国外からの商標権侵害物品を水際で止められますか?

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1.税関での輸入差止め制度について

商標権を侵害する物品には、国内で製造されるものもあれば、国外で製造されたものもあります。特に国外で製造された商標権侵害物品が国内に輸入され、販売されることは大きな問題です。こうした物品が国内に流通する前に、税関で検査・差止めを行うことが商標権保護の鍵となります。

税関では、輸入しようとする物品について申告が義務付けられています。その際、通関手続きにおいて商標権を侵害する物品が発見された場合、これを差止めることが可能です。これにより、商標権侵害物品が国内に流通するのを水際で防ぎ、商標権を守ることができます。

関税法では、特許権や商標権を侵害する物品を「輸入禁止貨物」と定義しており、これらの物品は税関で没収・廃棄などの措置が取られます。

財務省の発表によると、令和5年には全国の税関で商標権侵害を含む偽ブランド品など知的財産侵害物品の差止め件数が前年より17.5%増加し、31,666件に達しました。また、差止められた物品の総数は1,056,245点で、こちらも前年から19.7%増加しました(日本関税協会調べ)。

このデータからも、国外からの商標権侵害物品を税関で確実に差止める取り組みが進んでいることが分かります。

2.輸入差止手続の流れ

(1)輸入差止申立ての提出と受理

輸入差止めを行うためには、まず税関に「輸入差止申立て」を行い、申立てが受理される必要があります。この申立てが受理されるかどうかが手続きの成否を左右します。

輸入差止申立てでは、申立書をはじめ必要な書類を提出します。税関では多くの物品を取り扱っているため、侵害物品を識別するポイントを記載した書類が重要です。

申立ての精度を高めるため、税関では事前に相談を受け付けています。税関窓口との調整を行い、適切な形で申立てを進めることが望ましいです。

税関が申立てを受理すると、輸入者等の利害関係者に通知が送られ、意見を提出する機会が提供されます。必要に応じて専門委員の意見も参考にし、最終的に輸入差止申立てが受理されるかどうかが決定されます。

申立てが受理されると、有効期間中に対象となる疑義物品が発見されれば、税関手続が停止されます。

(2)認定手続

輸入差止申立てが有効期間中に侵害疑義物品を発見した場合、税関は認定手続を開始します。権利者と輸入者は、この手続開始通知を受け取り、意見書や証拠を提出することになります。これらは原則として10執務日以内に提出が必要で、迅速な対応が求められます。

税関は必要に応じて専門委員に意見を求め、最終的に侵害の有無を判断します。商標権侵害の場合は簡素化手続が適用され、輸入者が争う意思を示さなければ権利者の意見書提出は不要となります。税関は申立て時の資料をもとに侵害の有無を判断し、権利者の負担を軽減する措置が取られています。

(3)税関の処分

最終的な認定結果は権利者と輸入者に通知されます。税関が「侵害に該当しない」と認定した場合、物品の輸入が許可されます。一方、侵害と認定された場合、輸入者は自発的に廃棄等の処理を行うか、不服申立期間が過ぎると税関によって没収・廃棄の措置が取られます。

このように、輸入差止手続は権利者の商標権を守るための重要な役割を果たしています。

3.費用について

輸入差止手続を当所にご依頼いただく場合、申立手続および認定手続のそれぞれに費用が発生します。この手続においては、申立てが受理されるか否かが成功の鍵となるため、法律相談で侵害疑義物品の状況を詳しくお伺いし、受理の見込みが立ちそうであれば、個別のお見積書を提示させていただきます。

なお、輸入差止手続自体には国への手数料はありませんが、手続の過程によっては、輸入者に生じる可能性のある損害を補償するための「担保供託」が求められることがあります。この供託が必要になった場合、当所は供託手続の代理ができないため、依頼者ご自身での手続が必要となります。

以上、費用や手続きについてご不明点がございましたら、お気軽にご相談ください。

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
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