あのPython商標事件はどうなった? 本家 vs 第三者のゆくえ

無料商標調査 定休日12/28-1/5

「Python」といえば、いまやプログラミング言語の代名詞ともいえる存在です。そんなPythonの商標が、かつて日本のとある会社によって本家とは無関係に登録され、話題になったことをご存じでしょうか?

結論からいえば、現在は第三者の商標権はなくなり、本家がその権利を保持しています。では、そもそも第三者が「Python」を商標登録できるの? もし登録されたらプログラミング言語として使えなくなるの? そんな疑問を、商標のプロの視点からわかりやすく解説します。

(1)そもそも商標「Python」を商標登録してもよいのか?

商標登録は、指定した“商品やサービス”に対して行われるものです。

商標登録されても「Python」という単語そのものが永久に誰も使えなくなるわけではなく、「どの分野のサービスや商品に対する商標なのか」がポイントになります。

すでに登録されている場合は侵害になる?

確かに同一または類似の商標が既に登録されていれば、無断で使うと商標権侵害になる場合があります。ただし、それには「どの範囲で権利を取得しているか?」という条件があります。

「言葉そのもの」は登録されていない?

「Python」という単語そのものが全面的に規制されるわけではありません。商標登録されているのはあくまで、ある特定の区分(商品・サービスの種別)に限って効力を発揮します。

プログラミング言語として使う場合の影響は?

ここが多くの方が勘違いしやすいポイントです。

商標権は名前の権利

商標権は「パッケージやサービス名として“Python”を表示する場合」に効力を発揮します。逆に、プログラミング言語としてPythonを使う行為そのものには、直接的に商標権侵害が及ぶわけではありません。

“中身(アイデア)”は保護対象外

商標は“ネーミングやロゴ”を保護するものです。プログラムのアイデアやコードの実装そのものを保護する仕組みではありません。

「Python」を使った商品・サービス名には注意!

実際に商標が登録されている指定商品や指定役務に該当する形で「Python」と表示して商品販売やサービス提供を行う場合には、商標権侵害にあたる可能性があります。具体的には、こんなケースです。

仮にソフトウェア関連について商標権が取得されている場合は次の行為が制限されます。

  • パッケージに「Python」と大きく記載してソフトウェアを販売
  • 電子計算機プログラムの提供サービス名に「Python」を使う

ただし、プログラミング教室のテキストやサイト上で「Pythonを使って開発しましょう」と書いたり、コードを書いたりする行為自体は商標権の侵害になりません。

じゃあ実際「Python」を使っている開発者はどうすればいい?

結論、安心して使えます。コーディングや開発そのものは問題ありません。ただし、もし自分の製品名やサービス名として「Python」を使おうとする場合は注意が必要です。現時点で商標権を取得している本家(Python Software Foundation)や関連組織に許諾を取る必要があります。

  • コードを書く分にはOK
  • ソフトやサービス名に使う場合はライセンス・商標ルールをしっかり確認

ここがポイント:Pythonユーザーが困ることはない

一時期は第三者による「Python」商標登録が話題になりましたが、その後本家の強い働きかけによって第三者の権利は消滅し、最終的に本家の商標が確立しています。

もし「Python」という名前を使ったパッケージや商品を作りたい場合は、必ずライセンスや商標に関する規定をチェックしておきましょう。とはいえ、普段のプログラミングや学習、業務で「Python」を使うだけなら、特に問題はありません。

商標は「誰が、どんな分野で、どんな名前を使うか」が重要です。

プログラミング言語の魅力に惹かれてPythonを使うのはまったく自由。とはいえ、商標権の仕組みを誤解して「名前を使ったらいけないんじゃ…?」と不安になる方も多いでしょう。改めて「商標は表記としての権利」であり、言語そのものの利用を規制するわけではない、という点を覚えておいていただけたら幸いです。

(2)商標「Python」の権利内容はどうなっている?

