索 引
1. 商標登録で守られる範囲
ポケットモンスターのブランドは、ゲームだけでなく、アプリ、玩具、衣料品、食品などへ展開されています。こうしたブランドを商標で守るときは、名称やロゴを一つ登録すれば全分野を一括して独占できるわけではありません。
商標権の範囲は、登録された商標と、願書に記載した指定商品・指定役務の組合せを基礎に決まります。同じ「ポケットモンスター」という文字でも、ゲームソフト、玩具、被服など、事業に必要な商品・役務を検討して出願することになります。
文字商標は名称そのものを、図形商標はロゴの具体的なデザインを中心に守ります。新作名、サービス名、周辺機器の名称も別の商標になり得ます。事業の展開に合わせて複数の登録を組み合わせることが、長く使うブランドの保護につながります。
2. Pokémon GOの出願と登録
「Pokémon GO」と周辺機器名の「Pokémon GO Plus」は、いずれも2015年9月8日に日本で出願されています。登録情報を見ると、同じ日に出願された商標でも、指定された区分や登録日は同一ではありません。
日本でアプリの配信が始まったのは、上記の「Pokémon GO」の登録日より前です。この時系列から分かるのは、少なくとも登録完了を待って配信したわけではない、という点です。日本での配信時期と審査の進行に因果関係があったとまでは、登録情報だけから判断できません。
出願中は商標権がまだ発生していませんが、先願として審査上の順位を確保できます。出願公開後の第三者による使用については、商標法13条の2が定める要件を満たせば、設定登録後に金銭的請求を検討できる場合もあります。ただし、登録後の商標権と同じ差止権を出願時から行使できる制度ではありません。
登録経過や現在の権利状態は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で確認できます。

検索結果は日々更新されます。登録番号から詳細画面を開き、商標、指定商品・指定役務、経過情報、権利者、存続期間を個別に確認するのが確実です。
3. 拒絶理由通知を受けたときの対応
商標出願は、提出すれば必ず登録されるものではありません。審査官が登録できない理由を見つけた場合、拒絶理由通知が届き、出願人には意見書や手続補正書を提出する機会が与えられます。
指定商品・指定役務を見直す
先行商標と抵触する商品・役務が一部に限られるなら、その部分を削除または減縮して拒絶理由を解消できる場合があります。もっとも、出願後に新しい商品・役務を追加して権利範囲を広げる補正はできません。
意見書で判断を争う
引用された商標と外観、称呼、観念が異なることや、商品・役務が類似しないことを、取引の実情も踏まえて説明します。登録例があるという事実だけで結論が決まるわけではなく、今回の商標と指定商品・指定役務に即した主張が要ります。
商標そのものの差し替えはできない
出願したロゴを別のデザインへ変更して抵触を避ける方法は、通常の補正では認められません。商標の要旨を変える修正になるためです。新しい名称やロゴで進めるなら、原則として別の出願を検討します。
4. 発表前の出願と情報公開
商品名やサービス名は、公表前に出願しておくのが基本です。発表後まで出願を延ばすと、その間に第三者の出願が入り込むおそれがあるためです。
一方、日本の商標出願は出願公開制度の対象です。公報に名称が掲載されれば、正式発表前でも新作名を推測されることがあります。「ポケットモンスター サン」「ポケットモンスター ムーン」のようなタイトルが関心を集めた例は、ブランド保護と情報管理を同時に考える必要を示しています。
候補名をむやみに多数出願すれば機密性が高まるわけではありません。使用する予定、先行商標調査、出願費用、海外での保護を含め、発表計画に合わせて出願時期を決めます。
5. 商品展開に合わせた権利の組み立て
ポケットモンスターに関する登録には、名称、ロゴ、作品名、周辺機器名などがあります。次の2件は、異なる時期と商品分野で行われた登録の例です。
登録4097791は第14類の商品を指定しています。著名な名称であっても、登録商標の効力を検討するときは、どの商品・役務が指定されているかを省略できません。
登録6699948は複数の区分にまたがっています。事業分野が広がれば、新しい商品・役務を対象とする出願を重ねる場面が生じます。古い登録の指定商品へ後から商品を足すことはできないため、展開前の棚卸しが欠かせません。
「ポケットモンスター」を含む登録件数は、検索語、称呼検索、権利状態、集計日によって変わります。固定した件数だけを根拠に保護の強さを判断せず、必要な商標と商品・役務の組合せを登録番号ごとに調べてください。
6. よくある質問
Q1.有名なキャラクター名なら、登録がなくても全商品を守れますか?
一律にはいえません。周知・著名な表示には商標法や不正競争防止法による保護が問題になる場合がありますが、立証や要件が異なります。事業で使う名称やロゴは、必要な商品・役務を指定して登録するのが基本です。
Q2.出願した日から商標権を行使できますか?
商標権が発生するのは設定登録の日です。出願には先願の順位を確保する意味がありますが、登録後と同じ差止請求を直ちに行えるわけではありません。
Q3.拒絶理由通知が届いたら名称を少し変えて補正できますか?
商標そのものの要旨を変える補正はできません。指定商品・指定役務の減縮や意見書で対応できるかを検討し、名称やロゴを変えるなら別出願を考えます。
Q4.J-PlatPatの検索件数が前回と違うのはなぜですか?
公報の追加、権利状態の変化、検索条件の違いが考えられます。検索日と条件を記録し、必要な案件は登録番号で詳細を確認してください。
Q5.日本の登録だけで海外展開も守れますか?
原則として守れません。商標権は国・地域ごとに成立します。展開国への直接出願やマドリッド協定議定書による国際出願を、公開計画より前に検討します。
7. まとめ
ポケットモンスターのブランドは、名称やロゴと、事業で扱う商品・役務を組み合わせた複数の商標登録によって支えられています。登録件数の大きさより、実際の事業に必要な組合せが押さえられているかを見ることが肝心です。
新作名を公表する前の出願、拒絶理由通知への対応、海外での権利確保までを一つの計画として扱えば、ブランド展開と権利の空白を減らせます。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
参考資料
- e-Gov法令検索「商標法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127
- 特許庁「商標審査基準」 https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/index.html
- 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat) https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
- 特許庁「マドリッド協定議定書による国際出願について」 https://www.jpo.go.jp/system/trademark/madrid/seido/madopro_beginner.html
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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘
