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商標権の侵害訴訟に要する費用について教えてください

1. 訴訟費用は一つの金額ではない

商標権侵害訴訟に必要な費用は、請求額だけでは決まりません。差止めを求めるか、損害賠償も求めるか、争点や証拠がどれほどあるか、仮処分、控訴、強制執行まで必要かによって変わります。

資金計画を立てるときは、裁判所に納める費用、代理人の報酬、調査や証拠収集の実費を分けます。訴え提起前、第一審、控訴審、判決後という段階ごとに、どこまで依頼するかも確認します。

  • 侵害判断に必要な商標・商品・使用態様の調査
  • 警告書、回答書、交渉、証拠保全にかかる費用
  • 訴状の手数料、郵便料など裁判所に納める費用
  • 弁護士報酬、出廷、書面作成などの費用
  • 鑑定、翻訳、公証、購入調査、専門家意見などの実費
  • 仮処分、控訴、上告、強制執行を行う場合の追加費用

2. 裁判所に納める費用

訴えを提起するときは、申立手数料と郵便料などを裁判所に納めます。申立手数料は、訴訟の目的の価額(訴額)を基に算定します。損害賠償だけを請求する場合は請求額が基礎になりますが、商標権に基づく差止請求では別の方法で訴額を計算します。

東京地方裁判所知的財産権部の算定基準では、商標権の差止請求について、売上減少額、相手方の売上推定額、使用料相当額などを用いる複数の算定方法が示されています。差止めと損害賠償を同時に求める場合は、原則として差止請求の訴額と請求損害額を合算します。

手数料は最新の早見表で確認する

裁判所の手数料案内は、2026年5月21日に施行された改正民事訴訟法が適用される事件かどうかにより、使用する早見表が異なると案内しています。過去の記事や見積例の印紙額を流用せず、提訴時点の裁判所資料と提出方法を確認してください。控訴や上告、仮処分には別の申立手数料・予納費用が発生します。

3. 弁護士費用と調査・証拠の費用

弁護士報酬は法律で全国一律に定められているものではなく、委任契約と各事務所の料金体系によります。着手金と報酬金、時間単価によるタイムチャージ、手続や作業ごとの料金を組み合わせる方法などがあります。

商標事件では、請求額が同じでも作業量が同じとは限りません。商標と商品・役務の類否、商標としての使用、先使用、商標権の有効性、損害額など、争点が増えるほど調査と書面作成に時間がかかります。相手方の販売資料が得にくい事件では、証拠収集や文書提出をめぐる手続も見込んでおきます。

当事務所では、訴え提起、期日対応、準備書面の作成など、実際に行う手続を区切って費用を算定し、事件の内容を確認した上で個別にお見積りします。争点の追加や控訴審への移行がある場合は、対象業務と追加費用をその都度確認します。

4. 勝訴しても全額回収できるとは限らない

民事訴訟法上の訴訟費用は、判決では敗訴者が負担するのが原則です。ここでいう訴訟費用には、申立手数料、郵便料、証人の旅費・日当などが含まれます。ただし、勝訴しただけで支出額が自動的に振り込まれるわけではなく、負担額を確定する手続が必要になる場合があります。一部勝訴や和解では、負担の定めも変わります。

依頼した弁護士へ支払う報酬は、通常、この訴訟費用には含まれません。不法行為に基づく損害賠償では、事案に応じて相当な範囲の弁護士費用が損害として認められることがありますが、一律に請求額の10%が認められる制度ではなく、実際に支払った報酬の全額回収を保証するものでもありません。

相手方に資産がなければ、判決で金銭請求が認められても回収できないことがあります。訴訟を始める前に、停止させたい行為、回収可能性、和解条件、広報や取引への影響を検討し、費用をかける目的を明確にします。

5. 見積りで確認する項目

見積書では総額だけでなく、含まれる作業と追加費用が発生する条件を確認します。初回相談時に資料をそろえると、争点と作業量を把握しやすくなります。

  • 相談、警告、交渉、仮処分、本案訴訟のどこから依頼するか
  • 第一審の着手、期日、書面作成、成功報酬の算定方法
  • 商標調査、証拠購入、鑑定、翻訳、出張などの実費
  • 期日や書面の想定数を超えた場合の追加料金
  • 控訴、上告、強制執行、和解契約の費用が別か
  • 途中終了、請求縮小、依頼終了時の精算方法

訴訟の一般的な流れは、商標権侵害訴訟の進め方でもご案内しています。具体的な見積りをご希望の場合は、登録番号、相手方の使用資料、希望する解決を添えてお問い合わせください

6. よくある質問

Q1.勝訴すれば弁護士費用を相手に請求できますか?

弁護士報酬は通常の訴訟費用に含まれません。損害賠償の一部として相当額が認められる場合はありますが、委任契約上の報酬全額を回収できるとは限りません。

Q2.印紙代はいくらですか?

請求内容と訴額によって変わります。差止めと損害賠償を併合する商標事件では訴額計算が必要なため、提訴時点の裁判所の算定基準と手数料早見表を確認します。

Q3.警告や交渉だけ依頼できますか?

依頼範囲は事務所との契約によります。証拠保全と侵害判断を行い、警告・交渉から始める方法もあります。仮処分を急ぐ事情がある場合は最初に伝えてください。

Q4.控訴すると費用は増えますか?

控訴の申立手数料や代理人費用などが別に発生します。第一審の契約が控訴審まで含むか、追加見積りになるかを委任時に確認します。

Q5.費用を抑えるために先にできることはありますか?

登録原簿、相手方の表示、販売ページ、購入品、取引記録、自社の使用実績を整理し、求める解決を決めておくと、初期調査の重複を減らせます。証拠を保存する前に相手へ連絡することは避けてください。

まとめ

商標権侵害訴訟の費用は、裁判所費用、弁護士報酬、調査・証拠の実費に分けて見積もります。勝訴時に相手へ負担させられる範囲と、自社負担として残る範囲は同じではありません。請求内容、必要な手続、回収可能性を確認し、段階ごとの費用と追加条件を見比べてください。

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247

参考資料

  • 裁判所「訴訟費用について」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_01_03/
  • 裁判所「手数料」 https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/tesuuryou/index.html
  • 東京地方裁判所「訴額の算定基準」 https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section29_40_46_47/sogakusanteikijyunn/index.html
  • e-Gov法令検索「民事訴訟法」(61条、71条) https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109

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