1.「医薬部外品」とは?
「医薬部外品」とは、正式には「薬機法」(正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)に基づいて定められている商品の一つの分類です。この「薬機法」は、2014年11月25日に名称が変更され、それ以前は「薬事法」として知られていました。
医薬部外品は、医薬品ほど強い効果や作用がないものの、特定の用途や目的に使用される製品です。具体的には、吐き気や口臭を防ぐものや、あせも、ただれの予防、さらには脱毛防止や育毛のための製品が該当します。また、ネズミやハエなどの害虫を駆除するための製品も医薬部外品に分類されます。
医薬部外品は、薬効成分を含みながらも、医薬品よりも緩やかな効果を持つため、日常的に使用される化粧品や衛生用品と同じ感覚で使えるものが多いのが特徴です。この分類によって、消費者が安心して使用できる製品が法的に守られています。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
医薬品や医療機器に関する法律は少し難しく感じるかもしれませんが、簡単に説明します。
まず、「医薬品」とは、主に3つのカテゴリに分かれています。
- 1. 日本薬局方に収められているもの。
- 2. 人や動物の病気を診断、治療、予防するために使うもので、機械や器具ではないもの(ただし、医薬部外品や再生医療製品は除きます)。
- 3. 人や動物の体の構造や機能に影響を与えることを目的にしたもので、こちらも機械や器具ではないもの(医薬部外品や化粧品、再生医療製品は除きます)。
次に「医薬部外品」は、医薬品ほど強くはないけれど、特定の目的で使うものです。例えば、吐き気や口臭を防ぐもの、あせもやただれを防ぐもの、または脱毛や育毛を目的にするものです。また、害虫(ネズミやハエなど)を防ぐためのものも含まれます。
最後に「化粧品」とは、人の体をきれいにしたり、見た目を良くしたりするために使うもので、体に対して影響が少ないものです。洗顔料や保湿クリームがその例です。
これらの分類は、製品の用途や体に与える影響の強さによって区別されています。このような法律は、私たちが日常的に使う製品の品質や安全性を守るために大切な役割を果たしています。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
2 この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
3 この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
2.商標法上はどう扱われるの?
「薬機法」と「商標法」は異なる目的で運用されている法律であり、それぞれの法制度における商品の分類や扱いは異なります。
「薬機法」は医薬品や医薬部外品などの品質や安全性を管理する法律ですが、商標法は商品やサービスを識別するための名称やロゴを保護する法律です。
そのため、「薬機法」での分類がそのまま商標法で使用されるとは限りません。
例えば、商標法上では「薬剤」は第5類、「化粧品」は第3類に分類されていますが、「医薬部外品」というカテゴリーは商標法における法定分類には含まれていません。
これは、商標法が国際的な「ニース分類」というシステムに基づいて商品やサービスを分類しているためです。この国際的な分類システムは、「医薬部外品」のような日本独自の法的カテゴリーを考慮していません。
では、「薬機法」で「医薬部外品」に該当する商品に対して、商標を登録する際にはどうすれば良いのでしょうか?
商標登録の方法:
1. 製品の機能や用途を考慮する:
まず、商標を登録する商品の具体的な機能や用途を考えることが重要です。例えば、医薬部外品が「スキンケア商品」であれば、商標登録の際には「化粧品」として第3類に分類される可能性があります。一方で、医薬部外品が「衛生用品」であれば、第5類に分類されることも考えられます。
2. 商標の類似性を確認する:
商標法では、同じ類における類似商標の存在が商標登録の可否に影響を与えるため、他の商標との類似性をしっかりと確認する必要があります。「医薬部外品」だから特別な扱いを受けるわけではなく、商品が属する分類において、既存の商標と区別できるかが重要です。
3. 専門家に相談する:
「医薬部外品」に該当する商品がどの類に分類されるかは、ケースバイケースで異なる場合があるため、商標専門の弁理士や専門家に相談することが推奨されます。彼らは適切な類の選定や商標の登録可能性についてのアドバイスを提供してくれます。
まとめると、商標法上で「医薬部外品」に該当する商品の商標を登録する際には、商品が実際にどのような機能や用途を持っているかを基に、商標の分類を決定することが求められます。
また、適切な類選定のために専門家のサポートを受けることが、スムーズな商標登録の鍵となるでしょう。
3.具体例
具体例を挙げながら、「医薬部外品」と「商標法における指定商品」の違いを見ていきましょう。これらの事例は、薬機法での分類がそのまま商標法で適用されないことを明確に示しています。
(1)薬用せっけん
かつて、薬用せっけんは商標法上第3類に分類されていました。これは、主に化粧品的な用途として扱われていたためです。
しかし、2017年に国際分類が改訂され、医薬品的な効能を持つ「せっけん」は第5類(医療用せっけん)に分類されるようになりました。それ以降、「薬用せっけん」という表記は認められなくなり、第3類と第5類で用途に応じて分類が分かれています。
(2)薬用化粧品
薬用化粧水や薬用クリームも2016年までは商標法上第3類に含まれていましたが、薬用せっけんと同様に、「薬用化粧品」という表記は現在はNGとなっています。
これは、化粧品としての機能と医薬品的な効能を区別するための措置です。実際に、「薬用」の表示ができるかどうかは、商品が医薬品的な効果を持つかどうかに左右されます。
(3)ビタミン剤
「薬機法」では、ビタミン剤は医薬部外品に該当しますが、商標法上は第5類の「薬剤」に分類されます。
ビタミン剤は「薬機法」でも安全性が高く、元々は医薬品として扱われていましたが、現在はより緩やかな「指定医薬部外品」として管理されています。つまり、商標登録する際は医薬品に近い取り扱いが求められるという点が特徴です。
(4)殺虫剤
殺虫剤は「薬機法」では意外にも医薬部外品に分類されます。これに驚く人も多いでしょう。
しかし、商標法上では殺虫剤は第5類に分類され、薬剤としてのイメージに沿った取り扱いを受けます。このように、法律間での扱いの違いは、消費者にとっても混乱を招くことがありますが、商標登録の際にはその区別をしっかり理解しておくことが大切です。
ここがポイント
「薬機法」と「商標法」はそれぞれ異なる視点で製品を分類していますが、具体的な事例により、その違いがわかります。
4.まとめ
異なる法律が適用されると、製品や役務のグループ分けも変わります。これは、それぞれの法律が異なる目的を持っているため、当然のことかもしれません。例えば、「薬機法」では医薬品や医薬部外品の安全性や品質を管理することが目的ですが、「商標法」は商品やサービスの名称やロゴを保護することが目的です。
特に医薬部外品のように、商標の世界ではいくつかの分類にまたがる商品・役務については、どの分類で商標権を取るべきかを慎重に検討することが重要です。商標権が取得できないと、他社に商標を先に使われてしまうリスクがあります。ですので、できるだけ広めに商品や役務を指定しておくことが、安全策としておすすめです。
商標の取得に関してご不明な点があれば、弁理士・弁護士に相談することを強くお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、より確実に商標権を取得でき、ビジネスの保護を強化することができます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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