米の売場には、品種名、産地名、商品名、認証名が並びます。似た呼び方でも、食味を評価する制度、農産物検査で使う産地品種銘柄、品種登録、商標登録は別の仕組みです。
商標が守るのは、名称やロゴに蓄積した営業上の信用です。味の等級そのものを保証する制度ではありません。お米に関係する登録例を見ながら、表示ごとの役割と使い方を確認します。
食味ランキングと商標は役割が違う
令和7年産米は144産地品種を評価
日本穀物検定協会は、1971年産米から毎年「米の食味ランキング」を公表しています。令和7年産米では144産地品種を試験し、43産地品種が特A、71産地品種がA、30産地品種がA’でした。
試験では、複数産地のコシヒカリを混ぜた基準米と、各産地品種の炊飯米を専門評価員が比較します。評価項目は外観、香り、味、粘り、硬さ、総合評価の6項目です。結果は特A、A、A’、B、B’の5段階で示されます。
ランキングは同じ品種でも産地や年産ごとに変わります。また、流通するすべての米を調べた結果ではありません。特Aという評価と、名称について商標権があるかどうかは切り分けて読みます。
特Aランクを獲得した品種の商標登録
コシヒカリは長く作付面積の大きい品種として知られています。一方、各地では気候、食感、栽培条件に合わせた品種が育成され、独自の名称で販売されています。
令和7年産米の特Aには、ななつぼし、ゆめぴりか、つや姫、雪若丸、サキホコレ、はれわたり、さがびより、いちほまれなどが含まれます。これらの名称には商標登録例もあります。ただし、ランキングの対象は「産地品種」、商標権の範囲は「登録された商標と指定商品・指定役務」です。
ななつぼし(商標登録第4706063号)は北海道を代表する品種として知られています。つや姫 TSUYAHIME(商標登録第5448363号)は山形県が開発した品種で、その名の通り艶やかな見た目が特徴です。ゆめぴりか(商標登録第5199079号)は北海道産の高級ブランド米として人気を集めています。
品種名・商品名を商標で守る
「ブランド米」は一つの法的区分ではない
「ブランド米」は販売や広報で使われる呼び方で、商標法上の一種類を指す用語ではありません。農産物検査で表示する産地品種銘柄、種苗法による品種名、商標法による商品名・ロゴは、それぞれ根拠と保護対象が異なります。
農林水産省の食料需給表では、1人1年当たりの米消費量は1962年度の118.3キログラムから2024年度の53.4キログラムへ減りました。人口減少、食生活の変化、外食需要、気候への対応も重なり、産地は味だけでなく、名称、栽培基準、流通方法を組み合わせて選ばれる理由を作っています。
ブランド米の商標登録
名称を商標として管理すれば、同一・類似の表示による出所の混同を抑える基盤になります。品種名そのものとして使用される表示には別の論点もあるため、誰が、どの商品に、どの態様で使う名称なのかを出願前に確定します。
新之助(商標登録第5893508号)は新潟県が開発した品種で、コシヒカリとは異なる食感を持つお米として注目されています。金色の風(商標登録第5906697号)は岩手県のオリジナル品種で、県内でも限られた地域でのみ栽培されています。雪若丸(商標登録第5981196号)は山形県が開発した品種で、しっかりとした粒感と適度な粘りが特徴です。
お米マイスターの名称管理
職業経験のある専門家によるアドバイス
米は品種や産地、精米、炊き方によって食感が変わります。選択肢が増えるほど、購入者へ違いを説明する人や表示の信頼性も問われます。
お米マイスターは、日本米穀商連合会が運営する認定制度です。米穀販売業に一定期間従事した人などを受験対象とし、知識試験や技能試験を通じて認定します。公的な国家資格とは区別して案内する表示です。
お米マイスターの商標登録と活用方法
お米マイスターは一般財団法人日本米穀商連合会によって商標登録されています(商標登録第6671424号)。
認定制度の名称とロゴを商標で管理すると、認定を受けていない者の紛らわしい表示と区別しやすくなります。利用者は認定主体、認定条件、表示ルールを公式案内で確認します。
地域団体商標となったお米
自ら守り育てる地域ブランド
地域団体商標制度は2006年に始まりました。「地域名+商品・サービス名」などの表示について、一定の団体、地域との密接な関係、需要者の間での周知性などを審査します。京都米、黒部米、東川米、玖珠米、北海道米、多古米、能登米、能登棚田米といった登録例があります。
登録があれば、その地域の米を誰でも自由に同じ表示で販売できるわけではありません。権利者となる団体の構成員資格、使用規程、産地や品質の基準を確認します。制度の要件は地域団体商標の解説も参照してください。
ごはんのおいしさを伝える稲作戦隊おこめんジャー
JA全農山形には、山形県産米のPRや食育で使われる「稲作戦隊おこめんジャー」があります。はえぬきん、こしひかりんなど、県内で生産される米の名称に結び付けたキャラクターです。
「稲作戦隊おこめんジャー」の図形・文字を含む商標は、全国農業協同組合連合会を権利者として2015年7月31日に登録されました(商標登録第5782083号)。米そのものだけでなく、広報や教育で使うキャラクターも別の商標として管理する例です。
米ブランドを運用する視点
特Aの評価は年産ごとの食味試験、商標登録は名称やロゴの出所表示を守る制度です。評価を広告に使うときは対象となった産地品種と年産を明記し、商標は登録された表示と指定商品・指定役務に沿って使います。
産地団体や事業者は、品種名、産地名、商品名、ロゴ、キャラクターを一覧にし、権利者と利用者を対応させます。パッケージ変更、オンライン販売、加工品への展開では、実際の表示と登録範囲にずれがないかも点検します。品種名との関係はお米の品種名と商標、名称採用前の流れは商品ネーミングと商標登録で説明しています。
よくある質問
Q1.特Aなら、その米の名称は商標登録されていますか?
食味ランキングと商標登録は別制度です。特Aになった事実だけでは商標権の有無は分かりません。J-PlatPatで商標、権利者、指定商品・指定役務、存続状況を確認します。
Q2.特Aは米そのものの品質保証ですか?
ランキングは代表的な産地品種を基準米と比較した食味試験です。流通する同名米の全量を検査した結果ではなく、商品ごとの品質保証とも異なります。
Q3.品種登録と商標登録は同じですか?
異なります。品種登録は新品種を育成した者の権利を扱い、商標登録は商品・サービスの出所を示す名称やロゴを扱います。一つの米に両方が関係する場合もあります。
Q4.地域名と「米」を組み合わせれば地域団体商標になりますか?
組合せだけでは登録されません。出願主体、構成員による使用、地域との密接な関係、一定範囲の需要者に知られていることなどが審査対象です。
Q5.登録された地域ブランド米の名称は誰でも使えますか?
団体の構成員か、使用規程を満たすかなどで扱いが変わります。販売前に権利者、登録範囲、団体の利用条件を確認します。
米の表示を守る出発点は、味の評価、産地・品種の表示、商標を混同しないことです。名称ごとに制度と管理主体を確認すれば、消費者へ伝える情報と権利の範囲が明確になります。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
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