権等)
第27条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

(著作権法27条)

翻案権とは、既存のデザインに基づいて、形を変えたり修正を加えて新しいデザインを作成する権利です。ロゴマークのデザイン変更が元のデザインに依拠し、本質的な特徴を維持したまま修正されている場合、翻案権を侵害する可能性があるため注意が必要です。

さらに、デザイン会社は著作者人格権、特に「同一性保持権」を有しています。同一性保持権とは、著作物の内容を著作者の意思に反して変更されない権利です。著作権法第20条第2項には一部の例外規定がありますが、ロゴマークに対してデザイン会社の意向に反する変更を加えると、同一性保持権の侵害になる恐れがあります。

(同一性保持権)
第20条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

(著作権法20条1項)

翻案権侵害には創作性が必要ですが、同一性保持権侵害は、創作性の有無にかかわらず、わずかな変更でも成立する可能性があります。そのため、ロゴマークのデザイン変更を行う際には、些細な変更であっても慎重に対応しなければなりません。

3.まとめ

ロゴマークを商標として登録するためには、出願し、商標登録を受けることで商標権を取得できます。商標権は、商品やサービスを保護する権利で、著作権とは異なるものを守ります。しかし、商標権と著作権の間で調整が必要な場合、一般的には著作権が優先される傾向があります。

ロゴマークを商標として使用する際には、商標登録を検討することを強くお勧めします。また、同時にロゴマークが持つ著作権にも配慮することが重要です。デザインに関わる権利の処理を怠ると、将来的なトラブルにつながる可能性があるため、注意が必要です。

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247

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