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特許庁での印鑑の扱い方をご存知ですか?


1. はじめに

特許庁に書類を出すとき、押した印鑑は「あなたの印鑑」として、特許庁側に記録されていきます。何年も前に押した印鑑がどれだったか思い出せないというご相談は、出願人の方から本当によくいただきます(できれば「どの印鑑を、どこで、何に使うのか」を覚えておいてほしいところなのですが…)。

近年は、行政手続きの押印見直しが進み、押印が不要な場面は確かに広がりました。ただし、商標権や特許権といった知的財産権は、土地の権利と似た「他人に勝手に動かされては困る権利」であるため、本人確認のために押印が今でも残っている場面があります。

本記事では、会社で用意される印鑑の種類、特許庁での印鑑の取り扱い、想定されるトラブルとその対応、そして個人出願の場合の印鑑事情まで、実務目線で整理していきます。

2. 会社の印鑑には種類がある!

会社を立ち上げると、通常は3種類(ゴム印を含めれば4種類)の印鑑を用意します。これらの違いをまず押さえておきましょう。

(1)代表者印(会社の「実印」)

会社でもっとも格式の高い印鑑で、設立時に法務局へ届け出ます。「一般的な代表者印の構造」を整理すると、次のとおりです。

  • 会社設立の際、法務局に登録する
  • 「印鑑証明書」を取れる唯一の印鑑
  • 「丸い二重構造」が一般的だが、形に決まりはない

令和4年1月1日以降、特許庁で押印を求められる場面では、「実印」か、実印によって本人確認できる法人の「代表者印」を使うことになっています。

彫りは社名+「代表取締役之印」が定番ですが、イラスト入りの代表者印が認められるケースもあります。

(2)銀行印

銀行口座を開くときに届け出る印鑑です。代表者印と兼用する会社もありますが、流出した場合の被害を抑える観点から、分けて管理する会社が多数派です。

(3)社印(認印)

見積書や請求書など、日常の書類に押す印鑑です。彫られているのは社名だけで、形は正方形(角印)が定番。重要書類には向きませんが、出番が多いので保管にはご注意ください。

(4)ゴム印

社名・住所・代表者名をひとまとめに押せる事務用の印鑑です。正式な印鑑ではないものの、書類作成のスピードアップに役立ちます。

3. 特許庁での印鑑の取り扱い【会社編】

特許庁に書類を出したとき、通常の代表者印と違う構造の印鑑を使っていると、「本当に会社の代表者印なのか?」を確認する指令が特許庁から届き、その場では受理されません。

通常の代表者印を押していても、特許庁側に登録されている印鑑と合致しないと、同じく指令が出されます。

指令が届いたときの対応を、ケース別に見ていきましょう。

ケース1:押した印鑑が本当に代表者印だった場合

「印鑑証明書」を出せば話は済みます。特許庁は、押された印鑑が本物の代表者印かどうかを確かめたいだけだからです。

ケース2:押した印鑑が代表者印ではなかった場合

代表者印を押し直した書面を提出し直してください。代表者印が丸い二重構造でない場合には、印鑑証明書を添えておくと話が早く進みます。

ケース3:代表者印は押したが、特許庁の登録印鑑と違う場合

対応の選択肢は二つあります。

  • 方法A:特許庁に登録されている印鑑で書面を出し直す
  • 方法B:「印鑑変更届」を出し、登録印鑑を今の代表者印へ切り替える

これから先の手続きを見越すなら、印鑑変更届で登録を更新しておいた方が、次回以降の手間を減らせます。

ケース4:押した印鑑も、登録印鑑も、いずれも代表者印でない場合

ケース3と同じで、登録印鑑で押し直すか、印鑑変更届を出すかの二択になります。

この機会に、印鑑変更届を出して代表者印に揃えておくほうをおすすめします。

ケース5:会社名を変えたのに代表者印を作り直しておらず、印鑑の社名が今と違う場合

印鑑証明書を提出すれば通せます。新しい社名で代表者印を作り直し、あわせて印鑑変更届を出すという道もあります。社名変更とあわせて印鑑をきれいに整理しておくと、今後の登記関連の手続きで戸惑う場面が減ります。

4. 特許庁での印鑑の取り扱い【個人編】

個人で出願する場合の印鑑事情も整理しておきましょう。

令和4年1月1日以降、個人の出願人にも、実印と印鑑証明書の提出が求められるようになりました。これは、知的財産権が他人に勝手に名義変更されるなどのトラブルを防ぐためのものです。

一度特許庁で実印が認証されれば、それ以降は実印の押印だけで足りるようになり、毎回印鑑証明書を添える手間はなくなります。最初の一度だけ、市区町村役場で印鑑証明書を発行してもらい、特許庁に提出する、という流れです。

