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会社合併・分割で商標権はどうなる?


1. 合併・分割で見落とされがちな商標権の行方

M&Aや組織再編の話が進むと、不動産や契約関係の整理に目が向きがちです。その陰で、商標権の扱いが後回しになっているケースをよく目にします。

会社の合併や分割があっても、商標権は自動で新しい会社の名義に切り替わるわけではありません。特許庁で移転登録の手続きを踏まなければ、書類上は旧会社のまま残り続けます。

この状態を放置すると、10年に一度の更新手続きや、第三者への警告・差止請求といった場面でつまずきます。権利者と事業主体のズレを抱えたまま時間が過ぎると、後から辻褄を合わせる労力は大きくなります。

この記事では、吸収合併・新設合併・会社分割(事業譲渡)それぞれのパターンで、商標権をどう移転させればよいのかを整理しておきます。

2. 吸収合併のケース

A会社がB会社を吸収合併する場面を想定してみます。合併でB会社は消滅するので、B会社名義の商標権はA会社へ移す手続きを踏みます。

通常の売買による商標権移転では「商標権移転登録申請書」を使いますが、合併の場合は「合併による商標権移転登録申請書」という別書式を用います。書類の名前が似ているため、取り違えやすい点に注意してください。

合併後に社名を変えた場合

合併後、A会社が「AA会社」へ社名を変更したとします。形式だけを見れば、次の2段階の手続きを踏む流れになります。

  • B会社からA会社への商標権移転
  • A会社からAA会社への名義表示変更

実務では、この2つを一本化できます。「B会社からAA会社」へ直接移転する形で申請し、A会社とAA会社が同一法人だと示す履歴事項全部証明書を添付する方法です。申請件数を減らせるため、印紙代も手続きの手間も抑えられます。

消滅する側が合併前に社名変更していた場合

逆のパターンもあります。B会社が合併前に「BB会社」へ社名変更していた場合です。この場合も、BB会社からA会社へ直接移転する形で簡略化できます。B会社とBB会社が同じ法人である旨を閉鎖登記事項証明書などで証明すれば通ります。

3. 新設合併のケース

A会社とB会社が一緒になって、新たに新会社Cを設立するパターンです。A・B両社とも消滅するので、それぞれの商標権をC会社の名義へ移していきます。

手続きはA会社分とB会社分で2件に分けて進めます。どちらも書式は「合併による商標権移転登録申請書」で共通です。

注意したいのは、保有商標の数が多い会社どうしの合併です。両社合わせて50件、100件の商標権を持っていると、移転手続きの事務量は相当なものになります。合併に伴う作業全体の中で後回しになりやすく、気がつけば数年放置されていた、という事態につながりがちです。

合併の計画が固まった段階で、両社の商標権一覧を作成しておくと安心です。指定商品・指定役務まで一覧化しておけば、手続き漏れも防げます。

4. 会社分割・事業譲渡のケース

A会社がB会社の一部門だけを買い取るような、部分的な事業の移動もあります。このときは、その部門に結びついた商標権だけを切り出して移転します。

手続きは合併とは別ルートで、通常の「商標権移転登録申請書」を使います。事業譲渡契約書の中に商標権の移転条項を盛り込み、譲渡証書とともに特許庁へ提出する流れです。

ひとつの商標権に複数の指定商品や指定役務が含まれている場合、「分割移転」という選択肢もあります。たとえば食品分野で広く登録している商標権のうち、「菓子」部分だけを切り出してA会社へ譲渡する、といった使い方ができます。事業の切り出し範囲にぴったり合わせた商標権の組み換えが可能です。

5. 「移転」と「譲渡」の違い

似たような言葉ですが、特許庁の手続きでは使い分けがあります。

合併による商標権の承継は「移転」、売買や贈与など当事者間の契約による権利移動は「譲渡」と呼びます。

両者で申請書の書式と添付書類が変わってきます。合併による移転は法律上の包括承継にあたるため、譲渡証書を用意する代わりに、合併の事実を示す登記事項証明書を添えます。譲渡の場合は譲渡証書が必須です。書類の組み合わせを間違えると補正や却下の対象になるので、事前確認をおすすめします。

6. まとめ

合併・分割の形態ごとに、商標権の手続きを整理します。

  • 吸収合併:合併による商標権移転登録申請書
  • 新設合併:消滅する各社について移転申請(書式は吸収合併と共通)
  • 事業譲渡:通常の商標権移転登録申請書+譲渡証書

手続きを怠ると、商標権の名義が旧会社のまま残り、10年更新の場面や第三者への権利行使の場面で壁にぶつかります。合併・分割の話が動き出した段階で、保有商標権の棚卸しと移転計画を並行して進めておく方が、あとで慌てずに済みます。

7. よくある質問

Q1. 合併による商標権の移転に費用はかかりますか?

特許庁への印紙代として、1件あたり30,000円がかかります。弁理士に手続きを依頼する場合は、別途手数料が発生します。対象となる商標権の件数が多いほどトータルの費用は膨らみますが、放置するリスクと比べれば早めに片付けた方が無難です。

Q2. 合併後、商標権の移転登録をしないまま放置するとどうなりますか?

商標権の名義が、消滅した会社のまま残り続けます。10年更新のタイミングや、第三者が無断で使用している場面で権利行使しようとしたときに支障が出ます。気づいた段階で速やかに移転登録を済ませてください。

Q3. 合併で取得した商標権の更新時期が間近です。移転登録と更新申請は同時にできますか?

同時進行で進められます。移転登録申請と更新申請を一緒に提出する運用は実際によく使われています。更新期限が差し迫っているなら、両方の手続きをまとめて特許庁へ提出する段取りを組んでください。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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