1. お米の味を総合的に判断する食味ランキング
専門家が代表的な品種をランク付け
毎年、収穫したお米の味を総合的に判断した食味ランキングが発表されています。これは日本穀物検定協会という第三者検定機関が実施しているもので、質のよい米づくりや消費の拡大を目指しています。1971年産米の調査から始まり、毎年実施されています。
このランキングは、全国の代表的な品種について、基準米と比較評価して決められます。基準米は複数産地のコシヒカリをブレンドしたものを使用します。専門評価員が炊き上がった白飯の外観、香り、味、粘り、硬さ、総合評価の6項目について判断し、特A、A、A’、B、B’の順でランク付けします。
2024年産米では143産地品種について調査が行われ、39品種が特Aランクに選ばれました。
特Aランクを獲得した品種の商標登録
長い間、日本におけるお米の作付面積シェア1位を誇ってきた品種はコシヒカリです。おいしいお米の代名詞として、多くの人に親しまれてきました。現在は、それを追いかけるようにシェアを伸ばし、高い評価を受けている品種がいくつも存在しています。
特Aランクに選ばれた品種から、商標として登録されているものをいくつか紹介します。すでに多くの支持を得ている品種なので、食卓に上ったこともあるかもしれません。
ななつぼし(商標登録第4706063号)は北海道を代表する品種として知られています。つや姫 TSUYAHIME(商標登録第5448363号)は山形県が開発した品種で、その名の通り艶やかな見た目が特徴です。ゆめぴりか(商標登録第5199079号)は北海道産の高級ブランド米として人気を集めています。
2. 新たに市場に登場するブランド米
多くのブランド米が開発される背景
ブランド米とは、特定の産地・品種のなかから高い品質を誇り、農作物検査法に基づいて銘柄として登録されたものを指しています。近年、このブランド米が各地で開発されている背景には、消費者の深刻なコメ離れという状況があります。
日本の食を支え続けたお米ですが、消費量自体は年々減少しています。新たな商品を投入して消費者の関心を引き、販売促進につなげる狙いがあります。また、2018年度には国が補助金を出して米の作付けを制限してきた減反政策が廃止されました。高価格帯が期待できるブランド米の開発は、生産者の収入を確保するためにも必要とされています。
ブランド米の商標登録
2017年から2018年にかけても、市場には新たなブランド米が登場しました。すでに商標登録されているものをいくつか紹介します。
新之助(商標登録第5893508号)は新潟県が開発した品種で、コシヒカリとは異なる食感を持つお米として注目されています。金色の風(商標登録第5906697号)は岩手県のオリジナル品種で、県内でも限られた地域でのみ栽培されています。雪若丸(商標登録第5981196号)は山形県が開発した品種で、しっかりとした粒感と適度な粘りが特徴です。
3. おいしいお米選びの味方となるお米マイスター
職業経験のある専門家によるアドバイス
お米は品種によってもっちりしたものやあっさりしたものなど、さまざまな味わいがあります。種類が増えたことで、各々の好みや料理に合わせたお米を選べるようになりました。しかし、違いがわからず迷ってしまう消費者が少なくないという問題も生じています。
そんなときに強い味方となってくれるのがお米マイスターです。これは日本米穀小売商業組合連合会の認定する資格で、お米に関する豊富な知識を持ち、その特性や魅力を消費者に伝えることができるお米選びの専門家です。認定試験を受けられるのはお米に関係した専門職経験がある人のみとされているため、知識と経験に裏打ちされたアドバイスをもらうことができます。
お米マイスターの商標登録と活用方法
お米マイスターは一般財団法人日本米穀商連合会によって商標登録されています(商標登録第6671424号)。
お米マイスターの活動やお米の魅力についてもっと知りたい場合は、お米マイスター全国ネットワークのホームページを見てみるとよいでしょう。ここではおいしいお米に関する情報が数多く掲載されています。特にお米探しナビページでは、お米マイスターが厳選した商品の検索ができます。お米の種類、栽培方法、生産地など、それぞれのこだわりから検索可能で、取り扱う店舗を調べられるため、手軽においしいお米を手に入れることができます。
4. 地域団体商標となったお米
自ら守り育てる地域ブランド
2006年に始まった地域団体商標制度によって、地元の人々が自分たちの地域ブランドを守り、育てていくことが可能になりました。地名と商品内容を組み合わせて商標登録ができるため、地域の活性化に役立てることができます。この地域団体商標でも、各地のお米が商標登録されています。各地の農協が中心となって、地域の特産米を商標として保護し、ブランド価値を高める取り組みを進めています。
ごはんのおいしさを伝える稲作戦隊おこめんジャー
JA全農山形には、山形県産のお米のPRと子どもたちの食育に活躍するオリジナルキャラクターがいます。メンバーはリーダーのはえぬきん、ムードメーカーのこしひかりんなど、いずれも県内で生産されるお米の銘柄にちなんで命名されています。
稲作戦隊おこめんジャーは2014年にデビューしました。その後、全国農業協同組合連合会により2015年3月10日に商標登録の出願が行われ、同年7月31日に商標として登録されています(商標登録第5782083号)。地域の特産品をPRする取り組みとして、商標権を活用した好例といえるでしょう。
5. まとめ
現在、ブランド米は今後ますます激しい競争になると予想されています。最高ランクの特Aを取得しても、それだけで生き残っていくことは難しい状況です。関係者たちは味わいはもちろん、名称やパッケージなどについて、さまざまな工夫を凝らしています。消費者に選ばれ、食卓の定番となるには、他者と混同されることのない強みが必要です。
商標は独自の魅力を消費者にわかりやすく伝えるために重要なものです。そして、ブランドの価値を高め、保護し続けるために欠かせないものとなっています。お米という日本の食文化を支える農産物においても、商標権の活用はブランド戦略の重要な要素として位置づけられています。生産者、流通業者、消費者のそれぞれにとって、商標は品質と信頼の証として機能しているのです。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247