1.時間もコストもムダにしないために知っておくべきポイント
商標を出願するときは、まず「同じような商標がすでに登録されていないか?」を調べることが大切です。
もし他人の先行商標があなたの商標と同一または類似で、しかも同じ商品・サービス分野に登録されている場合、出願する商標は登録できない可能性が高くなるからです。
一方で出願してから特許庁からの審査結果がわかるまでには、6~12ヶ月ほどかかるのが一般的です。登録できない商標をそのまま出願してしまうと、その分の時間や費用が無駄になってしまうかもしれません。
ここで重要なのが、事前調査です。
1.商標調査で何がわかるのか?
登録の可能性を把握できる
他人の先行商標を調べておけば、自分の商標が登録できる見込みをある程度予測できます。
出願商標を最適化できる
類似商標が見つかった場合、少し手を加えて類似度を避けたり、別の候補を検討したりと、出願前に対策を取れます。
2.商標調査の方法
商標調査には、以下のようなデータベースを利用できます。
独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」
無料で検索できるため、商標調査を始めたい方にはまずおすすめです。
ただし、商標の「類否判断」や「出願戦略」には専門的な知識が必要なことも多いです。確実に登録するための可能性を見きわめたいなら、弁理士・弁護士に依頼するのが安心でしょう。
3.専門家を使うメリット
正確な調査
専門家は膨大なケースを扱っており、先行商標の有無だけでなく、今後登録に影響しそうなポイントを見逃しません。
戦略的な出願
もし類似する先行商標があっても、商品区分を検討することで出願の仕方を工夫したり、修正や意見書で登録にこぎ着けられるケースがあります。
4.調査の先にある商標登録
費用と時間を有効活用
あらかじめ調査することで、無駄な出願ややり直しを防ぎ、スムーズな登録手続きが期待できます。
ブランディングを守る
ビジネスの顔である商標をしっかり守ることで、後々のトラブルを回避できます。
ここがポイント
商標の出願は、手続きをすればどんな商標も通るわけではありません。事前に調査を行うことで、登録の可能性を見極めつつ、もっとも効果的な商標を選ぶことができます。せっかくのアイデアやブランドを確実に守るためにも、時間とコストをかけるだけの価値はあります。
もし「自力では判断が難しい…」と感じたら、迷わずプロの専門家に相談するのも一つの手段。商標登録はビジネスの生命線とも言える重要なプロセスです。しっかりとした調査で最適な出願を目指し、あなたのビジネスをより強固なものにしていきましょう!
2.出願商標の再検討「もう一度考える」ことの重要性
商標調査で同一・類似の先行商標が見つかった場合には、出願予定の商標そのものを“再検討”する必要があります。
ここで大切なのは、「ゼロベースでまったく新しい商標を考え直すのか」「現在の商標を一部変更するだけで済むのか」を慎重に見極めることです。
1.再検討の方法は主に2パターン
1. ゼロベースで作り直す
完全に別の名称・デザインを考え直す方法です。心理的なハードルが高いですが、急がば廻れ、という面もあります。
2. 元の商標をベースに修正する
既存の商標のイメージを保ちつつ、文字やデザインを一部付け加えたり、変更したりする方法です。
「どうしても今の商標のイメージを壊したくない!」という気持ちはわかりますが、適当な単語(特に識別力の弱い地名やありきたりな言葉)を付け足すだけでは、先行商標との類似を回避できない可能性が高いです。
気持ちだけが先行すると、時間も費用もムダになるリスクがあるので、慎重に検討しましょう。
なぜ識別力の弱い文字の追加は危険?
商標審査では「全体観察」が原則ですが、識別力が乏しい文字部分は重視されない傾向があります。
たとえば、単なる地名などを付けただけでは、新たに付け加えた部分が登録の手助けにはならず、結局「先行商標とほぼ同じ」と見なされるリスクが残ってしまうのです。
地名の追加は特に要注意
地名は商品・サービスの産地などを示すだけの情報と捉えられがちです。
そのため、「○○(先行商標)」+「Tokyo」などのように単に地名を付け加えただけでは、“非類似”と認めてもらうのは難しいケースが多くなります。
3.事例に見る“識別力不足”の落とし穴
「ENOTECA」事件では、商標に付随する文字「italiana(イタリアーナ)」が地名由来の言葉に該当するとされ、識別力が弱い部分と認められました。結果的に、先行商標との類似性が否定できず、商標登録は無効と判断されるに至りました。
裁判所と特許庁の判断が異なることもある
最終的な決着は裁判所が行うため、特許庁で一度登録されても、その後の争いで取り消されるリスクもあり得ます。
「Enoteca」部分が商標の要部とされた理由とは?
