1. ポケモンGoのリリースが日本で遅かった理由
ポケモンGoは2016年7月6日にオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3カ国で先行リリースされました。アメリカ国内では、リリース開始からわずか14時間で、iPhone向けアプリの売上げランキング(無料ゲーム部門)で1位を獲得しました。
人気を集めたポケモンGoですが、ポケモン発祥の国である日本でのリリースは2016年7月21日となりました。他国よりも約2週間遅れての配信となった背景には、いくつかの要因があったと考えられています。
インターネット上では様々な憶測が飛び交いましたが、そのひとつに「ポケモンGo」のロゴの商標登録が完了していなかったという見解がありました。実際、商標登録が海外リリースまでに間に合わなかった事実があります。
「ポケモンGo」のロゴは2015年9月8日に商標出願されました。商標として登録することで、そのロゴの独占的な使用権を確保する狙いがありました。その後、2016年8月5日に正式に登録され、登録商標となりました。
商標登録は出願から登録までに通常5カ月程度の期間を要します。しかし「ポケモンGo」のロゴ商標登録は約1年という長期間を要しました。
この遅延の主な原因は、2016年1月22日に特許庁から拒絶理由通知が発行されたことにあります。「他人の先行登録(出願)商標と類似している」(商標法4条1項11号および8条1項)という理由で、一時的に登録が認められない状況となりました。
拒絶理由通知とは、特許庁の審査において審査官が登録を認められないと判断した場合に、その理由を明示する書面です。この通知に適切に対応しなければ、商標登録は実現しません。そのため、出願人は以下のような対応策を講じることができます。
補正による対応
商標出願の記載内容を修正することで拒絶理由を解消する方法です。指定商品や役務の範囲を調整したり、商標の態様を変更したりすることで、先行商標との類似性を回避できる場合があります。
商品・役務の説明による対応
商品や役務の内容を詳細に説明することで、先行商標との差異を明確化する方法です。パンフレットやチラシ、写真や図表を添付して具体的に説明することで、審査官の理解を得られる可能性があります。
意見書による対応
審査官の指摘に対して論理的な反論を行う方法です。過去の登録例や判例を引用しながら、自己の商標が登録されるべき正当な理由を主張します。
「ポケモンGo」のロゴ商標登録では、意見書による対応が選択されました。さらに出願人の名義変更も実施され、2016年8月5日に無事登録が完了しました。
日本でのポケモンGoのリリースは2016年7月21日でしたので、実際には商標登録の完了を待たずにサービスが開始されたことになります。商標登録の遅れがリリース時期に影響を与えた可能性はありますが、それが唯一の要因ではなかったと考えられます。
商標に関する詳細な情報は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で確認できます。

簡易検索で「商標」を選択し、「ポケモンゴー」と入力することで、関連する商標情報を閲覧できます。特許情報プラットフォームは、特許庁のホームページから無料でアクセス可能です。
2. 商標出願により発売前に新作名が判明することも
新商品の名称は、多くのファンにとって大きな関心事です。企業は新しい商品や役務の名称を保護するため、市場投入前に商標出願を行うことが一般的です。この商標出願情報から、発売前の新作名が推測される場合があります。
ポケットモンスターシリーズでも、新作の発売前に商品名の商標登録を行うことで、ブランドの保護を図っています。
任天堂株式会社が「ポケットモンスター サン」と「ポケットモンスター ムーン」の商標を出願したことで、ファンの間で新作への期待が高まりました。商標出願の情報が公開されたことで、新作のタイトルがこれらの名称になるのではないかという予想が広まったのです。
その後、任天堂株式会社は正式に「ポケットモンスター サン」と「ポケットモンスター ムーン」の発売を発表しました。ファンの予想は的中し、商標出願が新作発表の前触れとなった形です。
これらの商標は日本国内だけでなく、「PoK’eMoN SUN」、「PoK’eMoN MOON」としてヨーロッパでも登録されています。グローバルな商標戦略により、世界各地でブランドの保護が図られているのです。
商標に関する詳細な情報を知りたい場合は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で「商標」を選択し、「ポケットモンスター サン」と入力することで、関連する商標情報を確認できます。
3. 「ポケットモンスター」を含む商標について
ポケットモンスターは現在、世界的なコンテンツとして認知されています。「ポケットモンスター」に関連する商標がどの程度存在し、どのような分野で保護されているのか見ていきましょう。
「ポケットモンスター」の称呼を含む商標の現状
「ポケットモンスター」という読み方(称呼)を含む登録商標は75件存在します。これらの商標は、様々な商品や役務の分野で登録されており、ブランドの包括的な保護が図られています。
最初に登録された商標は、1996年8月9日に出願され、1997年12月26日に登録された「ポケットモンスター/ポケモン」という文字商標です。この商標は第14類として登録されており、貴金属製食器類、貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱、貴金属製靴飾り、貴金属製コンパクト、貴金属製喫煙用具、身飾品などの商品が指定されています。
最近では、2022年9月1日に出願され、2023年5月22日に登録された「ポケットモンスター」という文字商標があります。時代とともに、新たな商品や役務の分野でも商標登録が行われ、ブランドの保護範囲が拡大していることがわかります。
商標登録は単に名称を保護するだけでなく、ビジネス展開の基盤となる重要な知的財産権です。ポケットモンスターの場合、ゲームソフトだけでなく、玩具、文具、衣料品、食品など幅広い分野で商標登録が行われています。これにより、偽造品や類似品からブランドを守り、消費者に本物の商品を提供できる体制が整えられています。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で「商標を探す」を選択し、「ポケットモンスター」と入力することで、より詳細な商標情報を確認できます。登録された商標の詳細な内容や、指定された商品・役務の範囲を調べることができます。
このような商標戦略により、ポケットモンスターというブランドは法的に保護され、世界中のファンに安心して楽しめるコンテンツとして提供され続けているのです。商標登録は、創作者の権利を守るとともに、消費者の利益も保護する重要な制度として機能しています。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247