(1)商標「そだねー」の出願内容は?
「そだねー」の商標は菓子メーカーから出願されています
商標「そだねー」の出願内容は次の通りです。
- 出願日 :平成30年3月1日
- 出願公開:平成30年3月20日
- 出願番号:商願2018−24549
- 出願商標:「そだねー」
- 権利範囲:第30類「菓子及びパン」
- 申請者 :六花亭製菓株式会社(北海道帯広市)
- 審査状況:現在、審査待ち
特許庁で公開された商標公開公報より引用
特許庁により公開された情報によると、六花亭製菓は、お菓子やパンの権利について、商標「そだねー」の商標権取得申請を今年の3月1日に行ったことが分かります。この内容は3月20日に特許庁により公開されました。
(2)許可なく「そだねー」を出願してもよいの?
「そだねー」の言葉はそもそもみんなのもの
女子カーリング日本代表が競技中に使っていた「そだねー」との言葉は、「そうだよね」についての地方色のある表現であり、誰もが自由に制限なく使える言葉です。
いわば、みんなが使うことのできる公有のもの、ということができます。「そだねー」という言葉を使う人がいたとしても、勝手に使うな、といえる立場の人はいないのです。
ただ、特定の誰かが特許庁に「そだねー」との言葉を商標登録出願して審査に合格すると、登録されて商標権が発生します。商標権が生じた後は、その商標権と衝突する範囲では「そだねー」の商標を使うことができなくなります。
商標「そだねー」を無断で商標登録出願してもよいのか
「そだねー」の言葉自体は誰のものでもなく、みんなが自由に使える言葉ですから、誰かが商標「そだねー」を特許庁に出願してもよいかどうかについては、誰もがそうしてもよいとか、そうしてはいけないとかいえる権利を持っているわけではありません。
このため商標法は、商標「そだねー」について商標登録出願をすること自体までは禁止してはいません。
ただし、商標法上は、他人が有名にした商標を有名になっている範囲で登録することは認めません、との規定があるので(商標法第4条第10号など)、ただ乗りし放題というわけではありません。
他人が有名にした商標を出願しても特許庁の審査を突破できず、審査不合格になる場合が多いです。
ただ、女子カーリング日本代表は「お菓子やパン」の商品についてまでも「そだねー」との商標を有名にしたわけではありません。女子カーリング日本代表が「お菓子やパン」について商標「そだねー」を使ってきた実績がない場合には、「お菓子やパン」の権利範囲に限定して、特許庁で審査に合格できる可能性は残ります。
特許庁で審査合格になった場合は、その結果に納得できない場合には、誰でも、今回の商標登録出願について審査合格後の商標公報が発行されてから2ヶ月位内に、特許庁に異議申立をすることができます。
この2ヶ月間の異議申立期間を過ぎてしまうと、商標法の規定により、関係者以外は特許庁に文句をいうことができなくなります。
(3)商標権が発生したら「そだねー」が使えなくなるの?
カーリング競技中に「そだねー」の掛け声が使えなくなるか?
仮に、六花亭製菓の商標「そだねー」が特許庁の審査に合格して商標権が発生したとしても、カーリング競技中に「そだねー」と、声を掛け合う行為には商標権は働きません。
今回の商標権は、文字表記についての権利です。このため、カーリング競技はもちろんのこと、あらゆる場面で声にだして「そだねー」と言い合うシーンは商標権侵害とは関係がないです。
「そだねー」の文字表記は使えなくなるのか?
商標権が発生しても、その表記の使用が全面使用禁止になるわけではありません。商標登録出願の際に、権利申請する商標をどの範囲で使用するかを特許庁に併せて申請しなければなりません。
今回、六花亭製菓が申請した商標「そだねー」の権利内容は、「菓子及びパン」に限定されています。このため、「菓子及びパン」と関係がないカーリング競技などに商標「そだねー」を使っても、商標権の侵害問題はそもそも初めから生じません。
商標権の効力は商売上、使用した場合にのみ働く
商標法にいう商標は、事業に使うものとのしばりがあります。このため商売と全く関係なく「そだねー」との商標を使う行為は商標権の侵害にはなりません。
以上の説明をまとめると、カーリング競技の際に「そだねー」との言葉を使う行為は、今回の商標について商標権が発生したとしても商標権侵害とは全く関係がないです。
仮に商標権が発生した場合でも、「パンやお菓子」との商標を商売で使う場合に限って、商標権侵害が問われる場合がある、ということです。
(4)まとめ
六花亭製菓としては、他の会社が出願すると商標権により「そだねー」の商標を使うことができなくなるから、「そだねー」の商標について先手を打って出願したのでしょう。
私の正直な感想をいうと、やはり他人が流行らせた言葉に都合良く乗ろうとするのはどうかな、と感じます。商標権を独占するつもりはないとのことですが、もし事前に女子カーリング日本代表に話を通しているならそのことを説明するとか、やるべきことはあったのではないですか?
やはり正々堂々と進める道を歩んで欲しいと思います。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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