索引
- (1)iPhone脱獄とは?
- (2)登録商標商品の転売は商標権侵害になるのか?徹底解説!
- (3)なぜ脱獄iPhoneに消尽説が通用しないのか
- (4)購入して転売する際に商標権侵害になる場合
- (5)商標権と消尽説:判断はケースバイケースが重要
(1)iPhone脱獄とは?
「脱獄」とは、iPhoneなどのスマートフォンをメーカーが設定した制限を解除し、自由に改造する行為を指します。この行為は、特にアップル製品において「不正改造」と見なされ、アップル社は公式にこれを禁止しています。
24歳の男性が「脱獄スマホ」を販売したとして、千葉県警に逮捕されました(2016年10月3日、日本経済新聞)。またプログラムを改変した米アップル社のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を販売したとして、19歳のアルバイト男性が逮捕されています(2020年3月3日、産経新聞)。
これらの事件のポイントは、脱獄自体が商標権侵害に該当する可能性がある点です。
脱獄のリスクと違法性
通常、iPhoneを含むスマートフォンは、メーカーが認めたアプリしかダウンロードできないように設計されています。これにより、セキュリティを強化し、悪意のあるアプリによる端末乗っ取りを防ぐ目的があります。脱獄を行うことで、この制限を取り払ってしまい、あらゆるアプリを自由にインストールできるようになります。
しかし、脱獄はメーカーのセキュリティガードを無効化する行為であり、これが商標権の侵害や違法改造にあたると見なされることがあるのです。また、脱獄を行うとアップルの保証が無効になるだけでなく、法的な問題に直面するリスクも伴います。
なぜ「脱獄」と呼ばれるのか?
iPhone脱獄とは、iPhoneを不正改造することです
「脱獄」という言葉は、端末がメーカーの設定した「牢獄」から解放されるイメージを反映しています。もともとは改造者たちの間で使われたスラングで、自由に端末を操作できるという点から親しまれている表現です。しかし、自由の代償は大きく、法的なトラブルやセキュリティの脆弱性を引き起こす可能性が高いため、注意が必要です。
(2)登録商標商品の転売は商標権侵害になるのか?徹底解説!
商標商品の転売は違法?
「登録商標が付いた商品を転売したら、商標権侵害になる?」この疑問をよく耳にします。結論から言うと、正規品をそのまま正規の流通過程に乗せる場合は商標権侵害にはなりません。
登録商標とは、特許庁で正式に認められた商標のことです。例えば、あるブランドの商品にその商標が付いている場合、商標権者(ブランドの所有者)や許可を得た者しか、その商標を使って商品を販売することができません。
商標権侵害になるケース
商標権者の許可なしに商標を使った商品を販売すると、商標権侵害になります。
特に、類似品や偽物を販売することは、商標権侵害の典型的なケースです。商標権侵害が確認された場合、以下の刑事罰に処される可能性があります。
- 10年以下の懲役
- 個人の場合は1000万円以下の罰金
- 法人の場合は3億円以下の罰金
さらに、商標権者からの差止請求や損害賠償請求も可能です。
転売は大丈夫?「消尽説」とは
では、正規品を転売する場合はどうでしょうか?ここで重要なのが、「消尽説」という考え方です。商標権者が一度適法に商品を販売した場合、その商品に対する商標権は「消尽」するとされています。
つまり、一度市場に出た正規品をそのまま正規のルートで転売する場合、商標権侵害にはならないということです。
消尽説に基づけば、商標権者が市場に出た商品の売買に介入することはできません。商取引の円滑さを守るため、商標権者が転売を規制できる余地はないとされています。
実際の商取引への影響
もし商標権者が正規品の転売に介入できたら、一般的な商取引は大きく混乱してしまいます。通常、商品は卸売から小売、そして消費者へと転売されていくプロセスを経て市場に流通します。
これを商標権者がいちいち止めることができるとすれば、正常な流通が成り立たなくなってしまいます。
実際の判例や学説では、商標権者が最初に商品を販売する際に、転売されることをあらかじめ考慮し、その価格を設定できる裁量があると考えられています。
したがって、正規の商品が市場に出た後に転売されたとしても、それを商標権侵害として取り締まる必要はないというのが主流の考え方です。
(3)なぜ脱獄iPhoneに消尽説が通用しないのか
消尽説の限界
「消尽説」とは、一度適法に商標が表示された商品が販売された後、商標権者がその商標権を主張できなくなるという考え方です。しかし、脱獄iPhoneに関しては、この消尽説が通用しないケースが存在します。
商標の4つの重要な機能
商標には以下の4つの重要な機能があります。
- 1. 自他商品識別機能:他の商品と区別できる機能。
- 2. 出所表示機能:商標が特定の供給元を示す機能。
- 3. 品質表示機能:商標が一定の品質を保証する機能。
- 4. 広告宣伝機能:商標がリピート購入を促す機能。
なぜ商標権が侵害されるのか?
