植物を商標として保護する方法:商標法と種苗法をわかりやすく解説

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(1)植物に関する権利を守るには?

(1−1)商標法による保護

植物を法的に保護するには、主に「商標法」と「種苗法」という2つの法律があります。それぞれの特徴や適用方法について詳しく解説します。

1. 商標法による保護

商標法では、植物に関連する商品やサービスを特定の「区分」として登録することで、その名称やブランドを保護します。植物に関連する商標がよく登録されるのは以下の区分です:

第31類:「果実、野菜、苗、苗木、種子類」など

例:球根、苗、種まき用の種子

実際の例を見てみましょう。

商標名:盛岡りんご(商標登録第5295475号)

  • 権利者:盛岡市
  • 区分:第31類「岩手県盛岡市産のりんご、苗木、花、盆栽、花輪」
  • 他に第29類(冷凍果実や加工野菜)なども関連区分として登録可能です。

このように、植物やその加工品を商標として登録することで、名称やブランドの独占的な利用権を得られます。

2. 種苗法による保護

一方で、新しい植物品種そのものを保護したい場合は「種苗法」が適用されます。

種苗法とは?

種苗法は新品種を作り出した育成者の権利を守るための法律です。新品種の開発には多大な時間や技術が必要ですが、その成果を他者に無断で利用されることを防ぐための法的枠組みが用意されています。

育成者権とは?

新品種を品種登録すると「育成者権」という知的財産権が発生します。この権利により、以下が可能です:

  • 無断での生産・販売の差止請求
  • 損害賠償の請求

育成者権を取得することで、新品種の利用を独占的にコントロールできます。

3. 商標法と種苗法の名称に関する注意点

商標登録と品種登録の間には、名称に関する規定があります。

  • 商標登録しようとする名称が、すでに品種登録された名前と同一または類似している場合、その商標登録はできません。
  • 逆に、品種登録を目指す種苗の名称が既存の商標と同一または類似している場合も、登録が拒絶されます。

さらに、商標登録出願者と育成者権保持者が同一人物であっても、これらの名称規定に違反する場合は登録が認められないため、注意が必要です。

ここがポイント

植物を保護する方法は、商標法と種苗法のいずれを活用するかによって異なります。ブランドを守りたい場合は商標法、新品種そのものを守りたい場合は種苗法を選択しましょう。

特に名称の重複や類似には注意が必要です。商標や品種登録を検討する際は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

(2)商標登録と品種登録の違い:2つの制度を徹底比較

商標登録と品種登録の違い:2つの制度を徹底比較

商標登録と品種登録はどちらも法的な権利を守るための重要な制度ですが、その目的や手続き、権利の保護期間には大きな違いがあります。ここでは、それぞれの特徴を詳しく解説します。

1. 出願から登録までにかかる時間

商標登録の場合

  • 管轄機関:特許庁
  • 出願件数:年間10万件以上
  • 審査期間:およそ半年

商標登録は特許庁の商標審査官による審査が行われます。件数が多いため順番待ちが発生しますが、比較的短期間で審査が完了します。

品種登録の場合

  • 管轄機関:農林水産省
  • 審査内容:植物の特性調査
  • 審査期間:2~3年程度(種類によってはさらに長期間)

品種登録は、植物の特性や新規性を確認するための詳細な審査が必要で、商標登録よりもはるかに時間がかかります。

2. 権利の保護期間の違い

商標登録の場合

  • 存続期間:登録日から10年
  • 更新の可否:何度でも更新可能

商標権は更新手続きを行えば、権利を永続的に保持できます。ブランドや名称を長期間保護したい場合に適しています。

品種登録の場合

  • 存続期間:登録日から25年または30年
  • 25年:一般的な植物
  • 30年:木本性植物(果樹、林木、観賞樹など)

品種登録の権利は一度取得すると更新できません。期間が終了すると育成者権は消滅します。

ここがポイント:商標登録と品種登録の違い

項目 商標登録 品種登録
管轄機関 特許庁 農林水産省
出願から登録までの期間 約半年 2~3年(種類によって異なる)
存続期間 10年(更新可能) 25年または30年(更新不可)
目的 商品・サービス名の保護 新品種そのものの保護

