ロゴ商標と文字商標とではどちらを選択すべきか。そのメリットデメリットについて

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(1)字体だけが違う場合はどちらがよいですか?

字体だけが異なる場合は、現場で実際に使うものを選びます

たまに文字以外に要素を含まない、文字のデザインだけに特徴があるものをロゴ商標と呼ぶ場合があります。この場合について説明します。

字体のデザインだけに特徴があるロゴ商標と、デザインが加えられていない文字商標の場合には、どちらを選んでもメリット・デメリットはありません。

図1 文字の字体にデザインが加えられたロゴ商標と、デザインが加えられていない文字商標との比較

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ここがポイント!

文字商標の場合には同じ読み方のものに権利の効力が及ぶので、最もよく使うものを選べば十分

上記図1の場合では、文字の字体にデザインがあるかどうかの違いがあるだけです。商標権は同じ読み方、意味のものに権利を行使できることから、それぞれを商標登録する必要はなく、どちらか一方を登録すれば十分です。

強いてどちらかを登録するとすれば、今後現場でメインに使用する方を選ぶのがよいです。

実際に使わないものを登録して保護するよりも、実際によく使うものを保護するのが鉄則です。

なお、現在はたまたまよく一方を使っているが、将来はメインになるものは逆転する、という場合には、将来よく使う予定のものを選択します。

(2)マーク等が付いたロゴ商標と文字商標とではどちらを選択すべきですか?

ロゴ商標が文字以外の構成要素をもつときには、文字商標を選択した場合と比較してメリットとデメリットがそれぞれ生じます。

(2-1) ロゴ商標が文字以外の構成要素をもつときのメリットとデメリット

商標の申請書には、商標を描く記載欄が一つしかありません。この記載欄にロゴを描けばロゴ商標になるし、記載欄に文字だけを記載すれば文字商標になります。

一つのロゴ商標の例として、「くま」のマークに「スズキ自動車」との文字が追加されたロゴ商標を考えてみましょう。

図2 「くま」のマークと「スズキ自動車」との文字が含まれるロゴ商標

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ロゴ商標を文字商標と一つにまとめて出願すると費用が安くなるメリットがある

ここがポイント!

ロゴと文字とを合わせて出願すれば費用が抑えられるメリットあり

図2に示されたロゴマークの商標の場合は、くまのマークと、スズキ自動車の文字とをそれぞれ独立して認知できますので、図2に示されたロゴ商標について商標権が得られたなら、「くまのマーク」のロゴや「スズキ自動車」の文字は、一応は商標権で守られることになります。

くまのマークと、スズキ自動車の文字とをそれぞれ別にして特許庁に二つの商標登録出願した場合、二つの商標権が発生しますから、一つにまとめて出願した場合に対して二倍の費用がかかることになります。

これに対して、図2のように、「くま」のマークと「スズキ自動車」との文字を一つにまとめて出願した場合には、一つの商標登録出願をすれば足りるので、一つの料金で済み、全体の費用が安くなるメリットがあります。

では「くま」のマークと「スズキ自動車」との文字を一つにまとめて出願することがいつもベストなのか、というとそうではありません。

一つにまとめると、商標権の侵害者による言い逃れを受ける

次に商標権の侵害者が使っている商標の例として、「うさぎ」のマークに「ススキ自動車」との文字が追加されたロゴ商標を考えてみましょう。

図3 「うさぎ」のマークと「ススキ自動車」との文字が含まれるロゴ商標

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ここがポイント!

ロゴと文字とを合わせて出願すると侵害者に言い逃れを許すデメリットあり

図3に示された侵害者のロゴマークの商標の場合は、うさぎのマークと、ススキ自動車の文字とをそれぞれ独立して認知できますので、図3に示された商標からでる「ススキ自動車」の部分を図2に示された商標と似ているかどうかの判断に使うことができます。

図2の商標の文字部分である「スズキジドウシャ」と図3の商標の文字部分である「ススキジドウシャ」とは「ズ」か「ス」かの一文字の違いしかなく、しかも濁音があるかないかだけの相違しかありません。

特許庁の審査の扱いでは、対比される商標の一文字の濁音があるかないかだけの差の場合、互いに類似する商標であると判断されます。

そうすると、図3の商標は仮に図2について商標権が得られたなら商標権者には無断で使えないように思われます。

ところが図3の商標を使っている側からすると、

『仮に文字部分の発音が近いとしても、くまのロゴとうさぎのロゴは互いに全然違うから、商標全体としては両者は似ていない。このため図2の商標と図3との商標はお互いに非類似である。』等とゴネまくって、なかなか商標権侵害を認めようとはしません。

