商標登録には、8つのメリットと3つのデメリットがあります。ここでは商標登録を検討している方のために、専門の弁理士が分かりやすく解説しました。
1.商標登録のメリット
メリット1: 権利者以外は、同じ商標を使用できない
特許庁が商標を登録すれば、その商標を第3者が勝手に、使用することは出来ません。表現の自由という、日本国憲法が保障する重要な権利を制限してまで、保護するのが商標権です。この点において、商標権は非常に強い権利といえます。
なぜここまで保護するかと言えば、国の経済的な発展は、商標を保護しなければ成り立たないという考えに立つからです。ですので最初に、商標とは極めて強い権利なのだと、理解してください。
メリット2: 権利者以外は、類似商標も使用できない
使用できなくなるのは、完全に同じ商標だけではありません。類似する言葉等も使用できなくなります。例えば「STARWARS」というアルファベットが商標登録されていれば、カナ表記である「スターウォーズ」も使用できなくなります。
当然どこまでを類似と判断するかは、争いの種になります。皆さんがよくご存じの例は、「面白い恋人」でしょう。「白い恋人」という北海道のチョコレートが、「面白い恋人」という吉本興業系列のチョコレートと、類似性があるかどうかで争った件は、ご記憶にあると思います。
類似の判断基準は、かなり専門的なことになるので省きますが、基本は社会常識に沿って判断されると思ってください。
メリット3: 商圏外でも日本全国に効力が及ぶ
商標の効力は日本全国であり、権利者の商圏は関係ありません。「白い恋人」が北海道限定販売であっても、大阪で商標が侵害されているならば、その使用を止めることが出来ます。
メリット4: 違反者には使用の差し止め・損害賠償を請求できる
商標権を侵害した者に対しては、その使用の差し止め、並びに損害賠償を請求できます。
そして使用の差し止めにおいては、故意・過失を問わず、差し止めることが出来ます。要は「いくら悪気がなかった」と弁明しても、有無を言わさず差し止めることが出来るということです。
また違反者が商標侵害によって利益を得ている場合には、それを損害賠償として請求することができます。さらに商標権の侵害は、刑事罰の対象になっていることも、注意して下さい。
メリット5: 半永久に保護され、譲渡もできる
特許が20年で切れるのと対照的に、商標は更新さえ続ければ、永久に保護されます。すでに100年以上前から登録されている商標もありますので、ご興味のある方は、こちらもご参照ください。
また商標権は、譲渡することも出来ます。ブランドに金銭的な価値が生まれたなら、それを売買することも可能ということです。
以上、ここまで5点は法律上のメリットですが、商標登録のメリットはこれだけではありません。さらに次のようなメリットもあります。
メリット6: 他人の取得を防ぐことが出来る
今現在、その商標を使っていないにしても、将来の使用を見込んでいる場合、商標を登録することで、他人の使用を防ぐことが出来ます。
日本の商標制度は、先願主義(先に出した者が優先)のため、商標として先に登録した者に権利が発生します。
メリット7: 品質保証ができる
商標を取得するということは、その商標の出所が明確になることを意味します。
ですので「このマークがあるなら、○○会社の商品だから安心だわ」と言う形で、お客様に対して、品質を保証することができます。
メリット8: 社会的な信用が得られ、広告宣伝に活用できる
商標が認められたということは、日本国が認めたということで、社会的な信用になります。
Webサイトを始めとして商品を宣伝する機会は、急激に増えています。そこに商標登録番号「・・・・」と言う形で記載があれば、それは社会的な信用につながります。
以上ここまで、商標登録するメリットをご説明しました。商標登録には多くのメリットがありますが、デメリットがないわけではありません。デメリットも合わせてご説明しましょう。
2.商標登録のデメリット
デメリット1: 費用がかかる
まず費用がかかるというのが、1つのデメリットです。まず申請にあたって、特許庁に収める印紙代があります。印紙代は登録までに合計で33,900円かかります(1区分・5年間の場合)。
また弁理士事務所に申請を依頼すれば、その事務所に対して手数料がかかります。手数料は弁理士事務所によって、様々です。
費用については区分の問題も含め、「商標登録 費用」で詳しく説明しているので、参考にして下さい。
デメリット2: 登録に時間がかかる
デメリットの2番目として、登録までに時間のかかることがあります。基本的には、申請から登録まで順調に行って、6か月かかると思ってください。
特許庁に申請される商標の数は想像以上に多く、1日あたり約400件ほどになります。これを順次審査しているので、これ位の月日がかかっています。
ただ商標申請には、早期審査制度があり、取得期間を短縮することが出来ます。この制度を利用するには、いくつかの前提条件がありますので、詳しくは「その早期審査ちょっと待った!スピード商標登録の裏事情」をご覧ください。
デメリット3: はやい者勝ちの権利である
先にメリットのところでも説明しましたが、日本の商標制度は先願主義です。仮に御社がビジネスで使っていて、それに社会的な信用がある状態であっても、商標を取得していなければ、他社が申請すれば認められてしまう恐れがあります。
ビジネスの実態面を考慮せず、書類上の審査にて判断されることは、一つのデメリットと言えるのでしょう。逆に言えば、長年使用しているならば、他社の取得を防ぐ意味で、商標登録することは、必須ということができます。
以上、商標登録する8つのメリットと、3つのデメリットをご説明しました。商標は非常に強力な権利ですので、ぜひ上手く活用してビジネスに役立てて下さい。この記事がご参考になれば、何よりです。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247