商標登録はブランドや名前の保護に、品種登録は新しい植物の特性や開発者の権利保護に適した制度です。それぞれの特性を理解し、必要に応じて適切な制度を選択することが重要です。

(3)商標登録と品種登録の違いを活用した戦略とトラブルへの対応策

商標登録と品種登録の制度は、それぞれ異なる特徴を持つため、これを上手に活用することで権利の保護を強化できます。しかし、制度の違いを悪用されるとトラブルに発展する可能性もあります。ここでは、これらの戦略と注意点を詳しく解説します。

1. 権利の保護期間の違いを活用した戦略

育成者権の限界と商標権の補完

育成者権の特徴:

品種登録によって発生する育成者権は、登録日から25年(木本性植物は30年)で消滅します。この期間を過ぎると登録品種は誰でも自由に利用できるようになります。

リスク

育成者権が消滅すると、登録品種が市場に広がり、品質のばらつきやブランド価値の低下が避けられません。

戦略:

品種登録の後に、登録品種の名称を商標として登録することで、育成者権消滅後も名称の使用を制限できます。

商標権は更新が可能であるため、名称を永続的に保護でき、ブランド価値を守ることができます。

実例

地域ブランドの保護を目的として、品種の名称を商標登録する事例が増えています。この戦略により、地域や育成者の権利が永続的に守られています。

2. 登録までの時間差を悪用したトラブルと対策

登録制度の隙を突いた悪用

商標登録と品種登録の違い:

商標登録は、商品が実際に存在しない段階でも出願・登録が可能です。一方、品種登録は新品種が完成してからでないと手続きができません。

この時間差を利用し、他者が新品種の情報を事前に入手して商標登録してしまうケースがあります。

具体的な悪用例

品種登録の手続きが完了する前に、他者がその新品種に関連する名称を先に商標登録し、権利を主張する。

トラブルを防ぐための対策

1. 情報の秘匿:

品種登録の出願が完了するまで、新品種の詳細情報を外部に漏らさないことが最善の防御策です。

2. 仮名称の使用:

新品種の開発状況を公表しなければならない場合は、仮の名称を用いることで、正式名称が悪用されるリスクを軽減します。

3. 専門家への相談:

商標登録と品種登録を進める際は、専門家に相談し、適切なタイミングと手続き方法を確保することが重要です。

ここがポイント:戦略とリスク管理のバランス

項目 戦略 注意点
保護期間の違いを活用 商標登録で名称を保護し、ブランド価値を維持 品種登録の権利が消滅後の対策が重要
登録までの時間差を悪用したトラブル 情報漏洩防止・仮名称の活用 事前のリスク管理が必須

商標登録と品種登録をうまく組み合わせることで、植物に関する権利を強固に守ることができます。しかし、トラブルのリスクを十分に理解し、適切な対策を講じることが成功への鍵です。

まとめ:植物の商標登録と品種登録を理解して権利を守る

一見すると別々の制度に見える「植物の商標登録」と「品種登録」ですが、実はその関係性は深く、巧みに組み合わせることで大きな効果を発揮します。

これらの制度を正しく理解することで、以下が可能になります:

  • 権利を有効に活用:植物やその名称、ブランドを長期的に保護し、価値を高める
  • トラブルを未然に防止:制度の違いや隙間を悪用されないよう適切な対応を取る

植物を扱うビジネスや新しい品種の開発に携わる方にとって、商標登録や品種登録は重要な武器です。この機会にそれぞれの仕組みを深く学び、あなたの大切な権利をしっかり守りましょう。

(4)まとめ:植物の商標登録と品種登録を理解して権利を守る

一見すると別々の制度に見える「植物の商標登録」と「品種登録」ですが、実はその関係性は深く、巧みに組み合わせることで大きな効果を発揮します。

これらの制度を正しく理解することで、以下が可能になります:

  • 権利を有効に活用:植物やその名称、ブランドを長期的に保護し、価値を高める
  • トラブルを未然に防止:制度の違いや隙間を悪用されないよう適切な対応を取る

植物を扱うビジネスや新しい品種の開発に携わる方にとって、商標登録や品種登録は重要な武器です。この機会にそれぞれの仕組みを深く学び、あなたの大切な権利をしっかり守りましょう。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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