索引
- 初めに
- (1)登録したロゴデザインの変更を特許庁は認めていない
- (2)ロゴに変更があった場合は実務上はどうするのか?
- (3)ロゴデザインが変更になったのに放置していると登録が取り消される場合がある
- (4)まとめ
初めに
過去に特許庁で商標登録したロゴのデザインが変更になった場合、どのように対応すれば良いのかについて説明します。変更に伴う特許庁への更新申請の必要性、何もしなかった場合の影響など、皆さんの疑問に分かりやすく答えます。
(1)登録したロゴデザインの変更を特許庁は認めていない
商標登録後の変更について
特許庁に商標登録したロゴ商標のデザインが変更された場合、その変更を特許庁で更新することはできません。商標法では商標権の更新制度が設けられていますが、この制度は既に登録したロゴ商標をそのまま継続し、権利の存続期間を更新するための手続きです。
変更可能な項目
商標登録後に変更できるのは以下の項目です。
1. 指定役務・指定商品の放棄
登録後、指定商品や指定役務の一部を放棄することができます。ただし、これらを変更したり追加することはできません。
2. 住所変更
出願中および登録後に住所を変更することができます。
3. 名義変更
出願中に氏名や名義人を変更することが可能です。また、登録後も権利移転により商標権者を別の会社などに移すことができます。
注意点
審査中の変更
権利の申請内容については、審査中に審査官の指導に従って変更が許される場合がありますが、最初に願書に記載していない事項を追加することはできません。
ここがポイント
商標ロゴのデザインが変更になった場合、特許庁ではその変更を認めていないため、新しいデザインでの商標登録を再度行う必要があります。
住所や名義の変更は可能ですが、指定商品や役務の変更は認められていません。商標登録に関する手続きについては、専門家に相談することをお勧めします。
(2)ロゴに変更があった場合は実務上はどうするのか?
新たに商標登録をするのが最善の方法
既に商標権を保有している場合でも、登録された商標にデザイン変更などの改変があった場合は、その改変後のロゴデザインで新たに商標登録をすることが原則です。
登録商標の重要性
登録商標とは、特許庁に登録されている商標そのものを指します。登録商標と一部でも異なる商標は、登録商標と同一の商標ではなく、類似の商標と見なされます。企業ブランドの中心となる登録商標は非常に重要であり、この中心が揺らぐことは避けるのがよいです。
デザインの厳格な管理
大切なロゴデザインは細かく規定され、色や形、フォントも指定されて管理されています。担当者が独断で変更することは避けるべきです。これは、まがい品が出回ったときに正統品とまがい品を区別するためです。
顧客の混乱を防ぐ
似たような商標が複数存在すると、お客様がどれが本物でどれが偽物か分からなくなる可能性があります。これにより、購入を控える事態が発生するかもしれません。
営業活動の管理
営業担当者がパッケージデザインに合わせて勝手に登録商標のロゴデザインを変更してしまうことがないように、営業活動をしっかり管理することが重要です。時代の経過とともに自社表示の中心点が失われることを防ぐためにも、どれが登録商標であったかを常に明確にしておく必要があります。
ここがポイント
商標ロゴに変更があった場合は、新たに商標登録を行うことが最善の方法です。登録商標の重要性を理解し、厳格に管理することで、ブランドの一貫性を保ち、顧客の信頼を守ることができます。
(3)ロゴデザインが変更になったのに放置していると登録が取り消される場合がある
登録商標の不使用取消審判に要注意
商標法には、使用されていない登録商標を取り消す制度があります。
これは「不使用取消審判」と呼ばれ、商標法第50条に規定されています。商標権を取得しても、その商標を指定商品・指定役務に対して3年間使用していない場合、第三者からの請求で商標登録が取り消されることがあります。
商標の使用義務
商標法は、登録商標を使い続けることを義務づけています。一定期間使用していない場合、商標登録は取り消される可能性があります。これは、使われていない商標が増え続けると、新しい商標の自由度が失われるためです。商標権は、実際に使用されることで価値が生まれますが、使われていない商標は価値が減少し、3年も経てば無価値と見なされるのです。
第三者からの請求で取り消される
登録商標が使用されていないだけでは、商標登録は自動的に取り消されません。第三者が特許庁に対して取消を求める審判を請求する必要があります。この第三者は競業者でなくても構いません。請求後に使用を開始しても遅く、以前から使用していた証拠を提出する必要があります。
類似商標の使用でも取り消される
商標権の効力は登録商標と類似する商標にも及びますが、不使用取消審判の回避には、登録商標と社会通念上同一の範囲で使用されている必要があります。新たな要素を追加したり、デザインを変更したりしたロゴは同一とは見なされない場合があります。
登録商標の使用を中止しない
ロゴデザインを変更しても、登録商標の使用を中止せず、変更後のデザインと併用することが重要です。古い登録商標の使用を中止すると、取消審判により商標権が消滅するリスクがあります。新しいデザインも商標権の範囲内で使用する必要があります。
ここがポイント
商標ロゴのデザインが変更された場合、不使用取消審判に注意し、登録商標の使用を続けることが重要です。新しいデザインでの商標登録も検討し、常に商標権の範囲内で商標を使用するようにしましょう。
(4)まとめ
商標のデザインが変更された場合、その新しいデザインが既存の登録商標と似ているかどうかについては、当事者間で意見が分かれることがよくあります。商標権者は広い範囲で商標権が認められると考えがちですが、侵害を主張される側はその範囲を狭く見がちです。
新たな商標登録の重要性
ロゴ商標のデザインが変更された場合、その都度新しいデザインで商標登録を行い、商標権を取得しておくことが最も安全な方法です。新しい商標権をすぐに取得できない場合は、少なくとも古いロゴデザインの登録商標の使用を続け、新しいロゴデザインの商標も並行して使う必要があります。
頻繁なロゴデザインの変更への対応
ロゴデザインが頻繁に変更される場合、最終的なデザインが確定した時点で登録を行うのも一つの方法です。ロゴデザインの決定に時間がかかる場合は、まず文字商標を取得しておき、他人に商標権を先取りされるリスクを避けつつ、その後にロゴデザインを考案することも検討できます。
商標権の計画的整備
ロゴ商標のデザイン変更に伴って商標権を失うことがないよう、事前にどのように権利を整備していくか計画を立てておくことが重要です。計画的な権利の整備により、商標権を確実に保護し続けることができます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247