知的財産高等裁判所(平成28年1月28日判決)で取り上げられた、本件商標に関する判断を解説します。
3-1. どんな商標が問題となったのか?
- 本件商標:「Enoteca italiana(エノテカ イタリアーナ)」
- 引用商標(先に存在していた商標):「ENOTECA(エノテカ)」 など
本件商標は「Enoteca(エノテカ)」と「italiana(イタリアーナ)」の2つの要素で構成されています。
3-2. 「italiana」は識別力が弱い?
裁判所が着目したのは、「italiana」の文字部分です。
- 「italiana」=「イタリアの」という意味
- 本件商標が指定していた役務(サービス)はワイン関連などのイタリアに由来する可能性が高い役務
そのため「italiana」は、単に役務の提供場所がイタリアあるいはイタリアに関連することを示す程度にとどまり、出所(ブランド)を示す力は弱い=識別力が低い、と判断されました。
3-3. 「Enoteca」が要部として“強い印象”を与える
一方で「Enoteca(エノテカ)」は、
- 原告(引用商標権者)により広く知られていた
- ワイン関連サービスの出所表示として充分に機能していた
その結果、本件商標の中では「Enoteca」が取引者・需要者に強い印象を与える要部と認定されました。実際の取引の場面でも「Enoteca」の部分に注目が集まるだろう、というわけです。
3-4. 要部抽出に基づく類否判断が“許される”
通常、商標の類似を判断するときは「全体を比較する」のが基本です。しかし、
- 複数の要素を含む商標の一部分が、明らかに“強く支配的な印象”を与える要部の場合
- その部分を取り出して、先行商標との類否を判断しても良い
とされています。
この裁判例では、「italiana」は識別力が弱く、要部となりにくい、逆に「Enoteca」は出所表示として強く機能する。結果として「Enoteca」の部分を要部とみなし、それが引用商標「ENOTECA」とほぼ同じだという理由で、類似性を認めたのです。
3-5. まとめ
- 「italiana」= イタリア関連を表すだけであり、識別力は弱い
- 「Enoteca」= 周知性が高く、出所表示として強い
- そこで「Enoteca」が商標の要部として抽出され、引用商標(ENOTECA)と類似すると判断された
ポイントは「要部抽出」
商標全体が長いからといって、付け足し部分が地名や業種、記号などのように識別力が弱い場合、結局はメインとなる部分(要部)だけを取り出して比較されることがあります。もしその要部が先行商標と似ていると判断されれば、商標登録を認めない(あるいは無効にする)という結論に至るわけです。
ビジネスへのヒント
- 「この単語を付け足せば回避できるのでは?」と思っても、付け足した要素の識別力が弱いと、結局は主要部分が同じとみなされ類似リスクを避けられない可能性が大きいです。
- 特に地名や業種名、ありふれた記号などは“後付けしても要部に影響しにくい”ため注意が必要です。
商標を考えるときは、“どの部分が要部となるか”をしっかり意識することが重要です。 この判決は、そうした商標戦略の基本を改めて示してくれる一例といえるでしょう。
4. 専門家に相談しながら戦略を練る
商標の類否判断は意外と奥が深いものです。弁理士などプロに相談して、より確実な方針を立てましょう。
5.ここがポイント
- 1. 同じ商標が見つかったら、現状のまま出願しても登録できない可能性が高い
- 2. 元の商標に地名など識別力の弱い文字を付け足すだけでは、先行商標との類似を回避しづらい
- 3. どうしても既存のイメージを残したいなら、プロと相談して戦略的に修正や造語を検討するのがおすすめ
一度出願してダメだったときの時間・費用は大きな痛手になります。 だからこそ、商標の“再検討”はビジネスを前進させるうえでも非常に重要なプロセスです。先行商標を乗り越え、オリジナリティを確保するためにも、焦らずしっかりと検討していきましょう。
業種を示す語を付け足しても大丈夫?
「カフェ」「ホテル」「学院」のような業種名は識別力が弱い
商標の再検討をする際、地名と同じく、業種を示す語を単に付け加えるだけでは、先行商標との類似を回避できない場合が多いのをご存じでしょうか?
