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商標権を得るために必要な手続き:初心者向けガイド


お店の名前や商品のネーミングは、使い続けるうちに、お客さまがあなたのビジネスを見つけるための目印に育っていきます。ところが、その名前を商標登録しないまま使っていると、あとから他人に商標権を取られてしまうおそれがあります。

日本の商標制度では、先に使っていた人ではなく、先に特許庁へ出願した人が原則として権利者になります。今回は、初めて商標権を取得する方に向けて、出願から登録までの手続きの流れを弁理士がご紹介します。

1. 商標権は「先に出願した人」のもの

商標は、店舗名や商品名を表す文字のほか、ロゴ、マークなども対象になります。ただ、商標を使っているだけでは商標権は発生しません。特許庁に出願し、審査を通って設定登録された時点で、初めて権利が生まれます。

同じ商標について複数の出願が競合した場合、権利を取得できるのは最も早く出願した人です(商標法8条)。これを先願主義といいます。たとえ自分のほうが先にその名前で商売を始めていたとしても、他人が先に出願して登録を受ければ、法律上はその他人が正当な権利者です。

この場合、長年使ってきた自分の側が、相手の商標権を侵害する立場に置かれてしまいます。看板や包装を作り直す費用を考えると、ビジネスの早い段階で出願を済ませておくほうが、結果として安全でコストも抑えられます。

2. 登録できる商標かを調べる(商標調査)

思い立ってすぐ出願書類を書き始める前に、その商標が審査を通る見込みがあるかを調べます。審査を通らない商標を出願しても、出願料と数か月の時間が無駄になってしまうためです。

審査で登録が認められない典型例は、次のようなものです。

  • すでに登録・出願されている他人の商標と同一か、紛らわしいもの
  • 商品の産地や品質をそのまま説明しただけの言葉や、ありふれた氏名など、目印としての働きをもたないもの
  • 登録されていなくても、世の中に広く知られた商標と混同を起こしやすいもの

先行する商標は、特許庁が提供する検索サービス「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」で無料で調べられます。ただし、商標どうしが紛らわしいかどうかは、見た目(外観)、読み方(称呼)、意味合い(観念)を総合して判断されるため、単純な文字の一致だけでは結論が出せません。似た商標が見つかったときにどう評価するかは、経験の差が出やすいところです。

3. 出願書類の作成と特許庁への提出

調査で見込みが立ったら、願書を作成して特許庁に提出します。願書には、出願人の情報、登録を受けたい商標、そしてその商標をどの商品・サービスに使うのか(指定商品・指定役務)を記載します。

指定商品・指定役務は、45に分かれた区分の中から選び、区分の数に応じた出願料を特許庁に納めます。料金は特許庁のウェブサイトにある料金表で確認できます。

ここで悩ましいのが権利範囲の設計です。範囲を広く取れば費用がかさむうえ、使っていない商品・サービスまで含めると、あとから不使用を理由に取消しを請求される余地も生まれます。逆に狭すぎると、事業の広がりに権利が追いつきません。いま使っている範囲と、これから展開する予定の範囲を見極めながら決めていきます。

4. 特許庁の審査:方式審査と実体審査

方式審査

提出された願書は、書類の記載や手数料の納付に不備がないか、形式面のチェックを受けます。不備があると特許庁から補正の指令が届き、指定された期間内に直して提出し直します。放置すると出願自体が却下されてしまうため、特許庁からの通知は見逃せません。

実体審査

形式面をクリアすると、審査官が内容を審査します。順番待ちがあるため、結果が出るまで数か月から1年程度かかることもあります。

登録の要件を満たしていないと判断されると、その理由を記載した拒絶理由通知が届きます。ここで諦める必要はなく、意見書で反論したり、指定商品・指定役務を補正で削って衝突を避けたりする道が残されています。実務では、この応答で登録にたどり着く事案が少なくありません。

応答してもなお登録が認められない場合は拒絶査定となりますが、これにも拒絶査定不服審判という不服申立ての手続きが用意されています。

5. 登録料の納付と商標登録証

審査を通過すると、登録を認める登録査定が届きます。そこから30日以内に、区分数に応じた登録料を納付します。登録料は10年分を一括で納める方法と、5年分ずつ分けて納める方法から選べます。

登録料の納付を受けて特許庁が設定登録を行った日から、商標権が発生します。しばらくすると、登録番号や登録日が記載された商標登録証が送られてきます。

6. 登録後の更新と権利の維持

商標権の存続期間は設定登録の日から10年です。ただし、更新の手続きをとれば10年ごとに何度でも延長でき、使い続ける限り半永久的に権利を保てます。特許や意匠のように期間満了で必ず消滅する権利ではない点が、商標の大きな特徴です。

一方で、登録した商標を3年以上使っていないと、第三者から不使用取消審判を請求され、権利を失うことがあります。登録して終わりではなく、実際に使い、更新期限を管理していくことが権利を守る土台になります。

ここまでの手続きは、ご自身で進めることもできます。ただ、調査での類否判断や権利範囲の設計は、その後10年、20年と使う権利の土台を決める作業です。初めての出願で迷われる場合は、費用対効果も含めて弁理士に相談してみてください。

7. よくある質問

出願から登録まで、どのくらいの期間がかかりますか?

審査の順番待ちを含めて、数か月から1年程度が一つの目安です。時期や区分によって変動します。すでに商標を使用しているなど一定の条件を満たす場合には、審査を早めてもらえる早期審査の制度もあります。

商標権はいつから発生しますか?

登録料を納付し、特許庁で設定登録された日からです。出願しただけでは権利は発生しませんが、先願主義のもとでは出願日が早い者勝ちの基準になるため、出願日を確保すること自体に意味があります。

ずっと使ってきた名前なら、登録しなくても守られますか?

原則として守られません。日本は先に出願した人が権利を取る制度だからです。長年の使用で世の中に広く知られている場合に限り、例外的に使い続けられる余地はありますが、その立証のハードルは高く、認められる範囲も限られます。例外に頼るより、出願で権利を確保するほうが確実です。

拒絶理由通知が届いたら、もう登録できないのですか?

そんなことはありません。拒絶理由通知は「このままでは登録できない理由」を知らせる書面で、期限内に意見書や補正書で応答できます。反論や権利範囲の調整によって登録に至る事案は実務上多くあります。まずは通知に書かれた理由と応答期限を確認してください。

自分で出願するか、弁理士に頼むか迷っています。

手続きそのものはご本人でも行えます。判断が分かれるのは、似た商標が見つかったときの類否評価と、指定商品・指定役務の設計です。ここでの見立てを誤ると、拒絶への対応費用がかかったり、守りたい範囲が権利から漏れたりします。長く使うブランドの権利づくりとして、専門家の目を通す価値は十分にあります。

参考:特許庁「商標制度の概要」J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘

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