東京五輪等の大型イベントの商標は使用することができるのか

無料商標調査 次回定休日9/22

オリンピックや世界陸上選手権大会に代表される大規模な国際イベントでは、その名称やシンボルマークが商標として厳格に保護されています。今回は、これらのイベントに関連する商標の使用について、法律的な観点から解説していきます。

1. オリンピック関連商標の保護状況

オリンピックという文字そのものは、すでに商標登録がなされており、法的保護の対象となっています。これは、国際オリンピック委員会(IOC)が世界各国で商標権を取得し、その使用を管理しているためです。

五輪マークについても同様です。五つの輪が交互に重なり合うあの象徴的なシンボルは、日本国内においても商標登録第3264562号および第3235642号として正式に登録されています。

出願番号/登録番号/国際登録番号:登録3264562(商願平04-251722)
商標(検索用):
区分:41
出願人/権利者/名義人:コミテ アンテルナショナル オリンピック
出願日:1992/09/28
登録日:1997/02/24
出願番号/登録番号/国際登録番号:登録3235642(商願平05-115884)
商標(検索用):JAPAN∞五輪(図)
区分:34
出願人/権利者/名義人:公益財団法人日本オリンピック委員会
出願日:1993/11/19
登録日:1996/12/25

このマークは、オリンピックムーブメントの象徴として世界中で認知されており、その使用には厳しい制限が設けられています。

2. 商標権の効力範囲と注意点

商標権には重要な特性があります。商標権の効力は、商標登録の際に指定された商品やサービスの分野、およびそれらに類似する範囲にのみ及ぶという点です。

理論上は、五輪マークが商標登録されている商品やサービスと無関係な分野であれば、商標権侵害には該当しない可能性があります。

しかし、ここで安易に判断してはいけません。商標法による保護を受けない場合でも、別の法律による規制が存在するからです。

3. 不正競争防止法による規制

商標法の規制を受けない場合でも、不正競争防止法という別の法律による制限があります。

この法律は、著名な標章に便乗して不正な利益を得ようとする行為を禁止しています。

五輪マークのような国際的に著名なシンボルを無断で商業利用した場合、たとえ商標登録されていない分野であっても、不正競争防止法違反として差止請求や損害賠償請求の対象となる可能性があります。

これは、有名なマークの信用や顧客吸引力にただ乗りする行為が、公正な競争を阻害すると考えられるためです。

4. 正規品の確認における落とし穴

実務上、特に注意を要するのが商品仕入れの場面です。「この商品は正式に許可を得ている」という口頭での説明を信じて、五輪マークが表示された商品を仕入れるケースがありますが、これには大きなリスクが潜んでいます。

仮にその説明が虚偽であり、仕入れた商品が非正規品であった場合、販売者であるあなた自身が権利侵害の責任を問われる可能性があります。

「知らなかった」という主張だけでは、法的責任を免れることは困難です。商標権侵害や不正競争防止法違反は、故意だけでなく過失による場合も責任を問われることがあるためです。

5. 変形使用に関する誤解

「東京」などの地名を五輪マークに付加すれば自由に使用できるのではないか、という誤解も見受けられます。これは正しくありません。

地名を付加したとしても、著名な五輪マークを使用していることに変わりはなく、権利侵害のリスクは依然として存在します。

むしろ、特定の都市名と組み合わせることで、公式のイベントやスポンサーとの関連性を想起させ、消費者に誤認を与える可能性が高まるため、より問題視される場合もあります。

6. ビジネスにおける実践的な対応策

大型イベント関連の商標を取り扱う際は、以下の点を確実に実施することが重要です。

正規品かどうかの確認

まず、商品の仕入れや販売を検討する際は、必ず書面での許諾確認を行ってください。

口頭での約束や曖昧な説明に頼ることは避け、正式なライセンス契約書や許諾書の存在を確認することが不可欠です。

専門家に相談

次に、疑問がある場合は専門家に相談することをお勧めします。商標法と不正競争防止法の両面から検討が必要な場合が多く、弁理士や知的財産を専門とする弁護士のアドバイスを受けることで、リスクを事前に回避できます。

また、従業員教育も重要です。営業担当者や仕入れ担当者が、著名商標の取り扱いに関する基本的な知識を持っていれば、問題のある取引を未然に防ぐことができます。

7. まとめ

オリンピックをはじめとする大型イベントの商標は、単なる商標法だけでなく、不正競争防止法によっても保護されています。これらの標章を使用する際は、正規のライセンスを取得することが基本となります。

安易な判断や不確かな情報に基づいて行動すると、後に大きなトラブルに発展する可能性があります。知的財産権は目に見えない権利であるがゆえに、その取り扱いには細心の注意が必要です。

ビジネスの信頼性を保ち、法的リスクを回避するためにも、著名商標の使用には慎重な対応を心がけてください。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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