たとえば、「カフェ」「ホテル」「学院」など、業種を示す言葉は、サービス(役務)の質を表示するだけの情報として捉えられる傾向が強いです。その結果、審査段階で先行商標と類似と判断されやすく、拒絶されるケースが少なくありません。
1.業種名を足すリスク:地名と同様、識別力が乏しい
「○○(先行商標)+カフェ」「○○(先行商標)+ホテル」といった具合に業種を示す語を付け加える商標を選択しても、地名を追加するケースと同様に、商標の核心部分の類似が解消されない恐れがあります。
全体観察の原則
商標全体で非類似かどうかを判断しても、業種名などの識別力が弱い部分は大きく考慮されない可能性が高い。
分離観察
実質的に特徴がある部分(要部)が先行商標と似ていると判断されると、結果的に類似とされやすい。
2.実際には審査段階と審判段階で判断が変わることも
拒絶査定不服審判で“逆転”可能性もある
審査段階で「類似だ」とされた場合でも、不服審判では「非類似」と判断されるケースがまれに存在します。
一方で、その後の無効審判や裁判所の判断では再度覆される可能性もあるため、安心はできません。
3.「モンテローザカフェ」事件が示す落とし穴
具体例として「モンテローザカフェ」事件があります。
- 審査段階で拒絶査定を受けた後、拒絶査定不服審判で登録が認められました
- ところが後日、無効審判の結果、商標登録が無効とされ、知的財産高等裁判所も特許庁の判断を追認しました
このように、いったん登録されても、後から無効になることがあるのです。
「モンテローザカフェ」事件とは?
知的財産高等裁判所が平成23年9月27日に下した判決(平成23年(行ケ)第10081号)で、商標「モンテローザカフェ」の中でどこが“要部”にあたるのかが争点となりました。以下、ポイントをわかりやすく整理して説明します。
3-1. 商標の構成要素
問題になった商標は、標準文字で書かれた「モンテローザカフェ」です。
- 「モンテローザ」
- 「カフェ」
この2つの言葉が合わさってできています。
3-2. 「カフェ」の識別力は弱い?
裁判所は「カフェ」という語について、次のように判断しています。
- 我が国で「カフェ」は非常に一般的な業態名(喫茶店・珈琲店など)
- そのため、「カフェ」が付されていても、提供する役務(サービス)の質や場所を示すにすぎない
結果として、「カフェ」は自他役務(サービス)の出所を示す“識別標識”としては弱いとみなされます。
つまり、「カフェ」は業態を表すだけで、ブランド名のように強い特徴を持った語ではない、という位置づけになります。
3-3. 「モンテローザ」の部分はどう評価された?
一方、「モンテローザ」は次のように位置づけられました。
- アルプス山脈中の山の名前(イタリアにある自然地名)
- 具体的にどこの山かを知らなくても、語感から“ヨーロッパっぽい地名”という印象を与える
- 「カフェ」に比べて、業態名ではなく固有の言葉として“しゃれた響き”を感じさせ、出所識別標識として強いインパクトを持つ。
つまり、「モンテローザ」のほうが、取引者・需要者にとって“ブランドとして認識されやすい部分”であり、本商標の「要部」として機能している、と判断されました。
3-4. 部分的に取り出して比較してもよい「要部抽出」の考え方
商標の類似判断は、原則「全体観察」が大前提です。しかし、一つの商標が複数の構成要素を含む場合、その中で明らかに“強い識別力を持つ”部分が主役となり得るケースでは、次のように扱われます。
3-4-1. 要部抽出して比較
– 「モンテローザ」と「カフェ」が一体不可分なほど結びついていれば、商標全体をひとつのまとまりとして見る必要があります
– しかし実際には「モンテローザ」の部分がサービスの出所を示す要部として機能し、「カフェ」は業態にすぎず識別力が弱い
– そこで、「モンテローザ」部分だけを抜き出して、他の商標(引用商標)との類否を比べる判断が“相当”とされたのです
3-5. なぜこの判断が重要なのか?
