前回に引き続き、小倉キャスターが司会を勤めるフジテレビの「とくダネ!」(平成25年8月27日放送分)で加護亜依の商標登録問題について解説しました。
テレビなどで紹介される通り、氏名や芸名も商標登録することが可能です。
ただし氏名や芸名を商標登録されたとしても、全面的に氏名や芸名が使えなくなるのではなく、商標登録の際に指定された商品・役務に類似する範囲で使用できなくなる場合がある、ということです。
権利範囲に指定されている商品や役務と関係のないものについては商標権の効力は及ばないので自由に使うことができます。
さらに商標法の第26条には、氏名や有名な芸名については普通に使用する方法で表示した場合には商標権の効力は及ばない、という規定があります。
このため氏名や有名な芸名について普通に使用する場合には商標権による使用の制限を受けることはありません。
ただし、普通でない方法で氏名を表記する(例えば冠番組名として字体に装飾を加えて使う)場合には、商標権の効力が及ぶことになります。
つまり「加護亜依」の文字の表記の仕方によって、商標権の侵害になったりならなかったりする場合がある、ということです。
この点は前回説明した通りです。
ところで他人に商標登録されるなら、自分の名前を商標登録する必要があるのか、という問題があります。
商標法の第4条第1項第8号には、他人の氏名や有名な芸名を商標登録することは認められないことが規定されています。
このためテレビ等に出演して既に有名になっているタレントの芸名等を他人が商標登録することは特許庁が認めません。この場合はタレント本人の許可を取ってくるように特許庁の審査官から指導が入ります。
また自分の名前を商標登録しようとしたときには、通常は他の同姓同名の方の許可を取ってくるように特許庁の審査官からいわれます。
特許庁の要求に応えることはほぼ不可能です。他の同姓同名の方々は自分の名前の使用に制限がでるようなことに進んで許可を与えることはないでしょう。
ですので、通常生活しているレベルでは商標登録により自分の氏名の使用について制限を受ける場合は少ないのが実情です。
ただし非常に珍しい氏名の場合であって、事実上本人しかその氏名を有していない場合には比較的簡単に商標登録される場合もありえます。
次に登録商標である「加護亜依」についての商標登録を無効にできるか、という問題があります。
たとえば登録商標である「加護亜依」の商標登録の際に、加護さんの署名入りの同意書を第三者が勝手に偽造して特許庁の審査官を騙して審査を突破したことを立証できるのであれば、商標登録を無効にして商標権を消滅させることができる可能性があります。
しかし、前の所属事務所が商標登録することに加護亜依さんが同意している場合には、商標登録の手続き自体には何ら不備はないわけですから無効にすることは私は難しいと思います。
また三年間「加護亜依」の登録商標を使用していない場合に商標を使っていないことを理由とする取消審判を特許庁に請求することも理論上は可能です。
しかしこのような攻撃が将来くることは前の所属事務所側も当然予測しているでしょうから、よほど防御策に手抜きがなければ商標登録を取り消すことも簡単ではないでしょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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