【アップデート】ドクター中松の商標「日本維新の会」を解説(審決確定の結果とポイント)

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(初出:2012年10月8日/加筆修正:審決確定後)

自民党と日本維新の会が連立政権を樹立したことが大きく報道されています。

時間は経ちますが、以前、日本維新の会以外の第三者が商標「日本維新の会」について特許庁に商標登録出願をしたことがありました。この結果がどうなったかの最新情報をお伝えします。

2012年10月8日の朝、テレビ朝日の『やじうまテレビ』に出演し、ドクター中松こと中松義郎氏が出願した商標「日本維新の会」の問題点について解説しました。当時は、特許庁の最終判断である審決がまだ出ていない段階でしたが、その後審判の結論が確定しました。そこで、要点を分かりやすくまとめ直してお伝えします。

1. 確定した最終結論

審判の結論は「請求不成立」、つまり拒絶が維持されました。これにより、中松氏の商標「日本維新の会」は登録できないという最終結果になりました。

出願番号/登録番号/国際登録番号:商願2011-090946
商標(検索用):日本維新の会
読み替え・検索キーワード:ニッポンイシンノカイ, イシンノカイ, ニッポンイシン, イシン
区分:41
出願人/権利者/名義人:中松 義郎
出願日:2011/12/16
登録日:
ステータス:終了 – 出願 – 拒絶/却下又は無効

この判断の法的根拠は商標法4条1項6号です。この規定は、「公益に関する非営利の団体」を表示する著名な標章と同一または類似の商標は登録できないという、絶対的な禁止規定となっています。

手続の経過を時系列で見ると、次のようになります。

  • 出願:2011/12/16(第41類:教育・セミナー等)
  • 拒絶査定:2012/08/24
  • 拒絶査定不服審判請求:2012/09/25
  • 審決(結論):2014/02/25
  • 審決確定:2015/04/24
  • 審決公報発行:2015/06/26
  • 審判番号:不服2012-18707

2011年12月16日に第41類(教育・セミナー等)として出願されましたが、審査で拒絶になりました。この審査結果を不服として2012年9月25日に審判請求が行われました。そして2014年2月25日に審決が下され、2015年4月24日に審決が確定しています。審決公報は2015年6月26日に発行されました。審判番号は不服2012-18707です。

2. 登録が認められなかった理由

まず、「日本維新の会」は政党の名称として著名であることが認定されました。2012年9月に全国政党として発足後、同年12月の衆議院選挙で大きな得票を得るなど、社会一般に広く知られる政党名になっていました。政党は営利を目的としない「公益に関する団体」に当たります。

商標法4条1項6号の射程として、このような公益団体の著名な名称については、第三者が商標で独占することを法律が禁じています。今回の出願商標は政党名とまったく同一の「日本維新の会」でした。

この事案で決め手となったのは「いつの時点で見るか」という点です。出願は2011年12月で、政党の発足である2012年9月より先でした。しかし、この条文の該当性は審決時点の事情で判断されます。審決時には既に著名な政党名になっていたため、出願が先であっても登録は認められませんでした。

整理すると、公益的な表示を私的に独占することは認められず、判断時期は審決時となります。したがって拒絶が維持され、請求不成立という流れになりました。

3. 当時の取材と出演の背景

当時を振り返ると、2012年10月にテレビ朝日から「特許庁での審査の見通し」について問い合わせがあり、六本木のテレビ朝日本社で『やじうまテレビ』の収録に協力しました。

中松氏側は「自分の政治活動で”維新の会”を名乗ってきた。模倣が出てきたので防衛のため出願した」と主張していました。ただし、本件は化粧品など「私益と私益」の商標の衝突とは位置づけが異なり、「公益と私益」の調整が焦点になる点を番組でも解説しました。

誤解されやすいポイント

出願日は2011年12月16日ですが、全国政党としての「日本維新の会」が発足したのは2012年9月です。つまり、出願が先で、政党発足が後という時系列になっています。

それでも、審決時点で著名な政党名になっていたため、商標法4条1項6号により登録不可という結論は動きませんでした。この点は誤解されやすいポイントです。

実務上の示唆

これから商標出願をする方に向けて、実務的な示唆をお伝えします。

公的・公益団体の著名名称は避けるべきです。政党、国際機関、公共性の高い非営利団体の名称やマークは、第三者による商標登録は原則として認められません。

また、タイミングだけでは勝てないという点も重要です。出願が早かったとしても、審決時点での社会的状況により登録が認められないことがあります。

さらに、指定商品・役務の範囲を狭めても解消しにくい点にも注意が必要です。商標法4条1項6号は絶対的拒絶理由のため、第41類の範囲を調整しても基本的に回避は困難です。

4. アップデートのまとめ

最終結果として、中松氏の「日本維新の会」は登録が認められず、請求不成立となり拒絶査定が確定しました。

理由は、公益に関する非営利団体である政党の著名名称と同一であり、商標法4条1項6号に該当するというものです。

判断時期は審決時の事情で判断されます。出願時に政党が未発足であっても、この結論は変わりません。

当時の放送解説をご覧いただいた方にも、審決確定後の正しい法的位置づけが伝わるよう、記事を更新しました。以上、アップデート版として公開します。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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