- 「カフェ」や「ホテル」など業態名のみを付け足しても、先行商標との類似を回避できるとは限らない
- いったん商標登録されたとしても、後の異議申立や審判・裁判の場面で「要部抽出」による類否判断が行われ、結果が覆ることもある
要部と認められる部分が似ていれば、商標の類否は“似ている”と判断される可能性が高まるのです。
まとめ
「モンテローザカフェ」事件では、
- 1. 「カフェ」の部分はあくまで業態を示すにすぎず、識別力が弱い
- 2. 「モンテローザ」の部分こそが出所標識として強い機能を持つ
- 3. したがって、商標全体を「モンテローザカフェ」として見るよりも、「モンテローザ」部分だけを要部として抜き出し、先行商標との類否を判断するのが妥当
と結論づけられました。
ビジネスへの教訓
- 安易に業態名(カフェ、ホテル、学院など)を足しても、“似ている”と裁判所で判断されるリスクは消えない
- 商標を検討するときは「要部がどこか」をしっかり見極め、先行商標と類似していないかを入念にチェックすることが大切です
本件は、業態名や一般的な用語を付けるだけでは、商標としての「強い独自性」を補強できないケースがあることを改めて示している判例といえるでしょう。
4.結論:業種名を加えるだけでは危険
地名だけでなく、「カフェ」「ホテル」「学院」などの業種を示す言葉も識別力が弱いと判断されることが多いため、同一・類似の先行商標が見つかった場合の“付け足し対策”としてはリスクが高いといわざるを得ません。
- 要部が同じままの場合は類似と判断されやすい
- 無効審判で覆るリスクが残る
ここがポイント
商標の“要部”が先行商標と似ている場合、業種を示す語を付け足すだけではほぼ解決になりません。審査を通過したとしても、後の無効審判や裁判で覆されるリスクを考えると、あまりお勧めできないのが現実です。
商標はビジネスを象徴し、長期的なブランディングに欠かせない重要な資産です。
先行商標の存在がわかったときこそ、焦らず慎重に「再検討」を行いましょう。業種名などの識別力が乏しい要素に安易に頼らず、より独自性のある改変や新しいアイデアを取り入れるのが、商標登録への近道です。
記号を付け足せば類似回避できる?
「!」や「+」などの記号は“識別力が弱い”と判断されやすい
「地名」や「業種名」と並んで、商標を再検討する際に安易に取り入れがちなのが記号です。たとえば、感嘆符「!」、疑問符「?」、プラス記号「+」などは日常的によく使われるため、極めて簡単かつありふれたものとして識別力が乏しいとみなされやすいのが実情です。
1.「ピノプラス」事件が示す注意点
「ピノプラス」という商標は、一度は商標登録を受けたものの、その後の商標登録異議を受けて取り消され、知的財産高等裁判所も特許庁の取り消し判断を追認しました。
「+」を付け加えただけでは先行商標との類似を回避できなかった、典型的な事例のひとつです。
「ピノプラス」事件とは?
知的財産高等裁判所が平成22年2月16日に下した判決(平成21年(行ケ)第10236号)で、商標「pino+(ピノプラス)」がどのように判断されたかを示す事例です。商標を構成する要素の中で、“どこが要部として強く機能しているか”が重要な争点となりました。
1-1. 問題になった商標の構成
裁判所が審理した本件商標(以下「本件商標」といいます)は、以下のように構成されています(別紙1を参照という表現あり):
- 1. 大きく「pino」のローマ字表記
- 2. 「pino」の右上に小さな「+」記号
- 3. 「pino」の下に小さく「ピノプラス」とカタカナで付されている(かっこ書き)
つまり、見た目では「pino」が商標の中心に大きく描かれ、そこに「+」記号と「ピノプラス」という文字が補足のように加わっているイメージです。
1-2. “pino+”はどこが要部?
裁判所は以下の点を強調しました。
- 「pino」の占める面積・比率が非常に大きい
- 全体を見たときに「pino」の文字がひときわ目立ち、需要者・取引者に強い印象を与える。
1-3. 「+」記号は“付け足し”を示唆する程度
- 記号そのものにブランドを示す力(出所識別力)はほとんどない
- 装飾または意味合いを補助する程度で、主要部分の識別力には及ばない
1-4. 「ピノプラス」は“pino+”の読みを示す補足
- カタカナで小さく書かれていることから、全体のデザイン上は“pino+”の読み方や含意を示す程度の役割
- 大きな「pino」の印象を上回るほどの主張はしていない
1-5. 要部(メインの識別部分)は「pino」
上記を踏まえ、裁判所は「pino+」を全体として一体不可分に捉えるよりも、むしろ「pino」の部分が出所識別標識(ブランドを示す要部)として強く支配的な印象を与えると判示しました。
- 「+」記号は単なる“付け足し”を意味しがちで、そこから出所識別の観念や称呼が生じるとは考えにくい。
- 「ピノプラス(カタカナ)」も補足的要素であり、主役はあくまで大きく目立つ「pino」だというわけです。
1-6. “pino”部分を抜き出して比較することは許される
商標の類否判断では原則“全体観察”をするのが基本ですが、要部抽出が認められるケースがあります。本件はまさにそのパターン。
- 「pino」部分だけを要部として抜き出し、その上で他の商標(引用商標など)との類似性を比較しても問題ない
- 実際、需要者が「pino」の文字だけで「ピノ」と呼んで取引に当たる可能性は十分考えられる(“ピノ”という呼称が自然に生じる)
1-7. まとめとビジネス上のポイント
- 1-7-1. 装飾的な記号「+」の識別力はほぼ期待できない。記号を足せば差別化できる、という安易な考えは危険
- 1-7-2. 「カタカナの補足」はあくまで読みを説明する程度にとどまる。実際に目立っている“ローマ字部分”が要部とされやすい
- 1-7-3. 要部抽出されると先行商標と類似するリスクが高まる。一部がそっくりであれば、類似と判断される可能性が高い
本件は、「pino」という単語が消費者の目に強くとまる構成だと認定され、付加要素である「+」や小さなカタカナ表記は、結局“出所識別力”としては弱いという典型例です。
ここがポイント
「ピノプラス」事件は、地名や業種名、記号等を付け加えただけの商標構成がしばしば“要部抽出”により類似と判断されやすいことを示唆する重要な判例のひとつです。商標を考える際は“どの部分が一番目立ち、覚えられやすいか”を十分に意識して、先行商標と混同されないような工夫が不可欠だといえるでしょう。
2.なぜ記号に頼ると危険なのか?
