アクセサリー商標で「キーホルダー抜け」が増加

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1. データで見る傾向と、消費者・ブランド担当者への注意喚起

最初に結論

傾向:J-PlatPatの検索結果に基づく集計では、2020年を境に「アクセサリー(身飾品)は指定しているのに、キーホルダーは指定していない」登録が大きく増えました。

費用の盲点

第14類の同一区分内で「キーホルダー」を併記しても特許庁印紙代・維持費は変わらない一方、後から追加するには別出願が必要になり、初回と同等の費用がかかります。

実務上の背景

出願を急いで簡略化する運用や、先行商標との抵触を避けるために指定範囲を狭める実務が背景にあり、結果として権利の空白(抜け)が生じ、消費者にも品質管理上のリスクが及びます。

2. 何が起きているのか(データ)

2018年から2024年のキーホルダー抜け登録件数を示す棒グラフ。2020年に急増し2022年にピーク到達後やや減少。
J-PlatPat検索に基づく筆者集計。アクセサリー(身飾品)を含みキーホルダーを含まない登録の推移。

J-PlatPatの検索結果を基に集計したデータによると、2020年を境に状況が大きく変化しています。簡単にパッと目につく権利範囲を拾って願書を作成し、内容に漏れがないかどうかを検討することなしに、そのままパッと特許庁に願書を提出している実務が横行しているように、私にはみえます。単位時間あたりに出願する件数を増やす方向に、大きく舵を切った、ということです。

Fig.1 アクセサリーの身飾品分野でもキーホルダーの商標権権利漏れが増加している

アクセサリーの身飾品分野でもキーホルダーの商標権権利漏れが増加してい

「アクセサリー(身飾品)は含むが、キーホルダーは含まない」登録件数の推移
(筆者集計/J-PlatPat検索に基づく)

  • 2018年:2,272件
  • 2019年:2,196件
  • 2020年:3,568件(前年比 +62%)
  • 2021年:4,256件(前年比 +19%)
  • 2022年:4,444件(前年比 +4%)
  • 2023年:3,437件(前年比 –23%)
  • 2024年:3,310件(前年比 –4%)

2018–2019年の平均は2,234件、2020–2024年の平均は3,803件で、約70%増えています。2022年をピークにやや減少したものの、2024年時点でも2018–2019年の水準を大きく上回っています。「抜け」のある登録は構造的に増えたといえます。

3. なぜ「キーホルダー抜け」が起きるのか

キーホルダー抜けが発生する3つの原因をまとめたカード。出願の迅速化、抵触回避、費用構造の誤解。
出願実務における構造的な要因が権利の空白を生んでいます。※一般的な理解を目的とした概念図です

実務面では、次のような理由が挙げられます。

出願の迅速化・簡略化

目につく主要商品(アクセサリー)だけを先に願書へ記載し、早く出願を完了させる運用。

先行商標との抵触回避

指定範囲を狭くするほど衝突リスクは下がるため、形式的な合格率を優先する動機が働きやすい。

費用構造の誤解

同一区分(第14類)で「キーホルダー」を併記しても特許庁印紙代・維持費は変わらないにもかかわらず、抜けた場合は後から別出願が必要になり、実質的に倍の費用がかかるという認識が浸透していない。

4. 「アクセサリーを持っていればキーホルダーも守れる」は誤解

アクセサリー(身飾品)とキーホルダーは、第14類に属しつつも、実務上非類似の商品として扱われます。

身飾品のみを指定しても、キーホルダーへの保護は及びません。

出願後に指定商品を追加することはできないため、キーホルダーが必要になった時点で別出願となります。

5. 消費者(買い手)への注意喚起

権利の抜けは、品質管理やブランド体験に影響し得ます。たとえば

公式と無関係なキーホルダーが市場に出ても、商標上すぐに差し止められない場合がある(権利範囲外のため)。

その結果、ブランド名の入った粗悪品が出回り、正規品の評価低下につながるリスク。

消費者としてできること

正規販売ルート(直営店・公式EC・正規取扱店)の利用を基本に。

  • キーホルダーなどの周辺グッズは特に慎重に。公式ライセンスの表示や販売主体を確認。
  • 公式が発信する認証・注意喚起情報をチェック(偽造対策ラベル、正規取扱店一覧など)。

※「®」「TM」等の表示は参考にはなりますが、最終的な権利の有無は登録・指定内容に依存します。表示のみでの判別は避けましょう。

6. ブランド担当者・出願人のための実務チェックリスト

出願前・出願時に5分で確認できるポイントです。

キーホルダーやストラップなど、今後販売を広げる予定予定はないか。

将来のライン展開(限定グッズ、コラボ企画など)で周辺グッズに広がる可能性はないか。

第14類で「身飾品(アクセサリー)」と合わせて「キーホルダー」を明記しているか。

同一区分内の併記で特許庁印紙代・維持費は変わらない。後日の追加は別出願で同等費用がかかる点を把握しているか。

社内の承認フローに「周辺グッズ(ノベルティ)確認」の項目を追加しているか。

出願時の指定商品リストを1枚に整理し、将来の見直しに備えているか。

出願後は指定商品の追加(拡張)はできません。必要な範囲は最初の願書で取り切るのが鉄則です。

よくある質問

Q. アクセサリーを指定していれば、キーホルダーもある程度守られますか?

A. いいえ。両者は非類似のため、アクセサリーだけではキーホルダーは守れません。別途「キーホルダー」を指定してください。

Q. キーホルダーを後から足すことはできますか?

A. できません(出願後の追加は不可)。必要になった時点で別出願が必要で、初回と同等の費用がかかります。

7. 押さえておきたいこと

2020年以降、「キーホルダー抜け」の登録が顕著に増加。

同一区分内の併記で費用は変わらないにもかかわらず、後からの追加は別出願で二重のコストに。

出願を急ぐあまりの簡略化が将来のブランド保護に穴をあけます。最初の願書で指定商品を取り切る。これが最も確実で、かつ長期的に低コストな運用です。

ピンポイントで狭い範囲で権利申請すれば、他人の先行権利と衝突することなく権利が早く取れる。このため業者側は拒絶査定による成功報酬の取りはぐれを防ぐことができる。けれども、範囲を狭く絞ると、あとから権利補充するには最初と同じ申請費用・登録費用がかかる。この説明に納得して手続きを進めているなら、私は何もいうことはありません。

問題は、権利範囲をピンポイントに絞ったために最初から権利抜けがあり、後から権利補充するには倍額が必要になることを、最初に伝えられていたかどうか、にあると思います。

キーホルダーを追加すれば特許庁の印紙代が増えるのでパスする、というのなら理解できます。キーホルダーを追加しても特許庁に支払う印紙代は変わらないのに、なぜ、あえて権利範囲から外すのかが問題です。

なお、上記に示した件数データは特許庁J-PlatPatの検索結果をもとに筆者が集計したものです(アクセサリー〔身飾品〕を含みキーホルダーを含まない登録の推移)。実務の参考情報としてご活用ください。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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