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テレビ解説の舞台裏:中国商標先取り問題の真相と、日本企業が今すぐ備えるべきブランド防衛策


知的財産の模倣問題は、以前からずっと続いています。SNSで商品名やロゴが一瞬で拡散し、越境ECで世界中に商品が届く時代になった一方、模倣や便乗、先取りも同じ速度で広がっています。商標の備えは、昔の大企業だけの話ではありません。中小企業や個人ブランドにとっても、現実のリスクです。

1. キャラクターは著作権で守られる。しかし、それだけでは足りない

キャラクターは著作権によって保護されます。著作権は創作した時点で自動的に発生し、登録は不要です。無断での複製や配布、翻案などを禁止できますので、キャラクターを勝手にコピーして販売する行為は原則としてアウトです。

著作権を守る国際的な枠組みとして条約があり、形式上は日本の著作権も条約加盟国で保護されます。

ただ、著作権には実務上の弱点があります。

海外で侵害が起きた場合、自分の著作物だという立証や、現地での手続、証拠収集、差止の実行といったハードルが現実には高くなります。加えて、著作権は表現を守る権利です。ブランド名や商品名、ロゴといった市場での呼び名まで守るには、著作権だけでは心もとない場面が出てきます。

ここで商標権の出番です。キャラクターの絵は著作権で守りつつ、キャラクターの名前やロゴ、商品シリーズ名は商標登録で固める。キャラクタービジネスほど、この二段構えが効きます。

2. なぜ中国で商標の先取りが頻発したのか

商標権は国ごとの制度です。日本で商標登録しても、その効力は日本国内に限られます。海外で守りたいなら、海外でも別途手続きを踏まなければなりません。

著作権の条約は、国際間で同じ著作物を守ろうという発想です。これに対して商標権の条約は、権利取得の手続きが国際間で統一されているだけで、商標権そのものは原則、その国限りの権利です。

今から15年ほど前に話題になったのが、中国で顕在化した商標の先取り、いわゆる冒認出願の問題です。

なぜ起きやすかったのか。背景はシンプルで、商標制度は国境を越えて先願主義が強く働くからです。実際に使っていたかどうかよりも、先に出願した人が有利になりやすい構造があります。

そこに目をつけたのが商標ブローカーです。

海外展開しそうな日本のブランドを観察し、SNSや展示会、ニュースリリース、さらには日本国内の人気を手がかりに、先回りで出願してしまう。そして後から、譲渡するから買い取れと交渉してくる。当時、この動きは社会問題になりました。

昔の中国だから起きた、という単純な話ではありません。制度は改正され、悪意ある出願への対策は強化されてきました。一方で、先取りで儲かるという動機がある限り、似た構造は別の形で残り続けます。SNS時代は狙われるまでの速度が速い。これが2026年の現実です。

3. 先取りされると、現場では何が起きるのか

商標を先取りされると言われても、ピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。実務では何が起きるのか、順に見ていきます。

たとえば、あなたが日本で人気になった商品名を、そのまま中国でも売ろうとしたとします。

ところが現地で、同じ名前の商標がすでに第三者名義で登録されていた。最悪のケースでは、現地でその名前を使えなくなり、パッケージ変更やブランド変更を迫られます。

越境ECや現地ECで出品停止や削除を求められることもあります。税関で止められたり、輸入が通らなかったりするリスクも出てきます。その名前を使うならライセンス料を払えと迫られる場合もあり、交渉が難航すると、時間と費用が膨らんでいきます。

痛いのは、ブランドの信用が削られることです。商品名が変われば、検索も広告も口コミも分断されます。ロゴの差し替え、パッケージ再設計、販促物の作り直し。これは法務コストではなく、事業コストとして重くのしかかります。

4. 取り戻すことはできる。しかし時間と手間と費用がかかる

他人に先に商標権を取られてしまった場合でも、取り戻せる可能性はゼロではありません。制度上、異議申立、無効手続、悪意の主張など、いくつかのルートが用意されています。

ただ、そこに立ちはだかるのが時間と手間と費用です。争えば争うほど、証拠の準備、現地代理人との調整、翻訳、スケジュール管理、そして結果が出るまでの待ち時間がのしかかります。その間も事業は止まりません。早く売り出したいタイミングでトラブルが起きるからこそ、ダメージが大きくなります。

今も昔も同じ結論です。商標は、取られてから戦うより、取られる前に整備する方が圧倒的に費用対効果が高い。

商標出願費用は、例えるなら保険料です。払わない自由はあります。ただし、事故が起きたときの負担は桁違いになる。この構造は今も変わりません。

5. 日本企業が取るべき具体策

具体的に何をすればいいのか。全部やるのではなく、狙いどころを決めて先回りすることです。

事業開始前に商標クリアランスをしてください。

商標は早い者勝ちの側面がある以上、ネーミングの段階で確認するのが合理的です。後から名前を変えるのは、ロゴやドメイン、SNSアカウント、検索評価まで巻き込んで痛手になります。事業を始める前に、使いたい商標が他者に取られていないかを調べておくのがおすすめです。

海外展開の予定があるなら、先に出願してください。いきなり全世界は無理でも、販売計画や製造委託、模倣リスクの高い国に優先順位をつける。それだけでも先取り被害の確率は下がります。展開を計画している段階で出願しておくことが、後からのトラブルを防ぐ鍵になります。

キャラクターは文字、図形、ロゴを多層で固めてください。キャラクター名は文字商標、ロゴは図形商標、ブランド名は文字と図形の組み合わせというように、使い方に合わせて押さえます。単発で終わらせず、どこが侵害されると一番痛いかから逆算すると、無駄が減ります。

SNSでバズる前に出願しておいてください。個人クリエイターや小規模ブランドが、SNSで一気に伸びるケースが増えています。

伸びた瞬間に模倣も始まります。広げる前に出願しておくという意識があるだけで、後悔は減ります。話題になってからでは、すでに先取りされているリスクが高まります。

6. 著作権と商標権の決定的な違い

著作権は表現を守る権利、商標権はブランドを守る権利です。

キャラクターの絵は著作権で守る。けれど、そのキャラクターの名前や商品シリーズ名は、商標で守らないと市場で戦えない場面があります。海外では、商標の整備が後回しになった瞬間に、先取りの余地が生まれます。

著作権と商標権は、それぞれ保護する対象が違います。両方を組み合わせて活用することで、はじめてビジネスを多角的に守れます。

以前問題になった話は、過去の話ではありません。形を変えながら今も続いています。越境ECとSNSの時代になり、狙われるのは大企業だけでなく、中小企業、個人、クリエイターにまで広がっています。

他人の侵害を止めることも大切です。その前に、自分の権利整備に抜け漏れがないか点検することが、結果的に一番コストを抑えられます。

商標は、ブランドを育てる人のための防衛インフラです。後から戦うより、先に守る。この原則は2011年から2026年まで、一度も変わっていません。

※2011年1月11日、当時日本テレビのスッキリに出演しました。商標登録の専門家という立場です。番組では、中国で起きていたキャラクターの無断利用問題と、企業名や商品名を他社に先取りで商標登録されてしまう問題が取り上げられ、私はその背景と注意点を解説しました。

放送の尺の中では、どうしても結論だけを短く伝えることになります。ただ、実務の現場にいる立場から当時の視聴者の皆さんに一番伝えたかったのは、被害に遭ってからでは遅いということです。商標は攻めではなく防衛のインフラ。それは今も同じです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘

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