民事訴訟の手続の流れとは?分かりやすく解説します

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1.民事訴訟への流れ

企業が競争力を高めるためには、研究開発に力を入れ、優れた発明が生まれたら特許を取得することが重要です。特許権を得た企業は、その発明を独占的に実施できます。しかし、現実にはライバル企業が特許権を侵害してくるケースもあり得ます。

こうした場合、まずは特許権者が警告書を送付し、

  • 侵害行為の中止
  • ライセンス契約の締結

などを求めます。ここで両者の話し合いがまとまれば紛争は解決です。

ところが、警告書を無視されたり、交渉が決裂したりすると、話し合いだけでは解決が難しくなります。自分の主張が法的に正当だと考えるならば、民事訴訟という手段を選ぶことになります。

民事訴訟とは?

民事訴訟は、裁判所が中心となって行われる最も厳格な手続きです。具体的には、

  • 1. 原告が訴えを起こす(訴状の提出)
  • 2. 被告が応訴する(答弁書の提出)
  • 3. 裁判所が両者の主張・立証を聞き、最終的に判決を下す

この判決は原告・被告の両者を強く拘束するため、法律上の権利義務をめぐる争いを解決する強力な手段といえます。

ここがポイント

  • 特許を取得しても、ライバル企業が特許権を侵害してくる可能性がある
  • まずは警告書を送り、話し合いで解決できるかを探る
  • 交渉が決裂したり無視された場合は、民事訴訟で争うことも視野に入れる

もしもの時に備えて、紛争解決の流れを知っておくのはとても大切です。特許紛争や商標紛争など、知的財産にまつわるトラブルに直面したら、早めに専門家へ相談し、適切な対策を講じましょう。

知財トラブルを未然に防ぐためにも、まずは基本をしっかり押さえておくことが大切です。

2.裁判手続の流れ

「民事訴訟」という言葉を聞くと、とても複雑そうに感じるかもしれません。しかし、いざ紛争が起きたときに正しい手続の流れを知っておけば、不安も少し和らぐはずです。ここでは、訴えの提起から和解・判決、そして控訴までの一連の流れを分かりやすく紹介します。

SNSでシェアしておけば、トラブルに直面した友人にも役立つかもしれません。

(1)原告の訴え提起と裁判所・被告の対応

原告が訴状を提出

民事訴訟は、原告が裁判所に「訴状」を提出してはじまります。

訴状には「誰が誰を訴えるのか」「何を求めるのか」といった請求の内容、それを支える事実などを記載します

必要な証拠があれば、訴状と一緒に提出するのが一般的です。

裁判所の動き

裁判所は訴状を受け取ると事件番号を付けて審査します。

不備がなければ審査は終了し、裁判所は原告の都合を確認したうえで、第1回口頭弁論の期日を指定します。

被告の対応

被告のもとには、訴状の副本(訴状のコピー)と第1回口頭弁論期日の呼出状が届きます。

被告は限られた時間の中でどう対応するかを検討し、「答弁書」を提出する必要があります。

答弁書には、相手の主張に対する反論や自分側の主張を整理して記載し、裁判所に提出します。

第1回口頭弁論期日は、被告の都合は確認されずに日程が決まるので、やむを得ず欠席するケースもありますが、答弁書を出しておけば欠席しても答弁書の内容が陳述されたとみなされます。

(2)第1回口頭弁論期日

裁判官・書記官・当事者(または弁護士などの代理人)が公開の法廷に出席します。

事件番号が呼ばれると手続が始まり、原告は訴状を、被告は答弁書を陳述します。

第1回口頭弁論が終わると、次回の期日や準備事項を確認して終了するのが一般的で、短時間で終わることが多いです。

被告が欠席&答弁書も未提出だった場合

被告が欠席し、かつ答弁書も提出していないと、裁判所は被告が「事実を認めた」とみなす可能性があります。

条件がそろえば、そのまま判決が出る場合もあるので要注意です。

(3)争点および証拠の整理

多くの事件では、法律上・事実上のポイント(争点)について、原告と被告の間で主張が食い違います。

裁判を効率的に進めるため、「争点と証拠の整理」の手続が行われます。

  • 当事者は、主張をまとめた「準備書面」を提出したり、証拠を追加提出したりして、どこが争点なのかをクリアにします。

この手続は必ずしも公開の法廷で行う必要はなく、裁判所内の部屋などで非公開で行われることもあります。

(4)証拠調べ

争点と証拠の整理が終わったら、必要に応じて証拠調べ(証人尋問や当事者尋問など)に進みます。

ただし、第一審(最初の審理)で証人や当事者が実際に尋問されるのは15%程度といわれており、大半の事件は書面などのやり取りだけで進められます。

証人や当事者は宣誓を行ってから証言するので、虚偽の供述をすれば偽証罪などの罰を受ける可能性があります。

(5)和解・判決

裁判所はいつでも当事者に和解(話し合いによる解決)を勧めることができます。

実際、30%以上の事件は、裁判の途中で和解が成立し、訴訟が終わっています。

もし和解が成立せず、訴えの取り下げ等もなければ、必要な手続を終えた段階で判決が言い渡されます。

判決の言渡し当日は、ふつう判決主文(結論部分)だけが読み上げられ、その後、当事者へ正本が郵送される流れです。

(6)控訴

判決は、判決書の送達を受けてから2週間が経過すると確定します。

その判決を確定させたくない場合は、2週間以内に控訴(高等裁判所への上訴)をします。

ただし、主張に正当性がなければ控訴は認められません。判決が不当だと感じるときにのみ、控訴で上級裁判所の判断を求めることができます。

紛争解決への道筋を理解しておこう

民事訴訟の流れは複雑に見えますが、一つひとつのステップを押さえればそこまで難しくはありません。企業同士の特許や商標などの知的財産の争いでは、話し合い(警告・交渉)で解決できない場合に裁判という最終手段を選ぶことがあります。

  • 訴えの提起 → 第1回口頭弁論 → 争点・証拠の整理 → 証拠調べ → 和解or判決 →(必要なら)控訴

この流れを頭に入れておけば、いざというときにも冷静な対応ができるはず。SNSでも「知財トラブルに備えるための基本知識」としてシェアしておけば、多くの方がトラブルを未然に防ぐ手立てとなるでしょう。

3.まとめ

通常の民事訴訟(第一審)は、事案にもよりますが平均して約8ヶ月ほどかかります。一方で、特許・商標などの知的財産権侵害訴訟では、約14ヶ月とさらに長い時間を要するのが一般的です。これは、知財訴訟が専門的な論点を含むため、通常の民事訴訟とは異なる審理モデルが採用されることに起因します。

ただし、知財侵害訴訟といえども、民事訴訟である以上大きな枠組みは同じです。民事訴訟を活用する際には、こうした枠組みや審理期間について理解しておくことで、より適切な対応や戦略を立てることができるでしょう。

知財訴訟の流れを押さえておけば、いざというときに落ち着いて行動できるので、ぜひ参考にしてください。

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
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