索引
1.花園万頭とは?
「東京」 (株)花園万頭(資本金4000万円、新宿区新宿5-16-15、代表石川一弥氏)は、5月31日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日保全管理命令を受けた。
(略)
当社は、1834年(天保5年)創業、1953年(昭和28年)1月に法人改組された老舗の和菓子メーカー。天保5年に金沢で「石川屋本舗」の屋号で創業、その後、新宿花園神社前に店を移したのを機に店舗名を「花園万頭本舗」に変更していた。高い知名度を誇る看板商品の「ぬれ甘なつと」のほか、「花園万頭」「花園羊羹」「玉うさぎ」「みその菊最中」などの商品を扱っていた。ピークとなる89年6月期の年売上高は約36億円を計上、現在も、東京や神奈川を中心に46店舗展開していた。しかし、バブル期に負った過大な有利子負債を抱えたうえ、その後も東日本大震災による急激な販売不振、主力店舗の撤退を余儀なくされていた。この間、新規出店で一定の売上高維持を図るとともに、さまざまなコストダウンを行い収益改善に努めていたが、ここ数年は取引先への支払いに支障を来すなど信用不安が表面化、警戒感が高まっていた。
負債は2018年4月末時点で債権者約370名に対し約22億円。
(帝国データバンク 2018/06/01(金)倒産速報記事より引用)
(1)花園万頭の歴史
花園万頭は、新宿の花園神社のすぐそばに本店を構える、伝統ある老舗和菓子店です。同社の公式サイトによれば、創業は天保5年(1834年)にさかのぼり、金沢でその歴史をスタートさせました。その後、3代目の石川弥一郎氏が東京へと進出し、青山、赤坂を経て、最終的に新宿に本店を構えました。
(2)花園万頭の商品と商標
看板商品である「花園万頭」は、店名と同じ名を持ち、「日本一高い、日本一うまい」というキャッチコピーで広く知られています。実際にどれほどの値段か調べたところ、10個入りが4,104円(税込)で、1個あたり約400円とかなりの高級品です。
この「花園万頭」は、賞味期限がわずか3日しかないため、ネット販売は行っておらず、限定的な販売形態を維持しています。また、和菓子として定番の「ぬれ甘なつと」も人気商品です。
さらに、洋菓子のエッセンスを取り入れた「東京あんプリン」など、伝統的な商品に加え、革新的な挑戦も行ってきました。
このような商品展開を通じて、時代に合わせた新しいスタイルを模索していたことがわかります。
なお「花園万頭」のキャッチコピーに関する商標が登録されていましたが、現在では存続期間の満了により、商標権は失効しています。
- 商標登録第892597号
- 権利者:株式会社花園万頭
- 出願日:1969年5月31日
- 登録日:1971年3月18日
- 指定商品: 第30類「まんじゅう」
2.老舗企業に訪れる冬の時代?
帝国データバンクの調査によると、2017年度に業歴100年以上の老舗企業が倒産・休廃業・解散した件数は461件に上り、これはリーマン・ショックが発生した2008年度の430件や、東日本大震災後の2012年度の417件を上回り、過去最多の記録となりました。
このデータは、どんなに長い歴史を持つ企業でも、存続が容易ではない現実を浮き彫りにしています。老舗企業は、戦争や震災などの大きな試練を乗り越えてきましたが、それでも時代の変化に適応し、事業を継続することは決して簡単ではないのです。
3.倒産した会社の商標はどうなるの?
「倒産」という言葉はよく使われますが、実は法律上の正式な用語ではありません。一般的には、会社が抱える債務を支払えなくなった状態を指しますが、その倒産には「再生型」と「清算型」の2つの大きなパターンがあります。
- 再生型:会社を存続させながら経営を立て直す。
- 清算型:会社を閉じて事業を終了する。
倒産した場合、商標権は会社の資産の一部として扱われ、売却されることがあります。
しかし、倒産した会社の社長が自由に商標権を売却できるわけではなく、法律的な手続きが必要です。特に「清算型」の倒産では、商標権の移転には特別な手続きが求められます。
(1)商標権を売る場合〜破産会社編〜
1.1 申請者
商標権の移転登録申請書には、商標権者である「破産会社」の住所や名称を記載しますが、代表者ではなく、裁判所が任命した「保全管財人」または「破産管財人」の名前を記載します。
1.2 必要書類
- 商標権の売却に関する裁判所の許可書
- 管財人の印鑑証明書
(2)商標権を売る場合〜清算会社編〜
2.1 申請者
商標権移転の申請書には、清算会社の住所や名称を記載し、「清算人」の名前を明記します。
2.2 必要書類
- 清算人の印鑑証明書
2.3 清算結了後の申請
清算が完了した後でも商標権の移転申請は可能ですが、譲渡証書の日付が清算結了前であることが条件です。この場合、申請者は「元清算人」となり、次の書類が必要となります。
- 元清算人であることを証明する書類
- 清算中であったことを証明する書類(例:閉鎖登記事項証明書)
4.まとめ
花園万頭は、一度倒産の危機を迎えましたが、いくつかの企業がスポンサーとして支援を表明しました。その結果、現在では千疋屋の傘下で「株式会社花園万頭」として再出発を果たしています。
現在も「花園万頭」の商標権は有効(商標登録第2370814号)であり、新たな会社がその権利を管理しています。倒産という事実があったとしても、商標権は引き継がれることがあり、有効な権利として存続します。
そのため、商標の模倣や無断使用は厳禁であり、法的な問題を引き起こす可能性がある点に注意が必要です。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247