1. ホログラム商標について
ホログラム商標の特徴とは?
ホログラフィーなどの方法で文字や図形が変化する商標をホログラム商標と呼びます。ホログラフィーは光の干渉性を利用して、立体的な画像を平面状のフィルムなどの媒体に記録し、再生する技術です。
東レ株式会社の商品に使用されているホログラム商標(商標登録第5948330号)を例に見てみましょう。視点を変えることで、映し出される図柄や光沢が変わります。角度によって視覚情報が変化することが、この商標の大きな特徴となっています。
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
新しいタイプの商標
ホログラム商標は商標法の改正によって新たに認められた商標の1つです。新しいタイプの商標には、色彩のみからなる商標、音商標、動き商標、位置商標があります。
位置商標を除いたこれらの商標には継続的使用権が認められています。制度開始前から使用していた場合に限り、これまでの業務範囲内での使用については商標登録をしなくても使用を続けることができます。
2. 登録されている商標を調べる方法
2015年4月1日から、ホログラム商標をはじめとする新しいタイプの商標の受付が開始されました。初日だけで481件の出願があり、企業や個人の関心の高さがうかがえる結果となりました。
現在登録されている商標を確認するには、独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する特許情報プラットフォームで検索します。検索手順は次のとおりです。
トップページから検索画面へ

特許情報プラットフォームのトップページから「商標」を選択し、「商標検索」をクリックします。
商標のタイプで検索

画面下部にある「検索オプション」の欄を開き、「商標のタイプ」欄で、調べたい商標の種類にチェックを入れ、検索ボタンを押します。するとヒット件数が表示され、新しいタイプの商標それぞれを個別に調べることができます。
商標の詳細情報
一覧表示ボタンを押すと検索結果一覧が表示されます。出願/書換/登録番号をクリックすると、商標の詳細情報を確認できます。
JCBのカード(商標登録第5908592号)を例に見てみましょう。権利者は株式会社ジェーシービーとなっています。
商標見本
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
商標見本では、図柄が変化する様子が示されています。実際のカードでは照明の条件によって見え方が異なりますが、正面から見た場合、やや左から見た場合、さらに左から見た場合で図柄が変化することが確認できます。
3. ホログラム商標を出願するために
願書の作成

新しいタイプの商標を出願する際は、通常の願書作成時より詳細な説明が必要になります。ホログラム商標の願書記載について、各項目の記入方法を説明します。
特許印紙
特許印紙を貼付し、金額をその下に記入します。
書類名
「商標登録願」と記載します。
あて先
「特許庁長官 殿」と記載します。
商標登録を受けようとする商標
商標の見本を記載します。ホログラフィーなどの方法で商標の文字や図形が変化・移動する状態を特定できるように、図や写真で記載します。変化の様子を示す指示線や文字なども記入できます。
ホログラム商標
新しいタイプの商標では、この欄に商標のタイプを記載します。ホログラム商標は立体的形状でも認められ、ホログラムが貼り付けられた物を登録することもできます。その場合は「ホログラム商標」と記載します。商標のタイプを2つ記載することはできないため、立体商標の記載は不要です。
商標の詳細な説明
その商標が特定できる説明を記載します。ホログラムは見る角度を変えることで、輝いて見えたり、立体的に見えたり、別の図柄が見えたりと様々な視覚効果が得られます。この欄では商標の文字や図形などの説明に加えて、変化する状態の詳しい説明を記載します。
指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分
商標の区分と指定商品(指定役務)の内容を記載します。
商標登録出願人
個人の場合は住民票の住所と氏名、法人の場合は登記された住所と会社名、代表取締役名を記載します。
手数料の表示
予納台帳の番号と納付金額を記載します。納める金額は数字のみとし、円やカンマは記載しません。
費用と更新について
出願時や登録時にかかる特許庁の印紙代は、ホログラム商標を含む新しいタイプの商標でも通常の商標登録と同じです。
商標出願印紙代は3,400円+区分数×8,600円となります。商標登録印紙代は、一括納付の場合は区分数×32,900円(10年分)、分割納付の場合は区分数×17,200円(前期・後期5年ごと)です。更新登録申請印紙代は、一括納付で区分数×43,600円(10年分)、分割納付で区分数×22,800円(前期・後期5年ごと)となっています。
権利が続く期間は登録日から10年であり、何度も更新できる点も通常の商標登録と同様です。
4. まとめ
ホログラム商標は、ほかの新しいタイプの商標と比べて出願・登録件数が少ない状況です。クレジットカードや商品券だけでなく、ホログラムを貼り付けた物も商標として認められます。
出願手続きは複雑に見えるかもしれませんが、商標として保護する価値がある場合は、出願を検討することをおすすめします。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247