識別力が弱い(ほぼ無い)と判断されやすい
記号は装飾的な効果や感情表現に過ぎないとみなされがちで、商標の本質的な特徴として考慮されにくいです。
先行商標との要部(本質的な部分)を分離観察される可能性
仮にあなたの商標の“本体”部分が先行商標と類似していると、記号はほとんど意味を持たず「類似」と判断されるリスクが高くなります。
3.安易に記号を加えた商標の落とし穴
3-1. 商標が取れると思いきや、異議申立や無効審判で覆るリスク
審査をすり抜けても、その後に取り消されるケースがあり得ます。
3-2. 付け加えた記号のインパクトが小さく、独自性が確保できない
記号は日常的に使われているため、“差別化”にはなりづらいのが現実です。
4.ここがポイント
- 記号(「!」、「?」、「+」など)はほぼ“識別力がない”とみなされる傾向が強い
- 先行商標への回避策としての「記号足し」は、類似判断を覆す効果が期待できない
- “一度は登録されたけれど、その後の異議申立や無効審判で取り消された”という事例も多数
時間と費用を無駄にしないためにも、記号をちょっと追加しただけの“付け足し商標”は要注意。
根本的に先行商標との違いを打ち出す工夫をするのが、商標登録を成功させる近道です。
記号を入れた商標は、ぱっと見の印象こそ変わりやすいですが、法的にはほぼ効果なしとみなされる場合が多いのが現実。大切なビジネスの顔を守るためにも、安易に記号だけで補おうとせず、一歩踏み込んだ差別化策を検討してみましょう。
3.おわりに
地名、業種、記号のように識別力が乏しい要素を付け足しただけでは、先行商標との類似を回避できる可能性は低いといわざるを得ません。さらに、運よく審査段階で「非類似」と判断されて一時的に商標登録が取れたとしても、後の審判や裁判所で登録の有効性を覆されるリスクは常に存在します。
1.要注意! 安易な付け足しは思わぬ落とし穴に
一度登録が通っても安心できない
異議申立や無効審判で再度審理される可能性があり、結果的に登録を取り消される事例が少なくありません。
裁判所の判断次第で最終的に無効になることも
特許庁が認めても、裁判所でひっくり返るケースもあるため、ビジネスの安定度を損ないかねません。
2.先行商標との衝突リスクを徹底回避するには
可能な限り“問題の少ない”新規性・独自性のある商標を選ぶ
オリジナルな文字や造語・デザインを取り入れるなど、先行商標とハッキリ区別できる要素を持つことが大切です。
専門家(弁理士)に依頼し、“先行調査”をしっかり行う
事前調査や類否判断の知見が豊富な弁理士と相談することで、出願後の不安をグッと減らせます。
まとめ
地名や業種名、そして単純な記号のように識別力が弱いものを付け足すだけでは、先行商標との類似を避けられないだけでなく、後々の審判・裁判リスクも抱え込むことになりかねません。
こうしたリスクを避けるためには、“問題の少ない”商標を選ぶための十分な下調べと専門的な知識が欠かせません。商標はビジネスの“顔”となる重要な存在だからこそ、慎重かつ戦略的に検討しましょう。
ファーイースト国際特許事務所弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247