復活した往年の名車スープラが2025年で生産終了へ。商標的論点は?

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1. スープラという存在 〜時代を駆け抜けた伝説の名車〜

2025年をもって再び生産終了となることが発表された「スープラ」。車好きでなくとも一度は耳にしたことがあるその名前は、トヨタを象徴するスポーツカーとして多くのファンの心をつかんできました。

その最新モデルは、トヨタとBMWの共同開発により誕生した5代目「GRスープラ」(A90型)。兄弟車であるBMW Z4とプラットフォームを共有しつつも、ロングノーズ・ショートデッキ、FR駆動、直列6気筒エンジンという伝統的なスタイルを復刻。2019年の復活当時は、4気筒モデルも追加され、より幅広いユーザー層を取り込む仕様となっていました。

とはいえ、登場時にMT(マニュアルトランスミッション)設定がなかったことは、多くのファンにとって衝撃だったかもしれません。直感的な操作と一体感を楽しむMTの存在こそが、スポーツカーの魂といえるからです。

スープラの起源は1978年(昭和53年)にまでさかのぼります。当初は北米市場でのセリカ派生モデル「セリカ・スープラ」として登場し、日本では2代目まで「セリカXX(ダブルエックス)」という名称で販売されていました。真に「スープラ」として独立した名称を得たのは、1986年登場の3代目(A70型)以降になります。

そして、2002年に生産終了してから約17年のブランクを経て、2019年に復活。まさに“フェニックス”のごとき再登場でした。

2. 商標の世界から見る「スープラ」の戦略性

ここからは、商標専門家としての視点で「スープラ」ブランドの商標的な動きについて分析してみましょう。

まず、「SUPRA」という商標は、トヨタ自動車がしっかりと権利化しています。

登録番号は第1943696号。指定商品は「自動車並びにその部品及び附属品」などで、出願日は1984年4月19日、登録日は1987年3月27日です。

商標の出願時期は、国内で「スープラ」の名が正式に使用される前であることから、トヨタがこのブランドに対してかなり早い段階から戦略的に動いていたことがわかります。ブランドネーミングと商標登録との間には常にこのような“先手”が求められるのです。

また、スープラが販売されていない空白の17年間も、商標権は着実に更新されています。商標法では、登録から10年ごとに更新申請を行うことで、権利を維持し続けることができます。

実際に、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で確認すると、2006年と2017年に更新申請がされています。特に2006年の更新は興味深いところ。復活が2019年だったことを考えると、この更新は“将来の復活”に備えていた可能性も否定できません。

さらに、トヨタは商標の拡張登録も怠っていません。たとえば、

  • 「SUPRA」(第6037747号/出願日:2017年6月6日)
  • 「GR SUPRA SUPER GT CONCEPT」(商願2018-068995/出願日:2018年5月24日)

といった新たな形態の商標も追加で出願・登録されています。ブランドの多角化と展開範囲の拡充に向けた周到な戦略が読み取れます。

3. 名車と商標、どちらも「継続」が鍵

個人的にスープラといえば、やはりA80型の印象が強いです。街中で見かけることもありましたし、モータースポーツの世界で活躍した姿も鮮烈でした。とりわけ、全日本GT選手権(現SUPER GT)で脇坂寿一選手が操る「エッソウルトラフロースープラ」は、多くのファンの記憶に残っているはずです。

スープラのように、長いブランクの後に再登場し、再び熱狂的に支持されるブランドはそう多くありません。だからこそ、「商標は使わなくなったら終わり」ではないという事実を、もっと多くの事業者に知っていただきたいのです。

商標権の維持には費用も手間もかかりますが、「あの時、更新しておけばよかった」と後悔するケースは少なくありません。使っていなくても、ブランドとして将来価値があると判断すれば、更新は立派な投資です。

そして今回のスープラの生産終了は、ブランドの「終わり」ではなく、「次のステージ」への幕開けかもしれません。

4. 次の一手を考える:商標は“未来の資産”になる

スープラの商標戦略から私たちが学べる最も重要な教訓は、「商標は過去の栄光を守るだけでなく、未来の可能性を開く鍵にもなる」ということです。

トヨタは17年もの間スープラを市販していなかったにもかかわらず、その間ずっと商標権を維持し続けてきました。その結果、復活の際には新たなネーミング戦略やモータースポーツとの連携をスムーズに展開できたのです。

これは一般企業やスタートアップにも通じる話です。たとえ今は使用していないブランド名や商品名であっても、今後の事業展開や再利用の可能性が少しでもあるなら、商標を維持する価値は十分にあります。逆に、更新しなかったことで第三者に権利を奪われ、二度と使えなくなる可能性もあるのです。

特に、日本では全く登録商標が使用されず、10年に一度の更新手続きを怠ると、「不使用取消審判」や「登録抹消」といったリスクに直面します。権利が消滅してからでは手遅れです。

トヨタのスープラのように、眠っていたブランドが時代の流れとともに再び脚光を浴びる可能性は、決して夢物語ではありません。あなたの商標も、いつか再び注目を集める日が来るかもしれないのです。

5. まとめ

2025年、スープラは再び表舞台から姿を消します。しかし、その名が刻んだ商標の歴史と戦略的価値は、これからもブランドマーケティングや知的財産の教材として語り継がれていくでしょう。

あなたのビジネスにおいても、似たような「一時休止しているブランド」や「現在は使用していない商標」はありませんか?

  • 更新を止めるか、それとも続けるか?
  • 第三者に譲渡するか、自社の資産として保管するか?
  • ブランドの再起動に備えて、どのような準備をすべきか?

商標は、目には見えないけれど、未来のビジネスを大きく左右する“知的財産”です。

あなたのブランドは、将来のスープラになり得るかもしれません。

ぜひ一度、登録済みの商標リストを見直してみてください。そして、商標の更新・保全を“コスト”ではなく“投資”として考えてみる価値があるかもしれません。

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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