これらの機能が損なわれた場合、商標権侵害が発生すると考えられます。たとえば、商標権者とは無関係な第三者が、商標の付された商品を無断で改造すると、その商標が保証する品質が失われると判断されます。品質表示機能が損なわれるため、この場合、商標権侵害が成立する可能性があります。
iPhone脱獄の場合
iPhoneには「iPhone」という登録商標が付されています。これをアップル社に無断で改造し、販売する行為は、商標の品質表示機能を損なうため、商標権侵害と解釈されます。
例えば、正規品のiPhoneをそのまま正規のルートで転売する場合、商標権侵害にはなりません。しかし、脱獄やその他の不正改造を加えて販売すると、商標権侵害となる可能性があります。商標が保証する品質が変わってしまうからです。
ここがポイント
脱獄iPhoneの転売は、消尽説が適用されず、商標権侵害と判断される場合が多いです。消費者や販売業者は、商標の機能を理解し、正規品の扱いに細心の注意を払う必要があります。
(4)購入して転売する際に商標権侵害になる場合
商品を購入して転売することが一般的に問題ないとされる中、特定のケースでは商標権侵害となる可能性があります。ここでは、消尽論が通用しない代表的な3つの例を解説します。
1. 商標権者に無断で商品を改造して販売する場合
商標権者の許可を得ずに、登録商標が表示された商品を改造し販売することは商標権侵害に該当する場合があります。商品を改造することで、商標の持つ品質表示機能が損なわれ、商標権者の権利を侵害することになるからです。
2. 商標を剥がして販売する場合
意外に思われるかもしれませんが、商標を剥がす行為も商標権侵害になることがあります。
商標を無断で剥奪することは、商標が持つ「出所表示機能」や「品質表示機能」を損なう行為と判断されるためです。
商標を表示しないことで、商品の出所や品質が不明瞭になり、商標権の侵害に該当すると判断されることがあります。
3. 商品を小分けにして販売する場合
購入した商品を小分けにして販売する行為も、商標権侵害のリスクがあります。
商品を開封し小分けにすることで、商標が保証する品質が維持されない可能性があるためです。特に、内容物が変化する可能性がある商品については、商標の機能が損なわれたと考えられるため、商標権侵害と判断されることがあります。
これらのケースは、商標権侵害に該当する可能性があり、一般的な転売行為とは異なるリスクを伴います。消尽論が適用されないこれらの行為には、十分な注意が必要です。
(5)商標権と消尽説:判断はケースバイケースが重要
消尽論の議論におけるバランス
商標権が消尽するかどうかの議論は、個別のケースごとに慎重に判断されるべきです。
単に「消尽しない」と一括りにするのは行き過ぎです。実際には、商標権者の信用保護と市場取引の安定とのバランスを考慮することが求められます。
具体的な例:商品小分け販売のケース
たとえば、商標権を盾に商品の小分け販売できないとすると、ガソリンがドラム缶単位でしか販売できないといった、非現実的な状況が発生してしまいます。
これは商取引の実態にそぐわないため、商標権と消尽論をめぐる議論は、ケースごとに柔軟な対応が必要です。
ここがポイント:一律の判断は避けるべき
商標権が消尽するかどうかの議論において、商取引の現状に即して考えることが大切です。
消尽論を論じる際には、事案ごとにバランスの取れた判断が求められます。議論が極端にならないよう注意が必要です。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247