タオルの商標権にふきんの権利が入っていない案件が急増中

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たった一語「ふきん」の書き漏らしが、いまも将来も、あなたの商標コストを”倍”にします。

1. タオルの商標権にふきんの権利が入っていない案件が急増中

ここ数年、商標公報を眺めていると違和感のある出願が目立ちます。

タオル関連の商標なのに、当然セットで押さえておくべき「ふきん」が指定商品から抜けている。

そんな案件が、統計的にも増えているのです。本稿では、なぜそんな初歩的ミスが起き、放置されると何が起こるのか、そして今日から取れる実務対策まで、専門家の視点で整理します。

2. なにが問題なのか——「後から足せない」という現実

商標出願の指定商品は、願書を出した後から勝手に追加できません。

最初の願書で指定商品の欄に「タオル」しか書いていなければ、その出願に「ふきん」を後付けする道はゼロです。やり直すには、新しい出願をもう一口立てるしかありません。

当然、負担は雪だるま式に増えます。

出願時・登録時に貼る特許印紙は2倍、名義変更や住所変更、権利移転の手数料も2倍、さらに更新費用も存続期間ごとに2倍となります。

本来なら一回の出願で「タオル」も「ふきん」も同じ料金内で指定でき、将来にわたってコストを最適化できたはずなのに、です。

3. 「なぜ入れなかったのか?」という素朴な疑問

タオル事業に乗り出す事業者が、追加料金なしで守れる「ふきん」をわざわざ外す合理的理由はありません。合理的な説明がつくとすれば次の構図です。

社内担当者は「タオルの商標を」と指示され、そのまま手続代行者へ丸投げします。
代行側も言われた語をそのまま願書に記載します。

どこにも「指定商品を事業実態に合わせて網羅したか」を検算する専門家チェックが入っていません。

この”穴”が、後戻りできないコスト増として、確実に事業者側に跳ね返ります。

4. 2020年から何が起きたのか——数字が語る状況

各年度別の商標権の中でタオルを権利範囲に含むがふきんが含まれない権利取得数の推移を示すグラフ

Fig.1 各年度別の商標権の中でタオルを権利範囲に含むがふきんが含まれない権利取得数の推移を示すグラフ

タオルを含むのに、ふきんが含まれていない登録数の推移は次の通りです。2019年には1,910件だったものが、2020年には2,818件、2021年には3,317件、2022年には3,264件、2023年には2,537件、2024年には2,489件となっています。

年別推移(タオル商標に「ふきん」未包含の登録数)
登録数(件) 前年比(件) 前年比(%)
2019 1,910
2020 2,818 +908 +47.5%
2021 3,317 +499 +17.7%
2022 3,264 −53 −1.6%
2023 2,537 −727 −22.3%
2024 2,489 −48 −1.9%
ピーク 2021年(3,317件)

※前年比は小数点第1位で四捨五入。棒の長さは、最大値(2021年:3,317件)を100%として相対表示しています。

通常であれば、社内・代理人・審査のフィードバックで漏れは自然に減衰します。

しかし、2020年以降は明確な増勢を示し、その後も高止まりしています。これは「誰も指定商品をきちんと点検していない」ことを強く示唆します。

5. コストは”いま”も”未来”も倍化する

もう少し具体的にイメージしてみましょう。「タオル」で一口、「ふきん」で一口。二つに割れた出願は、その瞬間から一生二口分の面倒を背負います。

更新・名義変更・住所変更・管理番号・委任状・請求書、すべてが二重化します。

さらに、ふきんを後追い出願しようとした時点で他人に先取りされているリスクも現実的です。

取り戻しには数十万円規模の追加費用がかかっても、必ず取り返せる保証はありません。

6. よくある誤解を正す

「タオル」と「ふきん」は別物だから最初はタオルだけでいいのではないか。そう考える方もいるでしょう。

しかし実務的には、願書提出前であれば、同じ出願の中に並記しておくのが合理的です。将来の品ぞろえや販路拡張を見越し、同料金の範囲で広めにカバーするのが定石です。

あとで入れれば継ぎ足せばいいと考える方もいます。しかし後足しは不可能です。必要になった時点で別出願、つまり二重の費用と手間が確定します。

また、広げると審査に落ちやすくなるのではないかという懸念もあります。

無駄に広げるのは不要ですが、事業実態に即した必須の同列商品を含めることは基本です。

むしろ、極端なピンポイント出願は短期の楽と引き換えに長期のリスクを抱えます。

背景にある「顧客不在のインセンティブ」

権利範囲を細かく分割すればするほど、出願件数は増え、手数料は掛け算になります。指定商品が狭ければ先行商標との衝突も減り、審査も通りやすくなります。

一方で、それは、顧客の将来コストと権利の取りこぼしを犠牲に成り立つ”効率化”です。短期の合格率や件数を誇る前に、クライアントの資産価値を最大化するという本来目的に立ち返るべきでしょう。

7. 今日からできる実務対策

まず、事業地図を先に描くことです。現在の主力であるタオルだけでなく、周辺必須品であるふきん等を棚卸しします。販路・セット販売・OEM計画を踏まえ、最低限の同列商品を洗い出します。

次に、願書は”提出前”に拡げます。追加料金のかからない範囲で、必要十分な指定商品を同一出願内に並べます。文言の選び方一つで守れる範囲は変わりますから、後足し不可を前提に、漏れのない文言設計を専門家のレビューを受けながら行いましょう。

そして、既存権の健康診断も重要です。すでに登録済みのタオル商標がある事業者は、指定商品欄に「ふきん」が入っているか至急チェックしてください。抜けていれば、競合の出願状況も確認し、最適手順を検討します。

8. まとめ——「一語の先回り」が未来の損失を消す

商標実務の鉄則はシンプルです。必要なものは、提出前に、同じ出願で、取り切る。

タオルに「ふきん」を添えるのは、単なる”ついで”ではなく、将来の権利維持費・管理手間・奪還コストを劇的に減らす経営判断です。もしあなたの登録証や出願書類に「ふきん」が見当たらないなら、それは今この瞬間に解消すべき経営リスクです。一語の先回りが、数年後のあなたを守ります。

思い当たる担当者・経営者の方は、この記事をぜひシェアしてください。

同じミスを、もう誰にも繰り返してほしくありません。必要なら、あなたの事業計画に沿った指定商品設計(漏れのない文言策定)からご相談ください。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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