ここで気をつけたいのが、認証時に「間に合わせ」の印鑑を使ってしまうケースです。「とりあえずこれで」とその場の判断で押した印鑑が、後の出願や登録時にも「あなたの印鑑」として扱われ続けます。後になって「どの印鑑だったっけ」と分からなくなるパターンが、ご相談で最も多い類型です。実印として扱う印鑑は、保管場所と一緒にしっかり管理しておいてください。

5. 過去に特許庁に提出した書面に捺印した印鑑を忘れてしまったら

「以前出願したときに使った印鑑がどれだったか分からない」これも本当によくあるご相談です。

ここで知っておいていただきたいのが、特許庁に電話で「私の登録印鑑はどれですか」と尋ねても、教えてもらえないという点です。電話口の相手が、本当に本人なのか、本当に正当な代理人なのかを、電話だけでは特許庁側では確かめようがないからです。本人確認が取れない相手に登録印鑑を伝えてしまえば、なりすましの足がかりになってしまいます。

こうしたときは、弁理士にご相談ください。弁理士が代理人として関与する形であれば、しかるべき段取りで対応できます。新しい印鑑を実印化して登録し直すという選択肢を含めて、適切な打ち手をご提案します。

6. おまけ:知っておくと便利な豆知識

(1)「印」と「印鑑」

「印鑑」はもともと「あらかじめ市町村長や銀行その他取引先などに提出しておく特定の印影。」を指す言葉でした。「印」は「印。印章。」、いわゆる「はんこ」そのものは、本来「印章」と呼びます。とはいえ日常会話では「印鑑」で「はんこ」を指す言い回しが完全に定着しており、本記事もその使い方に合わせています。「普段使いの印鑑」を「認印」と呼ぶように、用途で言い分ける呼称も慣用的に使われます。

(2)「朱文」と「白文」

印鑑を押したとき、文字が赤く出るものを「朱文」、文字が白く浮き出るものを「白文」と呼びます。ビジネスで使う印鑑はほぼすべて朱文です。白文は、書画の落款などで目にすることがあります。

(3)電子出願と押印

近年は、特許庁への手続きの大半が電子出願で行われており、電子証明書による認証で押印に代えるのが一般的です。とはいえ、譲渡・承継・名義変更・委任関係の確認といった一部の局面では、なお書面と押印が登場します。電子出願に慣れた方でも、押印にまったく触れずに済むわけではない点は押さえておきましょう。

7. まとめ

印鑑を押すという行為は、会社や個人の「意思」をその場で示す行為です。特許庁に出す書面でも、印鑑の扱いには明確なルールが敷かれています。

  • 特許庁の登録印鑑と合わないと、その場では受理されない
  • 対応策は「印鑑証明書の提出」か「印鑑変更届の提出」
  • 今後の手続きを見越すなら、印鑑変更届で代表者印に揃えておくと後が楽
  • 個人出願では実印化の最初の一回だけ、印鑑証明書の提出が求められる
  • 過去の登録印鑑が分からなくなった場合は、まず弁理士へ相談

どの印鑑を、どの場面で、何に押すのか。自社で把握できていれば、手続きの遅れやトラブルの芽を事前に摘み取れます。

印鑑に関する手続きでお困りでしたら、ファーイースト国際特許事務所へお気軽にお声がけください。無料相談(/mailform)と費用の目安(/fee-schedule-trademark)をご用意しています。実務経験10年以上のベテラン弁理士が、直接お話をうかがいます。

8. Q&A:特許庁の印鑑取り扱いについてよくいただくご質問

Q1. 押印が省略された行政手続きが増えていますが、特許庁ではまだ押印を求められますか?

A. かなりの場面で押印は不要になりましたが、知的財産権の譲渡・承継・名義変更・委任関係の確認といった、本人意思の確認が欠かせない局面では、押印または電子認証が今でも残っています。

Q2. 会社の代表者が交代したとき、印鑑はどう扱えばよいですか?

A. 新しい代表者印を法務局に届け出たうえで、特許庁にも「印鑑変更届」を提出します。あわせて代表者の交代を反映する出願人名義変更届などの手続きが必要になる場合もあります。

Q3. 個人で実印を持っていないのですが、出願はできますか?

A. 出願自体は可能ですが、令和4年1月1日以降は実印と印鑑証明書の提出を求められる場面が出てきます。市区町村役場で印鑑登録をしておけば、実印として扱えるようになります。

Q4. 過去の出願で使った印鑑がどうしても分からない場合、新しく実印を登録できますか?

A. はい、印鑑変更届を経て新しい印鑑を登録し直すことができます。手続きの流れは弁理士からご案内いたします。

Q5. 電子出願であっても押印が必要な場面はありますか?

A. 譲渡・承継・名義変更や、第三者への委任関係を明確に示す書面では、押印または電子証明書による認証が今も登場します。電子出願を主軸にしていても、押印が完全になくなるわけではありません。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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