商標と「ボンカレー」50年の歴史

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1.日本人とカレーの出会い

「カレーといえばインド!」が連想されますが、「カレー」とは特定の料理を指すわけではなく、インドを中心とした熱帯・亜熱帯地方での香辛料をたくさん使ったスパイシーな料理の総称です。

そんなカレーがイギリス経由で日本に伝わったのは明治時代、当時の「西洋料理指南」という料理の本にカレーのレシピが紹介されているそうです。

なお日本のカレーはとろみがありますが、インド料理屋さんで出てくるカレーはサラサラしています。これは日本にカレーを伝えたイギリスで小麦粉を使ってとろみをつけるアレンジがなされ、それが日本に伝わったためです。

なお平成22年4月1日現在の数字ですが、日本人が1ヶ月間で食べるカレーの量はというと、ルウで作ったカレー3.43皿+レトルトカレー0.44皿+それ以外0.18皿で、合計すると1人が毎月4.05皿食べている計算になります。
さすが国民食ですね!

<参照>
全日本カレー工業協同組合サイト
http://www.curry.or.jp/whats/index.html

農林水産省サイト
「カレーはどこから来たの?」
http://www.maff.go.jp/j /agri_school/a_menu/curry/01.html

2.「ボンカレー」の歩み

関西でカレー粉や固形のカレーを製造販売していた会社を引き継いだ大塚食品が「他社とは違うカレーを作ろう」ということで、アメリカの軍用携帯食である真空パック入りソーセージからヒントを得て考えたのが家庭向けレトルトカレーです。当時カレーはいわゆる「洋食のごちそう」で、カレー粉や缶詰で販売されるのがメインだったのです。ここから「一袋が一人前でお湯で温めるだけで食べられ、かつ誰でも失敗しないカレー」の開発がはじまったのです。

当初から「常温で長期保存可能」「保存料不使用」を絶対条件にしていた「ボンカレー」。そのためには高温で殺菌する必要があります。包材も設備もない状況からのスタートでしたが、点滴液の殺菌技術を応用してレトルト釜を自作してまで開発を進めていったそうです。化学品や薬の会社を有するグループならではのアイデアですね。

そして、パウチ包材の強度や包材及び中身の耐熱性、殺菌条件等の様々なテストを繰り返すなどの試行錯誤の結果、家庭向けレトルトカレーである「ボンカレー」が誕生し、世界で初めての市販されたのです(1968年2月12日発売)。ただしこのときは阪神地区に限定しての販売でした。

その後、強度等の点で課題があった「半透明のパウチ」から現在でもおなじみの「アルミパウチ」に変えることで、流通過程での破損を防ぎかつ賞味期限を格段に伸ばすことができたため、翌年1969年5月にはついに全国で販売されるようになりました。

そんなロングセラーの「ボンカレー」ですが、発売当初は、高価なことと、「保存料不使用」「お湯だけで食べられる」という商品の良さが信じてもらえず、苦戦したようです。そこでまずは得意先に試食してもらうところから始め、1973年にはついには年間1億食を売り上げる人気商品に成長しました。

なお今では集めている方も多い「ホーローの看板」は試食会の際の宣伝用だったのです。

3.「ボンカレー」の商標

そんな「ボンカレー」ですが、もちろん商標登録されています。

ボンカレーの文字登録商標
特許庁の商標公報より引用

  • 商標登録第961090号
  • 権利者:大塚食品株式会社
  • 出願日:1968年1月24日
  • 登録日:1972年4月28日
  • 指定商品:
    第29類「カレーライスのもと」

出願日にご注目!この商標は何と関西地区での販売と同じ1968年、しかも発売前の1月に出願されているのです。販売に先駆けて出願するなんて「ボンカレー」への力の入れようが感じられます。

なおご存知の方も多いかもしれませんが、この「ボンカレー」というネーミングは、フランス語で「良い、おいしい」を意味する「BON」と英語の「CURRY」を組み合わせた造語です。短くて覚えやすく、かつ「おいしいカレー」という意味が込められた素敵なネーミングですよね。

ボンカレーのキャラクター「ボン王子」
特許庁の商標公報より引用

  • 商標登録第5855208号
  • 権利者:大塚食品株式会社
  • 出願日:2015年12月18日
  • 登録日:2016年6月3日
  • 指定商品:
    第29類「レトルトパウチされたカレー,カレーのもと,即席カレー」

「ボンカレー」にはかわいいキャラクターもいます。「ボン惑星」で生まれた「ボン王子」です。

ボン王子も複数のポーズで商標登録されています。

ここでは2つほどご紹介いたしましたが、「ボンカレー」に関する商標は他にもたくさん登録されています。

4.進化する「ボンカレー」

家庭向けレトルトカレーのパイオニアである「ボンカレー」ですが、時代とともに進化し続けています。

例えば2003年には、箱ごと電子レンジで温め可能なパッケージを採用し、現在全国販売している「ボンカレー」シリーズは全て電子レンジで温めて調理できる商品になっています。確かに湯せんするにはお鍋でお湯を沸かすところから始めますのでちょっと時間もかかりますし洗い物も増えて面倒ですが、パッケージのまま電子レンジで温められればすぐ食べられますので、時間と手間を減らすことができて助かりますね。

また、お母さんたちの意見を採用して開発された「こどものためのボンカレー」や、共働き世代をターゲットにして、時短で贅沢な味を楽しめるように開発された「ボンカレー GRAN」など、顧客のニーズに合わせて様々なラインナップをそろえています。

<参照>
大塚食品株式会社サイト
ボンカレーの歴史
http://boncurry.jp/history/

商品紹介
http://boncurry.jp/lineup/

5.まとめ

「ボンカレー」が50年間も愛されているのは、もちろんおいしいからですが、それだけではないと思います。例えばパッケージのデザイン、時代に応じた商品自体に関する工夫、そして「ボンカレー」という素敵なネーミングを商標登録して長年使い続けてきたことも含めて、50年も続く人気商品になり得たのではないでしょうか。

ロングセラー商品の影には商標の力もあることを心に留めていただければうれしいです。

それではまた。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 杉本 明子
03-6667-0247

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