「Python」という商標をめぐっては、以前問題となった第三者による商標登録が存在していました。ここでは、そのうち“電子計算機用プログラム関連”の権利はどうなっていたのか、詳しく見てみましょう。

1. 商標登録は“言葉”そのものを制限するわけではない

商標は、登録の際に指定した「商品やサービス(役務)」に関してのみ排他的な権利が発生する仕組みです。

つまり、「Python」という言葉自体を一切使えなくなるわけではありません。たとえば「乗物用盗難警報器」や「楽器」の分野で商標登録されていれば、あくまでその分野での名称使用を独占できるというイメージです。

2. 電子計算機プログラム分野の登録当時の状況は?

第三者の登録商標「Python」

  • 現在のステータス:取消済み
  • 登録番号:第6042638号
  • 登録日:平成30(2018)年5月11日
  • 出願日:平成29(2017)年5月25日
  • 権利範囲:
  • 第9類(電気通信機械器具 など)
  • 第16類(定期刊行物 など)
  • 第41類(教育研修 など)
  • 第42類(デザイン など)

ただし、ここに「電子計算機用プログラム」や「電子計算機用プログラムの提供」は最初から含まれていません。要するに“プログラムそのもの”や“プログラムを提供するサービス”に対する商標登録は取得されていないということです。

審査官も「Python」を“プログラム”で認めなかった?

電子計算機用プログラムの分野で「Python」の商標を取ろうとしたとしても、特許庁の審査官が認めなかった、という背景があります。

商標審査では、プログラミング言語として世界的に有名な名前を、まるごとプログラム分野で独占させることは、他者の業務を不当に妨げる恐れがあると判断されやすいのです。

ここがポイント:権利範囲を正確に把握しておこう

  • 商標はあくまで「指定商品・サービス」に対する保護
  • 「Python」をプログラム関連に登録することは認められていない
  • 他の分野(電子機器や教育など)では商標登録が存在する可能性がある

上記の商標権は最終的に本件本元の総攻撃により取り消されています。「Python」を使ったプログラミングやシステム開発をするだけで、直ちに商標権侵害になることはありません。ただし、本家本元が権利を取得し直しているので、もしソフトウェア名やサービス名に「Python」を大々的に使用する場合には、商標権侵害のリスクをチェックする必要があります。

(3)本家からの“総攻撃”で登録取消へ:結局「Python」商標はどうなった?

第三者が、世界中の開発者が利用するプログラミング言語「Python」の商標を登録していたなんて、本家本元が黙っているはずがないです。

平成30(2018)年5月11日に登録された「Python」(商標登録第6042638号)に対し、本家をはじめとする関係者から4件もの取消審判が申し立てられたのです。

結果はご想像のとおり、すべての登録取消が認められ、最終的に第三者が保持していた商標権は消滅となりました。

1. なぜ総攻撃に?

  • Pythonは、IT・プログラミングの世界で圧倒的な知名度を誇る言語です
  • 本家本元(Python Software Foundation)にとって、この名前を他者に独占されるわけにはいきません
  • そのため、複数の取消審判という“総攻撃”で登録の取消を狙ったわけです

2. 取消審判の結果

  • 関係者による4件の審判がすべて「取消」を勝ち取り、最終的に商標権は消滅しました
  • 現在では本家本元が「Python」に関連する商標権を多数取得し、第三者が権利を取ることができないように保護済みです

3. 結局「Python」は自由に使えるの?

今回の結末からもわかるように、プログラミング言語としてのPythonは、世界中で自由に利用できるものです。

ただし「商標」として名称を使う場合(例:製品名やサービス名に“Python”を含める場合)は、やはり本家のガイドラインや商標ルールを確認する必要があります。

(4)まとめ

第三者が取得していた「Python」商標は、本家を含む関係者の積極的な対応によって最終的には消滅しました。

プログラミング言語としてPythonを使うことに不安を感じる必要はありません。ただ、自分のサービス名やパッケージ名に“Python”を入れる場合には、商標権の範囲とルールをしっかり把握することが大切です。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘 03-6667-0247

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