1.1968年はどんな年だったのか
1964年の東京オリンピックと1970年の大阪万国博覧会の間であって「いざなぎ景気」(1965年〜1970年)と呼ばれた好景気の一方で、世界ではベトナム戦争が続いており、国内でも学生運動やデモが起こった年でした。
ここで1968年に起こった出来事をいくつか挙げてみましょう。
(1)三億円事件
東京都府中市で起こった現金強奪事件で、偽の白バイ警官によって東芝(当時は東京芝浦電気)従業員のボーナス約3億円を乗せた現金輸送車が奪われたというものです。
ドラマや映画にもなっているので、みなさま一度は耳にされたことがあるでしょう。
なお時効が成立したため未解決事件となっています。
(2)オリンピック
冬のオリンピックがフランスのグルノーブルで、夏のオリンピックがメキシコで開催されたのも1968年です。なおメキシコオリンピックの前の大会が1964年の東京オリンピックです。またこの頃は夏と冬のオリンピックが同じ年に開催されており、夏と冬のオリンピックの開催時期がずれるようになったのは、1994年のリレハンメルオリンピック(ノルウェー)からです。
(3)霞が関ビルディングの完成
特許庁の近くにある霞が関ビルディングが完成したのも1968年です。高さ147m、日本初の超高層ビルです。
なお法律に携わる者としてご紹介しなければならないのは、この年に重要な憲法判例になっている2つの事件が起こっています。
ひとつは「尊属殺人罪」に関する「尊属殺人被告事件」の対象となった事件、もうひとつは報道の自由に関する「博多駅テレビフィルム提出命令事件」の対象となった事件です。
2.50歳の同級生たち
ではここで「ボンカレー」の同級生たちをご紹介しましょう!
(1)出前一丁
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第847788号
- 権利者:日清食品ホールディングス株式会社
- 出願日:1967年12月27日
- 登録日:1970年3月3日
- 指定商品:
第30類「穀物の加工品」
「カレー」とともに日本人の国民食と言われる「ラーメン」。その中で「出前一丁」は、しょうゆ味のスープにごまラー油が付いていることが特徴です。
パッケージに描かれた、岡持ちを持った「出前坊や」やCMのフレーズも人気ですね。
なお商標の世界ではインスタントラーメンのような「スープ付きのラーメンの麺」は「穀物の加工品」に入ります。
また、世界初のインスタントラーメンである「チキンラーメン」も同社の商品です。発明者である安藤百福氏のチキンラーメン開発にまつわる話は特許庁のホームページでも紹介されています。
「出前一丁」も「ボンカレー」と同様、発売より前の1967年に出願されていますが、これは「チキンラーメン」のときに類似品による問題が起こったことも関係しているのではないでしょうか。
特許庁サイト
マンガ「知財の歴史」
http://www.jpo.go.jp/ torikumi/hiroba/files/ manga_chizai/all_201711.pdf
(2)人生ゲーム
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第919585号
- 権利者:株式会社タカラトミー
- 出願日:1968年10月11日
- 登録日:1971年8月9日
- 指定商品:
第28類「ゲームおもちゃ」
「人生ゲーム」、みなさんも一度はご家庭で遊んだことがあるのではないでしょうか。
アメリカで売られていたボードゲーム「The Game of LIFE」を日本語に訳して1968年に当時のタカラから発売されたのが「人生ゲーム」です。
そういえば「人生ゲーム」で使われるお金はドルですが、アメリカ発祥だからなのですね。
50年の歴史の中で「人生ゲーム」はリニューアルされており、現在は7代目(2016年〜)が発売されています。
<参照>
株式会社タカラトミーサイト
人生ゲーム特集
http://www.takaratomy.co.jp/ products/jinsei/50th/
(3)少年ジャンプ
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第1427071号
- 権利者:株式会社集英社
- 出願日:1975年7月10日
- 登録日:1980年7月31日
- 指定商品:
第9類「映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」
第16類「印刷物,書画,写真,写真立て」
株式会社集英社が発行している少年向け漫画雑誌です。ここからたくさんの人気漫画が生まれています。今は「週刊少年ジャンプ」ですが、創刊当初は月2回発売の「少年ジャンプ」だったそうです。
私も子供の頃に読んでいました。当時は発売されるとその日のうちに売り切れてしまうため、予約していたのを覚えています。
「少年ジャンプ」といえばこの「海賊マーク」。今でもタイトルロゴに使用されています。
3.同級生たちによるコラボレーション
今回挙げた3つの商品は、50周年を記念し、コラボレーションの企画を打ち出しています。
「出前一丁」と「人生ゲーム」との間では、オリジナルの「人生ゲーム」がセットでついてくる「出前一丁」限定パッケージを販売するキャンペーンが開催されました。このオリジナルの「人生ゲーム」は「出前一丁」のパッケージに描かれている「出前坊や」がラーメンの道をきわめていくストーリーだそうです。
また詳細はまだ発表されておりませんが、「少年ジャンプ」と「人生ゲーム」のコラボレーションも決定しているとのことです。楽しみですね。
<参照>
日清食品株式会社サイト
https://www.nissin.com/ jp/news/6575
株式会社集英社サイト
『週刊少年ジャンプ50周年』ニュース一覧
https://sp.shonenjump.com/ j/50th/news/
4.まとめ
異業種間のコラボと言えば、「あずきバー」の井村屋株式会社と「キングファイル」の株式会社キングジムが、相手の商品をモチーフにした商品を作って話題になりましたね。
「物言わぬセールスマン」と評されることもある商標ですが、長く使い続けて消費者の間に「信用の証」として知れわたってくると、同じように信用のある異業種と協力して、相手の顧客層に自社商品をアピールすることができるのです。このように、信用があると認められた商標は、Win-Winの関係が築ける素晴らしいツールなんですね。
それではまた。
ファーイースト国際特許事務所
弁理士 杉本 明子
03-6667-0247