このように、文字以外のマーク等を含むロゴ商標は、侵害者の言い訳を受けやすくなるデメリットがあります。

ロゴ商標と文字商標とをそれぞれ分けて商標権を取ると侵害者は言い逃れができない

これに対して、「くま」のマークについてのロゴ商標と、「スズキ自動車」についての文字商標とをそれぞれ特許庁に出願して、それぞれ商標権を得た場合には、くまのロゴ商標に加えて、「スズキ自動車」の文字商標について商標権が得られます。

この場合、侵害者はロゴのマークが違う、といった言い訳ができないため、文字商標を分けて出願することにより、より強い権利が得られるメリットがあります。

なお、文字商標の方が権利が強くなる理由は、文字商標が文字以外の構成要素を含むロゴ商標であった場合、文字にロゴの限定がついた分だけ権利範囲が限定されるからです。

これは「東京都」に比べて「東京都中央区」の方が範囲が狭い関係に似ています。「東京都中央区」の方が範囲が狭い理由は、「東京都」に「中央区」との限定が加重してかかっているからです。

これと同じです。

この反面、ロゴ商標と文字商標とをそれぞれ分けて出願した場合には、全体として二つの商標登録出願をすることになり、ロゴと文字とを一つにまとめて出願した場合の二倍の料金が必要になります。つまり、権利は強いメリットがあるものの、費用が高くなるデメリットがあります。

ここがポイント!

ロゴと文字とを合わせて出願すると費用は安いが権利が弱くなるミドルリスクミドルリターン
ロゴと文字とを別々に出願すると権利は強いが費用が高くなるハイリスクハイリターン

(3)ロゴ商標と文字商標とで審査の通りやすさに違いはありますか?

ケースにもよりますが、ロゴ商標と文字商標とを比較すると、ロゴ商標の方が審査に合格しやすい場合が多いです。

(3-1) マークを追加した商標は審査に合格しやすくなります

図4 「うさぎ」のマークに「引越センター」との文字が含まれるロゴ商標

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引越の業務に、「引越センター」との文字商標を出願しても拒絶査定になります。引越センターの商標は、誰もが使う必要のある一般名称であり、一人の業者に独占させると、他の事業者が困るからです。

ところが図4のようにマークを組み合わせたロゴ商標全体として出願すれば、うさぎの部分が他人の権利を侵害しないことを前提として、登録査定になり商標権が得られます。

うさぎのマークを含むロゴ商標全体としては、もはや一般名称とはいえないからです。

このため文字商標「引越センター」は審査に合格できないデメリットがあります。

これに対して図4のように、文字以外のマークを含むロゴ商標は、文字商標よりも審査に合格しやすいメリットがあります。

(3-2) マークを追加した場合は文字のみについて権利を主張できないデメリットも

図4の場合にマークを追加したロゴ商標は審査に合格しやすいメリットがある反面、この点を逆手に取られるデメリットもあります。

例えばマークの部分と文字の部分とを含むロゴ商標の場合、文字部分を使用している侵害者は、「文字商標の部分は誰もが使える一般名称だ。」、とごねまくって、なかなか商標権侵害を認めようとしません。

一般論として、文字商標は一般名称に近い場合には審査に合格できないデメリットがあります。しかしもし審査に合格できたなら、マーク付きのロゴ商標と違って、ロゴが違うから侵害にならない、との言い訳をできなくするメリットがあります。

つまり文字商標は審査に通りにくいが、通れば言い訳を許さない強い権利が得られるハイリスクハイリターンの性質を持ちます。

これに対してロゴ商標は審査に通りやすいが、審査に通っても他人から言い逃れを受けやすいローリスクローリターンの性質を持ちます。

ここがポイント!

誰もが使える文字商標にロゴを追加すると商標権は得られるが、文字部分のみに権利主張ができないので、ローリスクローリターン

(4)まとめ

ロゴ商標で行くか、文字商標でいくかはそれぞれメリット、デメリットがあり悩ましいです。基本的には次のように考えて判断します。

  • ロゴマークが将来変更になる可能性があるなら文字商標でいく
  • 文字商標だけでは審査に合格しにくい理由があるならロゴ商標を考える
  • 迷ったら、最終的に使う形のものでいく

という作戦でいきます。

なお文字商標の場合は、他の文字表記の中に埋もれて目に付きにくいというデメリットもあります。このため、需要者にパッと見て理解してもらえるメリットのあるロゴ商標を選ぶという方法もあります。

それぞれ個別にどの案がベストかについてはアドバイスしますので、迷ったら相談してください。無料でアドバイスします。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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