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商標権侵害の警告書、送付のリスクを理解していますか?


1. 警告書を送る前に確認すること

商標権侵害の疑いを見つけたとき、警告書は使用停止、在庫の処理、損害賠償、ライセンス交渉などを求める入口になります。ただし、登録商標があるという理由だけで、相手の行為を直ちに侵害と断定できるわけではありません。

送付前には、登録原簿で権利者、存続期間、指定商品・指定役務、専用使用権などの現況を確かめます。そのうえで、相手の表示が商標として使われているか、商標と商品・役務が同一または類似か、商標法26条など効力が及ばない事情がないかを検討します。

証拠の確保も先に行います。ウェブページ、商品、包装、広告、販売時期、販売者を記録し、いつ何を確認したかが後から分かる形で保存します。警告後に表示が変わると、侵害の立証が難しくなるためです。

警告書に書く内容

  • 対象となる登録商標と指定商品・指定役務
  • 問題と考える相手の使用態様と確認資料
  • 使用停止、回答、協議など求める事項
  • 回答期限と連絡先
  • 現時点の調査に基づく主張であること

断定の強さは調査結果に合わせます。刑事告訴や取引停止を安易に持ち出すと、交渉をこじらせるだけでなく、警告の目的や相当性を疑われる原因にもなります。

2. 取引先へ送る場合の追加リスク

疑いを持たれている本人へ警告する場合と、その販売先や顧客へ「侵害品を扱っている」と伝える場合とでは、相手の営業に与える影響が違います。取引先への通知は販売停止や信用低下に直結しやすく、後に侵害が否定されたときの紛争も大きくなります。

取引先への連絡が一律に禁止されるわけではありません。差止めの実効性を確保するため連絡先を選ぶ事情もあります。ただ、本人への照会や交渉で足りないか、通知先と範囲は過大でないか、表現が確定判決のような断定になっていないかを事前に検討します。

権利者と相手が競争関係にあり、客観的に誤った侵害情報を取引先へ伝えた場合は、不正競争防止法上の信用毀損行為が問題になります。

3. 営業誹謗に当たる条件

2026年8月現在、不正競争防止法2条1項21号は、次の行為を「不正競争」の一類型としています。

競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

不正競争防止法2条1項21号

検討の中心は、競争関係、告知内容が客観的に虚偽か、営業上の信用を害する内容か、特定の相手への告知または不特定・多数への流布があったかという点です。警告書の送付先が一社でも「告知」に当たり得ます。

信用毀損行為に当たれば、差止請求や損害賠償請求を受けるおそれがあります。侵害の成否だけでなく、調査の程度、通知の目的、相手と通知先の関係、文面、送付範囲などが争点になります。

4. 裁判例から分かること

知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(ネ)第10074号)は、特許権侵害の告知後に特許が無効と判断されるべきものとされた事案を扱いました。判決は、告知が結果的に虚偽となったことだけで直ちに責任を決めず、権利行使を萎縮させるおそれと競業者の利益を総合考慮すると述べています。

以上のように,特許権者である1審被告が,特許発明を実施するミヤガワらに対し,本件特許権の侵害である旨の告知をしたことについては,特許権者の権利行使というべきものであるところ,本件訴訟において,本件特許の有効性が争われ,結果的に本件特許が無効にされるべきものとして権利行使が許されないとされるため,1審原告の営業上の信用を害する結果となる場合であっても,このような場合における1審被告の1審原告に対する不競法2条1項14号による損害賠償責任の有無を検討するに当たっては,特許権者の権利行使を不必要に萎縮させるおそれの有無や,営業上の信用を害される競業者の利益を総合的に考慮した上で,違法性や故意過失の有無を判断すべきものと解される。

(知財高判平成23年2月24日判タ1382号335頁)

判決文の「不競法2条1項14号」は当時の号番号です。条文は改正による号ずれを経て、2026年8月現在は2条1項21号に置かれています。

この判決は、侵害が後に否定されても警告側が常に免責されるという意味ではありません。裁判所は、告知時に権利が登録されていたこと、対象製品が特許発明の技術的範囲に属する点に争いがなかったこと、直接侵害者に相当する者への通知だったこと、通知の内容と態様などから責任を判断しました。

5. 送付側・受領側の実務対応

送付する側

  • 権利の現況と範囲を登録原簿で確認する
  • 相手の使用態様を証拠化し、商標的使用と類否を検討する
  • 無効理由、不使用取消、先使用権など予想される反論を確認する
  • 本人への照会で目的を達成できるか検討する
  • 通知先、文面、期限、請求内容を必要な範囲に絞る

受け取った側

回答期限を確認し、警告書、封筒、添付資料、対象商品、販売記録を保存します。慌てて侵害を認めたり、証拠を消したりせず、問題の表示を一時停止するかも含めて弁護士・弁理士と対応を検討します。取引先にも通知が届いている場合は、説明窓口を一本化すると情報の食い違いを防げます。

6. よくある質問

侵害を主張した後で敗訴すると、必ず営業誹謗になりますか?

必ずではありません。告知内容が虚偽かだけでなく、送付時の調査、目的、相手との関係、通知先、文面や態様など、個別事情に応じて判断されます。

相手の取引先へ警告書を送ってはいけませんか?

一律の禁止ではありませんが、本人への通知より営業への影響が大きくなります。取引先へ直接伝える必要性と、伝える情報の正確性・範囲を慎重に検討します。

商標登録証があれば侵害を断定できますか?

できません。登録商標と相手の表示、指定商品・指定役務と相手の商品・役務、実際の使用態様を確認し、権利の効力が及ばない事情や無効理由も検討します。

警告書を受けたら、期限までに使用を止めるべきですか?

直ちに認諾する必要はありませんが、放置も避けます。証拠と事実関係を保存し、販売継続による損害拡大の可能性を見ながら、回答または期限延長の連絡を検討します。

SNSやウェブサイトで侵害を公表してもよいですか?

公開範囲が広く、誤りがあった場合の信用被害も拡大します。確定前の侵害情報を公表する必要性と表現の相当性は、警告書以上に慎重に判断してください。

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247

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