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ドクター中松「日本維新の会」商標事件|審決・知財高裁判決を解説

(初出:2012年10月8日/審決・判決に基づく改訂:2026年)

中松義郎氏が出願した標準文字商標「日本維新の会」は、商標法4条1項6号に該当するとして登録を認められませんでした。拒絶査定不服審判は請求不成立となり、その審決を争った訴訟でも、知的財産高等裁判所が2014年9月17日に請求を棄却しました。

出願は政党の発足前でしたが、商標法4条1項6号の該当性は審決時の事情を基準に判断されました。この点が、本件を読む上での中心です。

1. 「日本維新の会」商標事件の結論

対象は商願2011-090946、審判番号は不服2012-18707です。指定役務は第41類の「技芸・スポーツ又は知識の教授」「セミナーの企画・運営又は開催」などでした。

出願番号/登録番号/国際登録番号:商願2011-090946
商標(検索用):日本維新の会
読み替え・検索キーワード:ニッポンイシンノカイ, イシンノカイ, ニッポンイシン, イシン
区分:41
出願人/権利者/名義人:中松 義郎
出願日:2011/12/16
登録日:
ステータス:終了 – 出願 – 拒絶/却下又は無効

審判合議体は、審決時に政党「日本維新の会」が全国的に広く知られていたと認定しました。その政党を表示する名称と同一の本願商標は、非営利の公益団体を表示する著名な標章と同一又は類似の商標の登録を排除する同号に該当すると判断されました。

2. 拒絶査定から審決・判決までの経過

  • 2011年12月16日:商標「日本維新の会」を第41類で出願
  • 2012年5月10日:審査官が商標法4条1項7号を理由とする拒絶理由を通知
  • 2012年8月16日:同理由で拒絶査定
  • 2012年9月25日:拒絶査定不服審判を請求
  • 2013年4月9日:審判長が商標法4条1項6号に基づく新たな拒絶理由を通知
  • 2014年2月25日:審判請求は成り立たないとする審決
  • 2014年9月17日:知財高裁が審決取消請求を棄却(平成26年(行ケ)第10090号)

拒絶査定時の理由は7号でしたが、審判では6号の拒絶理由が改めて通知され、出願人に反論の機会が与えられました。最終的に裁判所が審査した中心は、6号該当性の判断基準時と審決の事実認定です。

3. 商標法4条1項6号の判断

商標法4条1項6号は、国や地方公共団体、公益に関する非営利団体や事業を表示する著名な標章と同一又は類似の商標を対象にします。知財高裁は、これらの団体の権威や信用を尊重し、関係があるとの誤解から取引者・需要者を保護することを趣旨として示しました。

本件では、審決時の政党「日本維新の会」が政党助成法に基づく届出政党であり、国会議員を擁する全国政党として広く認識されていました。本願商標はその名称と同一です。

ただし、6号の文言だけを見て「誰も登録できない」とするのは正確ではありません。商標法4条2項は、同項6号の団体等が自ら出願する場合などを例外としています。本件は、商標の出願人が審決時に著名だった政党そのものではない事案でした。

4. 出願日より後の事情が考慮された理由

本件の出願日は2011年12月16日で、政党「日本維新の会」の発足より前でした。出願人は、出願時に存在しなかった政党名を理由に拒絶することはできないと争いました。

知財高裁は、商標法4条3項が出願時を判断時とする号を限定していること、審査と審判が続審の関係にあることを指摘しました。そして6号については、審査と審判で商標登録を認めるかを判断する時点の事情に基づくとしました。

この事件では、審査段階の拒絶理由は7号で、6号の判断が初めて示されたのは審判段階です。裁判所は、6号について審判合議体の判断が示された審決時を基準とするのが合理的だと判断しました。「先に出願した」という事実だけで公益上の拒絶理由を克服できるわけではありません。

5. テレビ取材と実務上の教訓

2012年10月8日の朝、テレビ朝日の『やじうまテレビ』に出演し、中松氏による商標出願の問題を解説しました。当時は拒絶査定不服審判の結論が出る前です。後に審決と知財高裁判決が示されたため、この改訂版では当時の見通しと確定した司法判断を分けています。

実務では、商標を検討するときに同一・類似の先行登録商標だけを見れば足りるとは限りません。国や自治体、国際機関、政党その他の非営利公益団体を表す著名な名称・標章との関係も確かめます。また、出願後の社会的事情によって公益上の拒絶理由が問題になる場合があるため、審査・審判中も状況を確認します。

6. よくある質問

Q1. 出願が政党の発足より先なら、出願人が優先されますか?

本判決はその考えを採用しませんでした。4条1項6号の該当性を審決時の事情に基づいて判断しています。

Q2. 拒絶査定から商標法4条1項6号だったのですか?

違います。審査官は7号に基づいて拒絶査定をしました。審判段階で6号の拒絶理由が新たに通知され、審決は6号該当を理由に請求を成り立たないとしました。

Q3. 審決が最後の手続でしたか?

いいえ。出願人は審決取消訴訟を提起しましたが、知財高裁が平成26年(行ケ)第10090号判決で請求を棄却しました。

Q4. 指定役務を狭くすれば6号を回避できますか?

6号は、著名な公益団体等の標章と同一又は類似の商標であることを問題にします。指定商品・役務の類似範囲だけを狭めて解消できる拒絶理由ではありません。

Q5. 現在の政党と当時の事件は同じですか?

商標事件は、審決時に存在した政党とその著名性を対象に判断しています。その後の政党の分裂、解党、名称変更や権利の承継は、別の時点の資料で確かめます。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘

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