「そだねー」の商標登録出願、その結末は?

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2018年、平昌オリンピックで日本中を沸かせた女子カーリング日本代表。その競技中に使われた「そだねー」という言葉は、同年の流行語大賞にも輝き、大きな注目を集めました。

そんな「そだねー」を巡って、特許庁に複数の商標出願が殺到したのをご存知ですか?

(1)「そだねー」の商標登録出願、その結末は?

結論から言うと、「そだねー」の商標登録は全て拒絶査定、もしくは自主的に取り下げとなり、商標権を獲得した出願者は一人もいません。流行語を独占して一発儲けようとしたたくらみは、全て消えてしまっています。

出願一覧と結果

武士の情けで権利申請者の名前は伏せますが、当時の出願状況は以下の通りです。

出願番号 出願日 商標 結果
商願2018-028792 2018/02/26 そだねー 拒絶査定
商願2018-028792 2018/02/27 そだねー 拒絶査定
商願2018-029960 2018/02/27 そだねー 拒絶査定
商願2018-024077 2018/02/28 SODANE 取下
商願2018-024549 2018/03/01 そだねー 拒絶査定
商願2018-032968 2018/03/07 そだねー 拒絶査定
商願2018-040928 2018/03/16 そだねー 拒絶査定
商願2018-065171 2018/04/30 そだねー 拒絶査定
商願2018-064527 2018/05/01 SODAね~ 拒絶査定

なぜ登録されなかったのか?

商標登録では、言葉やフレーズが「識別力」を持つ必要があります。しかし、「そだねー」はあくまで日常的な会話表現に過ぎず、特定の企業や個人の商標として独占することは難しいと判断されたのです。

商標出願の教訓

流行語や話題のフレーズを商標登録しようとする動きは時々見られますが、一般的に使われる言葉や他人の印象に強く残る表現は、簡単には商標として認められません。

(2)許可なく「そだねー」を出願してもよいの?

「そだねー」という言葉は、女子カーリング日本代表が競技中に使っていたことで話題になりました。この言葉は「そうだよね」を北海道弁風に表現したもので、誰もが自由に使える日常的な言葉です。

では、この「そだねー」を勝手に商標登録出願しても問題ないのでしょうか?

1. 「そだねー」はみんなのもの

「そだねー」のような言葉は、特定の個人や企業のものではなく、公有の言葉と考えられます。つまり、誰でも自由に使える表現であり、「勝手に使うな!」と言える人はいません。

2. 商標出願は可能だが、登録は難しい

商標法では、言葉そのものの出願を禁止しているわけではありません。そのため、誰でも「そだねー」を特許庁に商標登録出願すること自体は可能です。

ただし、以下のポイントが重要です。

  • 自由に使われる言葉を一個人や企業に独占させることは、商標法上認められていません
  • 誰もが使う言葉を特定の人が独占すると、混乱が生じるからです

3. もし「そだねー」が登録されたら?

仮に特許庁で「そだねー」のような誰もが使える言葉が審査に合格し商標登録された場合、その結果に納得できない人は次の手続きを取ることができます。

  • 1. 商標公報(登録内容が公開される書類)の発行後、2ヶ月以内に特許庁に異議申立てが可能です
  • 2. 異議申立期間を過ぎてしまうと、商標登録の取り消しを求めることは、権利関係者以外は難しくなります

商標出願の注意点

「そだねー」のように、日常的に使われている言葉を独占しようとする場合、審査をクリアすることは非常に難しいでしょう。

商標法は「みんなの言葉」を守るための仕組みを備えています。

まとめると、「そだねー」を出願すること自体は自由ですが、登録される可能性は低く、たとえ登録されても異議申立制度によりその登録が覆る場合もある、ということです。

商標出願を考える際は、独自性と識別力のある言葉かどうかをよく確認することが大切です。

(3)商標権が発生したら「そだねー」が使えなくなるの?

仮に、「そだねー」の商標が登録された場合、日常的な会話や競技中の掛け声も制限されてしまうのでしょうか?

結論から言うと、使えなくなることはありません。その理由を解説します。

1. カーリング競技中の「そだねー」は問題なし

仮に「そだねー」が商標登録されたとしても、声に出して使う行為には商標権は適用されません。

商標権はあくまで「文字表記」に関する権利であり、競技中に「そだねー」と掛け声を掛け合う行為は商標権の侵害にならないのです。

2. 商標権がカバーする範囲は限定される

商標登録では、出願時に「どの範囲で商標を使うか」を特許庁に申請します。例えば、権利申請者が「そだねー」を出願した場合、対象が「菓子およびパン」であったなら、この範囲に権利は限定されています。

このため、以下のような場合には商標権の問題は一切生じません。

  • カーリング競技や日常会話で「そだねー」を使う場合
  • 権利化の際に指定された、例えば、菓子・パン等とは無関係の分野で「そだねー」を表記する場合

3. 商標権が働くのは「商売上の使用」に限られる

商標法では、商標権が効力を持つのは「事業で使う場合」に限られます。

つまり、個人が日常生活で「そだねー」と言ったり、仮にパンやお菓子に権利が発生した場合でも、発生したパンやお菓子と無関係な場面で表記したりしても、商標権の侵害にはなりません。

ここがポイント

  • 声に出して「そだねー」と言う行為は、商標権とは無関係
  • 商標権の範囲は、特許庁に登録した「指定商品・サービス」に限定される
  • 商標権はあくまで商売上の使用に適用されるもので、日常的な使用は問題なし

つまり、仮に「そだねー」が登録されたとしても、カーリング競技や日常生活で「そだねー」を使うことに何ら問題はありません。

問題になるのは、権利範囲に指定されている、例えば「菓子やパン」といった特定の分野で商売上使った場合だけです。

(4)まとめ

当時の関係者が「そだねー」の商標を出願した理由は、他社に先を越されて商標権を取られてしまうことで、自社がその言葉を使えなくなる事態を避けたかったからでしょう。いわば、防衛的な出願と考えられます。

正直な感想

とはいえ、私の率直な感想としては、他人が流行らせた言葉を商標出願することには違和感を感じます。

「そだねー」は、女子カーリング日本代表の活躍によって生まれた、誰もが親しみを持つ言葉です。関係者が「商標を独占する意図はない」と言っているのであれば、事前に女子カーリング日本代表に説明をする、あるいは関係性を示すアクションがあっても良かったのではないでしょうか。

正々堂々とした進め方が大切

流行語や共通の言葉を商標出願する場合、透明性や誠実さが欠かせません。

商標出願自体は法的に問題がなくても、使い方や背景によっては多くの人の共感や支持を失うこともあります。

誰もが心から納得できる形で進めてこそ、商標が持つ本当の価値が生まれるのではないでしょうか。

今後も、正々堂々とした道を歩んでいってほしいと願います。

流行語大賞も時間が過ぎてしまえば

時間が過ぎてしまえば、誰も流行語は忘れてしまいます。それどころか、時間が経つと古臭くさえ感じるものです。流行語の独占に走るのは費用と時間の無駄になる、というのが私の率直なアドバイスです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘 03-6667-0247

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